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桜の季節ですがミズメザクラ精油

アロマセレクトのシニアマネジャー坂本は化学のエキスパート。彼が過去に書いたサイエンスブログはとても興味深いのでnoteでも紹介したい!ということで人気のある記事を抜粋、再構成して掲載していきます。


桜の季節がやってきましたね。日本のあちこちで桜が開花しております。私もお花見に行きたいところですが、やんちゃな息子たちは「花より電車」が好きなので、どちらかというと休日は電車ツアーに行かざるを得ない状況です。とは言え、電車の中からも桜は見えますので、それでお花見気分といきたいと思います。

さて本日はタイトルにある「ミズメザクラ」という樹木から抽出する精油のお話です。ミズメザクラと言ってもお花見の桜とは関係がありません。バラ科の桜と異なり、カバノキ科カバノキ属です。樹肌が桜に似ていることから「ミズメザクラ」という名前がついています。

とは言え、富山の山に出入りしている方は「ミズメ」とのみ言っている人が多いですね。「ミズメザクラ」と言うと「ミズメのことか」と返ってきます。ミズメザクラは非常に固くしっかりした樹木で、お餅つきの臼にも使われていたそうです。

このミズメザクラですが、クロモジ同様に枝葉を粉砕して精油を抽出しています。収量は非常に少なく、1㎏から1mlに満たないほどしか抽出できません。

当然香りも桜とは異なります。(ちなみに桜の枝葉は水蒸気蒸留による抽出を試みましたが、うまくはいきませんでした。けっこう桜の剪定などで間伐材が発生するので抽出できるようになると嬉しいですね。日本っぽいイメージもありますし。)

通常、精油の特徴として成分が多様であることが挙げられます。人では調合できないレベルで複雑に多くの成分が含まれています。ところが、ミズメザクラの精油は100%サリチル酸メチルです。サリチル酸メチルというのは湿布薬でお馴染みの成分ですね。

サリチル酸メチル

ちょっと化学者ぶらせてください。サリチル酸メチルは、サリチル酸とメタノールから合成されるエステルです。

さて、ここでプチ化学の時間がやってきました。

有機化合物には「芳香族」というものに分類される物質があります。その代表的なものが下記の「ベンゼン環」という構造を持つ物質です。

ベンゼン環

芳香族というだけあって、香ってきましたねぇ。サリチル酸メチルにもしっかりとこの構造が含まれています。

さてもう一つ。こちらの構造もご覧ください。

エステル

こちらの構造を持つものを「エステル」と言います。こちらもサリチル酸メチルに含まれていますね。

化学の視点からするとエステルというと「美味しそう」というイメージを持ってしまいます。エステルの構造を持つ物質には香りの良いものが多く、お菓子の香料としてよく使われているのです。メロンの香りだったり、バナナの香りだったり、甘い香りを持つものが多いのも特徴です。

サリチル酸メチルもスーッとした湿布薬の香りではありますが、ちょっと柔らかい香りがするのはこのエステルの特徴かもしれませんね。

化学の視点から言うと、このようにいかにも良い香りが出てきそうな構造を2つも持っているサリチル酸メチルは、化学的にはとっても魅力的です。

化学の話はここまで。

さて、このサリチル酸メチルは痛みを和らげるのによく使われるように、山の人の話によるとミズメザクラの樹皮を肌にあてて疲労回復に使用していたとのことです。

サリチル酸メチルは非常に低濃度では食品の香料にも使われる成分です。香りも湿布薬に近いですが、市販の湿布薬はサリチル酸メチルの他にもメントール等、他の成分も含まれているようですね。

ミズメザクラ精油はサリチル酸メチル単一の成分構成のせいか、やや柔らかい感じがします。(上記の通りエステルの特徴でもあるかもしれませんね。)疲労回復のためにマッサージに使用するほか、目を覚ましたい時の香り付けにもおすすめです。

(坂本の経験上ですが)ブレンドするときのコツは、ほんの少量入れると良いでしょう。香りが強いため、少量入れただけで香り全体を支配してしまうこともありますが、20滴のうち、ほんの1滴ほどなら香りが鼻の奥までスーッと入っていき、他の香りに清涼感を付け加えることができます。もちろんミズメザクラ精油単体で香りを楽しむ方もいらっしゃいますし、癖になる香りなのかもしれませんね。

アロマセレクトスタッフがそれぞれの視点で語ったミズメザクラの記事があります。そちらもどうぞご覧くださいませ。

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