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【読書】『ペンギン・ハイウェイ』
森見登美彦 角川文庫
こんな息子が欲しい!
小説を読んで登場人物にそう思ったのは初めてだった。
アオヤマ君は10歳ながらに勉強熱心で、計画的で、友達想いで、信念を曲げない。それでいて、純粋で恋がわからない。少し理屈っぽいが、そこも愛しい。自分の四年生の頃とはまるで違っている。アオヤマ君のような考えができたら、私ももっと「賢く立派な大人」になってただろうか。いや、百歩譲って考えができても実行はできなかっただろうな。
今回文庫化された時以来、9年ぶりに読んだ。
覚えていた内容とは全く違っていた。もっとパラレルワールドのような話のイメージしてたが、どこにもそんなシーンは無かった。
自分の記憶に驚いたので、今回は備忘録として残しとく。
アオヤマ君の周りの大人は素敵な人ばかりで、そういう大人にもなりたいなとも思った。
“海”を観察する3人が可愛い。“海”とペンギンとお姉さんを取り巻く不思議な現象。お姉さんのを言いたくても言えないともどかしさを感じるアオヤマ君。自らあみ出した方法で“海”測定するハマモトさん。2人に憧れてノート作り、ゆっくり書き出すウチダ君。
悪役の登場人物であるいじめっ子のスズキ君も、次第に可愛く感じる。
そして、お姉さんとの関係。恋していることにアオヤマ君一人が気がついてなく、終盤の
「父さん、ぼくはお姉さんがたいへんすきだったんだね」
と言ったアオヤマ君に、お父さんが言う
「知ってたとも」
この会話が好きで、そして泣きそうになった。そして、あの時アオヤマ君は本当に泣いてなかったのだろうか。
大人になったアオヤマ君は、またペンギンハイウェイを辿ることができるだろうか。
小学四年の春から梅雨そして夏が終わる頃まで。彼らの青春を見守ったような感覚。ファンタジーなのに、何故か経験があるような懐かしく思える部分もあった。
登美彦氏が書く文体はいつも他の人と違っているような雰囲気があり、面白く心地良い。古めかしい大学生の文章のような文体から、小学四年生の文体。魅力的な文体は登美彦氏の小説が好きな理由の1つ。
(持ってるのは平成24年の初版のん。ブックカバーはアルカラグッズのん。)
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