これでいいのだ巾着

 サーモスのスープジャーを入れる袋を探していた。

 専用のケースはたくさん売っている。しかし、保温性を持たせるためかスープジャーだけが入るジャストサイズのものしか見つからない。私はおかずを入れた小さい容器をスープジャーの上に重ねて入れるゆとりがほしかった。



 この500mlのスープジャーは買ったきり置物になっていた。
 普段作るお弁当が週末に作り置きしたおかずをつめるだけのもので、その日作ったスープを持って行くというシチュエーションにならなかったからだ。職場にはレンジもポットもあるため、お昼にあたたかいものを飲みたいという欲はスープジャーなしでも叶えられた。なんで買ったのか思い出せない。

 そんな置物が日の目を見たのは、歯科矯正がきっかけである。
 冷蔵庫で冷えたお弁当の玄米を冷えたまま食べるのが好きなのだが、矯正器具をつけているとその程度のかたさでも噛むのにとても時間がかかる。汁気を含んで柔らかくなった米、雑炊やリゾットを職場で食べる必要性が出てきた。

 そういえば私、スープジャー持ってる。

 というわけでスープジャーに炊いた麦ごはんを入れて持って行き、マルちゃん素材のチカラシリーズのトマトスープをごはんの上に載せてお湯をかけるだけの雑炊を1週間食べ続けた。おいしい。


 昨晩から今日の午前中にかけて、このスープジャーと一緒におかずを持って行くのちょうどいい容器をネットで探していた。頭の中に理想があるものをネットで探し始めるとなにかしらを見つけるまで検索をやめられない病気にかかっている。
 午前10時半頃、Skaterのピーターラビットが描かれた小さな2段重ねの丸型ランチボックスと、KEYUKAの縦型3段ランチボックスを購入した。
 前者は明日すぐ届くこと、後者は1段だけでも使えるふたが各段についており、スープジャーを使わないときでも温めたいおかずとそうでないおかずを別々に入れられて便利そうなことが決め手だった。

 私は袋がほしくなった。全てをまとめて入れられるふくろが。

 元々使っていたお弁当箱は洋風ふろしきみたいな布で包んでいて、スープジャーだけならカバンに直に入れてもよかったが、おかず入れはなにかで包みたい。そしてKEYUKAのランチボックス単体でも使える袋がほしい。
 そこで冒頭に書いた問題にぶつかった。スープジャージャストサイズの専用のものではダメだ。しかもスープジャーとKEYUKAのランチボックスの高さはおよそ5cm違う。スープジャー専用のものではダメなのである。

「縦型 お弁当 ケース」「縦長 お弁当 袋」「スープジャー ケース 750ml」などで検索してみたが、理想のものは出てこない。750mlのスープジャーを持っている人はみんな直持ちなのか?

 ふとKEYUKAのランチボックスのレビューに「水筒みたいに持ち歩けます」と書いてあったことを思いだし、「水筒 巾着袋」で検索してみた。
 かなり近くなってきた検索結果の中に、Aesopの巾着袋があった。

 私、Aesopの巾着袋持ってる。

 何年か前に友達がくれた、ハンドクリームの入っていた袋の存在を思いだし、引き出しを開けた。
 するとそこには、KINTOの巾着袋が一緒に入っていた。
 これは、今年の誕生日にハンドクリームをくれたのと同じ友達が一輪挿しにも花束を活ける花瓶にもなるという素晴らしい花瓶をくれた時に、花瓶を包んでいたものだ。

 KINTOの巾着袋にスープジャーを入れてみた。

 上に5cm以上の余裕があり、横にはスプーン箸ケースを入れるゆとりまである。しかも色はKEYUKAのランチボックスに近いグレー。

 完璧だ。これだった。ほしいものはすでに持っていた。

 ありがとう、友よ


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