RBAの金融緩和に選択肢あり

■ RBAは雇用創出が最優先課題だとして、財政政策と併せて金融緩和強化の姿勢を打ち出した

■ 市場の追加利下げ観測は高まっており、短期的には豪ドルは下値を探る動きだが

 豪中銀(RBA)のロウ総裁は15日、「非常にまだらな景気後退からの回復」と題して講演を行った。新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンが緩和され、経済活動が再開されるにつれ金融緩和の効果は一段と高まると指摘。雇用創出は最優先課題だとして、どのような緩和策が理に叶っているのか、今後の理事会で検討していくとした。一方、豪政府は6日に経済対策を発表、今年度(2020年7月-2021年6月)から4年間で総額980億豪ドルの減税やインフラ投資などを打ち出した。中間層1100万人の消費喚起のため、税率32.5%が適用される収入の上限を12万豪ドルに引き上げるほか、年金受給者や低所得者に一人当たり500豪ドルを支給する。

 財政政策は景気下支えとなるが、昨日発表された9月の雇用統計では失業率が6.9%と前月から0.1%ポイント悪化と高止まり、雇用者数は前月比3万人減となるなど労働環境は厳しい状況が続いており、追加緩和の必要性は高まっている。ロウ総裁は昨日の講演で、政策金利と3年物国債利回り目標の0.1%ポイントの引き下げ、買い入れる国債の年限を5-10年に長期化するなど、様々な緩和策の可能性を示唆した。ただ、金融市場やマクロ経済の長期的な安定に及ぼす影響や、他中銀のバランスシート拡大が及ぼす影響など、複雑な課題を考慮すべきだとした。

 豪ドル安が加速したきっかけは、中国人民銀行が金融機関に対してフォワード取引を行う際の法定準備金を12日から撤廃すると発表し、市場の元高への警戒感が広がったため。さらに、中国政府が国有企業に対し豪州産石炭の輸入停止を求め、豪中対立が一段と先鋭化するとの懸念が強くなっている。豪ドルを展望するうえで当面の注目ポイントは、20日公表のRBA理事会議事要旨(6日開催分)、22日のデベルRBA副総裁講演、28日発表の7-9月期豪消費者物価指数、など。利下げ観測が高まるなかで、豪ドルは短期的には下値余地を探る動きとなろうが、財政・金融政策の余地が残るなかで、中長期的には200日移動平均線(0.6788米ドル、72円85銭)を下値メドに底入れ感が広がると予想している。

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