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「本と香りをめぐる対談集」Vol.3「秋」~文学アロマフェア~

2021/12/6(月)~12(日)文学アロマフェア~大切な誰かに贈る1冊の香り~@BOOKSHOPTRAVELLER

BOOKSHOP TRAVELLERは、約100人のひと箱店主たちが棚を借りてつくる下北沢の本屋。そこに集う個性豊かなひと箱店主たちと、“言葉×香りのアロマセラピー「読むアロマ」”のアロマ書房のコラボレーション企画のレポートnote「本と香りをめぐる対談集」を連載していきます。第三回目は豆本と古本を扱っている「そらまめ書林」の稲山ますみさんです。

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ひと箱店主:そらまめ書林 稲山ますみ

【プロフィール】
BOOKSHOP TRAVELLER一箱店主 そらまめ書林の屋号で豆本と古本を販売しています。

【選書した本】
秋(かこさとし、講談社)

【作品概要】
かこさとしさんが亡くなったあと遺稿が見つかり昨年出版された絵本。ご自身の身近な体験から戦争を悔んだ思いが描かれているのですが、描かれた当時は戦後日が浅すぎて?出版社で企画が通らずお蔵入りになってしまったようです。


「本と香りをめぐる対談集」Vol.3

アロマ書房:こんにちは。今回、「大切な誰かに贈る1冊」ということで『秋』を選ばれましたが、選書の理由を教えてください。

そらまめ書林 稲山ますみ(以下、稲山):戦争の本なんてちょっと重いし、タイトルからして季節外れ(笑)と思いましたが、今年読んだ中で一番心に残った本であり、1人でもたくさんの特に若い人に読んでほしいなぁと思ったので。人に贈るということならこれかなと。内容は悲惨過ぎて辛くなるというのではなく、かこさんの優しい語り口のせいもありますが、じわ〜んと心に染み込む内容じゃないかと思います。

アロマ書房:今年一番とは気になります!その理由はなぜだと思いますか?また、若い人に読んでもらいたいと思ったことについて、もう少しお聞かせください。

稲山:以前かこさとし展を見た時、子どもの頃は軍国少年として育ったかこさとしさんが終戦でパラダイムの転換を体験し、次の世代に戦争はいけないということを絶対伝えなくてはいけないという強い思いを持ち続けておられるのだと感じていました。

それをこんなに素晴らしく形にしたものが埋もれていたことと、発見されて出版されたこと、その本に自分が出会えたことに感動し、いろいろな人への感謝の気持ちが溢れてきました。

私の年代はもう自分で戦争は体験していませんが、まだギリギリ自分の親から直接戦争体験を聞く機会があったと思います。私も母から子どもの頃疎開した話、義母が空襲に遭って幼い弟の手を引いて逃げた話など聞きました。でももうそんな話をしてくれる人も90代です。それは仕方のないことですが、本を通して今の人に戦争を少しでも自分ごととして感じてほしいと思いました。

私、この本紹介しておいてなんですけど戦争ものの映画とか漫画とかどちらかというと苦手なんですよね。「火垂るの墓」とか悲しいに決まっているのでずっと見れませんでした。でも「この世界の片隅に」はアニメもドラマも好きなのですが、それは戦時中、底辺に重く暗いものがありつつも実際の人々の日々の生活には笑いやほのぼのとした日常もあり人々は逞しく生きていたという当時のリアルが描かれている気がして希望も感じることができるからです。

かこさんの絵本も重く暗いベースの上に人が人を思いやる気持ちの温かさを感じます。

アロマ書房:ありがとうございます。時代の重さ、そのなかにもあった日常や、人々へのまなざしのやさしさ、あたたかさが伝わってきました。
では次に、香りを作る参考にさせていただきたいのですが、作品の世界観を色に例えるなら何色でしょうか?

稲山:紅葉した山の色とか柿の色

アロマ書房:作品の空気感を表すとしたらどんな言葉になるでしょう?
※ 選択方式でお答えしていただいています

稲山:重い、あたたかい、やさしい、暗い、苦い

アロマ書房:大切なキーワードをたくさん感じました。そして、色や空気感からも世界観が伝わり、香りのイメージが湧いてきました。どうもありがとうございます!


以上のお話から、わたしが作った『秋』の香りがこちらです。

『秋』ブレンドについて

【ブレンドレシピ】
レモン ブラックペッパー ジンジャー
クローブ ヴェチバー ヒバ


「自分ごととしてい感じて欲しい」のリアルと、「戦時中も日常を逞しく生きた人々」のリアル。「今、ここ」をテーマにして作りました。香りのテイストは、作品の空気感から「重い、あたたかい、やさしい、暗い、苦い」。

ブレンドした香りをひとつずつ解説していきます。

黄色の実が希望や光をあらわすレモン。1年中実をつけ、生命力にあふれる植物。

心と体を温め元気づけるブラックペッパーは、バイタリティー、生きていく力をあたえてくれます。

ジンジャーは、古くから薬草とし使われ、胃腸の不調、冷え、痛みに用いられました。あたためること。そして、大地に根をはること(グランディング) 

和名は丁子(ちょうじ)と呼ばれるクローブ。その香りは、開花前の蕾から抽出され、花開くためのエネルギーが凝縮されているイメージ。ベースを整え活動的にします。

ベチバーは、イネ科の植物で、根から抽出される香りは土、大地を思わせます。気持ちを落ち着け、緊張をやわらげます。

そして、ヒバ。鬱蒼とした森のほの暗さと深み。日本人の心を癒す香り。

重く、暗いものが底辺にありながらも、人が人を思いやる温かさ、希望の光を感じていただけるような1冊と、その香りになりました。


『秋』の香りの感想

アロマ書房:完成した香りを嗅いでみていかがでしたか?

稲山:最初にブレンドのレシピを見ずに嗅いでみて、和の感じやちょっと懐かしさも感じる気がしました。スパイシーで甘くはないけど深みがあって、心も体も癒される香りですね。レシピを見ると和を感じたのはジンジャーやクローブのせいでしょうか。レモンの爽やかな香りも加わって抜けるような秋の空の清々しさが表現されているように思いました

アロマ書房:大変な時代にも、今の私たちと同じように秋の空を眺め、日々の暮らしを大切に生きた人たちがいる。そんなことに思いをはせる香りになっていたらと願います。どうもありがとうございました!


「文学アロマフェア~大切な誰かに贈る1冊の香り~@BOOKSHOPTRAVELLER」開催詳細

開催期間:12月6日(月)~12月12日(日)
会場:BOOKSHOP TRAVELLER(〒155-0031 東京都世田谷区北沢2丁目30−11北沢ビル3F)
営業時間:12時~19時
定休日:水・木

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