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自分には見えない世界

先日、知り合いの作家の藤木貴子さんの展示を見に御徒町へ行ってきました。

同じ日本画専攻の出身で恐らく年齢も近いのですが旧知の仲というわけではありません。ツイッターでたまたま知り、その綺麗な花の描写に心を奪われてしまって以来、彼女の作品のファンなのです。これまでにポーチュラカとデルフィニュームを描いた2点の絵を買いました。作業部屋に飾っています。

決して奇を衒った作風ではないのですが、繊細な色の表現と瑞々しい空気感は見るたびに惚れ惚れします。自分は元々はこういう絵が好きなのです。(好きな絵と描ける絵は必ずしも一致しないという…)

「この人と自分は明らかに見えている世界の色が違うな」と思わせられる作品を描く人が、これまで自分の出会った中で何人かいます。藤木さんもその内の一人です。そういう絵は、自分には見えていない世界を見せてもらっているような感覚になります。モチーフをシンプルに描いているからこそ余計に強くそう感じさせられます。

で、そういう絵描きって少なくとも自分の知る範囲では、例外なく女性なのです。一般的に男と比べて女の方が色彩への感受性が鋭いとされていてこれには生物学的にも裏付けがあるのですが、絵描きの傾向としても女性の方が色彩の魅力を操るのが巧みな人が多い印象があります。対する男性は徹底して技巧的だったり、哲学的な抽象観念を扱う方向性が強い。

ヒトの色覚の基本形はRGBの3原色認識ですが、オスは3、メスは3〜5とされています。 認識出来る中間色の階調が細かい。世界の色が高精細に見えている人が腕を磨けば、出力もまた繊細にはなるのは必然だろうと思います。4色インクと6色インクのプリンターみたいで面白い。
ちなみにサル(マーモセット)もオスは2色認識、メスは2〜3色認識で、こちらもまたメスの方が色覚認知能力が高いそうです。

絵の男女差については以前読んだ本を書いた記事があります。

ここでは子どもの絵の男女差を分析すると男子ははっきりとした原色系、女子は中間色を好む傾向にあるとされています。この色覚の話を前提に置くと、これは好みというか本人が見えた色や感じた色を素直に表現した結果そういう選択をしているということもありえるのかもしれないですね。

途中から男女の話になってしまいましたが、それもまた一つの切り口として、違いがあることが感じられるのは自分にとっては面白い発見の一つです。

作者のフィルターを通して見た世界を出力しているという意味では、色彩だけに限らずあらゆる創作物がそういった性質を持ちうるでしょう。自分の作品もまた、他の誰かには見えない世界の形を見せているのだろうと思います。もっとクリアに見せられるように腕を磨きたい、と改めて感じました。

そして展示の帰りに気づいたら秋葉原のゲーセンに立っていて、気づいたらクレーンゲームで鍋を取っていました。スープが美味しい季節になってきましたね。終

料理もなるべくきれいな彩りで作りたいですが…

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