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薄紅

多分、4年ぶりに口紅を買った。

コロナでマスク生活時代はリップを使っていなかった。適当に保湿をするだけの毎日。そもそもコロナ前だって自分で買ったリップなんて…どれだっけ?というほど。誕生日とかプレゼントでもらいやすいから、もらったものを使っているだけだった。

こだわりがないと言えばそう。自分に似合う色を分かっていなかったし、特段急いで知りたいという理由やエネルギーもなかった。友人が「似合うよ」とプレゼントしてくれたものなら、きっとそれが似合うんだろう。

少しずつマスクを外す生活に変わっても、相変わらず外さなかった。その方が楽だったから。暑かろうがなんだろうが、マスクをしていれば顔の大半を隠せるから居心地がよかった。


彼がおすすめしてくれた色は「枯れない桜」だった。散ってしまう儚さをもつ桜に「枯れない」を添えるリップモンスターの力強さとやさしさ、『咲き続ける桜であれ』という意味を込めて親しい人にプレゼントしたい、と。

この4年の間にわたしはわたしのパーソナルカラーをきちんと知りに行っていて、枯れない桜ならきっと似合うかなと買いに行った。すっかり気に入って、仕事にもどこに行くにも欠かさず身に纏い、気づいたらマスクを外している。ほんとうに、好きな人の力というものは計り知れない。

ふとしたことだけど、マスクを外すと口角を上げていなきゃいけない気がしてて(顔周りがさ…)
でも疲れないんだよ、好きな人のリップ付けてると。お気に入りの色でメイクをきゅっと締めて、自然と口角が上がる気持ちで歩ける。たかがリップひとつだけど、この存在の大きさは彼が作り出すものだから。

ふと冷静に考えてみると、好きな人がおすすめしてくれたリップを手に取れるってめちゃめちゃめちゃ幸せじゃないですか。それがたまたま自分に似合う色だったとなれば、もう私に選んでくれたようなもので。だって私は彼のファンであり、彼にとってファンが「贈りたい相手」であることは何を言われなくても、誰に何を言われても分かっているから。そういう関係性を築いてきてくれたひとだから。だから私はこの色を、あなたがくれた色だと抱きしめられる。

健人くんの仕事ひとつ、言葉ひとつ。すっかり習慣になっていたものが一瞬で変わる。私の生活を新しいものへと塗り替えていく。すっかり私も健人くんの赤に、染められてしまっているみたい。

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