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イ・チャンドンレトロスペクティヴレトロスペクティヴ

イ・チャンドンレトロスペクティヴ

年末の最後の1週間、やるべきことはたくさんあったがやるべきことの隙間の時間を見つけて2日1作品程度のペースで映画館に映画を観に行っていた。

韓国映画界巨匠イ・チャンドン監督のレトロスペクティヴ(全作品リバイバル上映)である!(ババン!)

結果としてじぶんはイ・チャンドン監督の全6作品のうち4作品を観ることができた。

イ・チャンドン監督の作品はどれも一筋縄ではいかないものばかりで観ている観客の心を抉るようなものが多い。あーこのストーリーだと次はこうなるのかなぁ〜と安直に考えた方向には絶対に行かず、とんでもない角度から隠し刀で切りつけてくるような作品ばかりである。

以下、じぶんが観てよかった順に作品を示す。

オアシス

4作品観た中だと映画としてはこれが一番ベストだと思った。イ・チャンドン監督作品はなんとなく「主人公が何かしらの方法で問題を解決する」という話の構造がある気がしていて、この作品の最後で主人公が解決したことは他人が見れば本当に他愛もないどうしようもないことなのだが、一人の人間にとってはとても意味のある行動だったという点で価値があった。全体的に問題は何一つ解決されなかったのだが観たあとスッキリした気分になったのはそのためかもしれない。良い映画のお手本のようなプロット。

ポエトリー アグネスの詩

最後の方まで主人公のミジャがふわふわと詩を書くために花を眺めていたり、過酷な問題に直面している現実から目を逸して逃げているのではないか?(作中そうした描写もあり)ボケているのではないか?と疑っていた。しかし、最後の最後で過酷な現実に対して全く逃げずに一点の曇りもない「決断」を下したミジャに良い意味で裏切られた。詩を作る活動が過酷な現実に答えを導く力になっていたのかもしれない。果たして主人公と同じ状況で最後のあの「決断」をじぶんは下せるのだろうか。最後の切れ味が凄まじかった。

シークレット・サンシャイン

間違いなく「信仰」がテーマになっていて、じぶんも最初半分くらいまではああ、塩狩峠みたいなキリスト教関係の作品かな?と勘違いしていたが、イ・チャンドン監督はそうした予想を全部裏切るのであった。主人公は過酷な現実と耐えきれないほどの苦難や困難にさらされているのだが、その問題の解決は「信仰」などというシステムでは全くダメダメだったという点、それを解決するには結局は己で己を助けることでしか叶わないのではないか?という問題を投げかけるようなラストが印象的な作品だった。信仰を扱う深いテーマのためこちらをベストとする人も多いと思うが、じぶん的には映画として観た後の爽快感やプロットは上記2つの方が優れていると思ったためこの位置にした。

ペパーミント・キャンディ

なんとなくメメントっぽい作品。イ・チャンドン監督の「主人公が何かしらの方法で問題を解決する」という構造から見るとこの作品では何も解決していないように見えるが、人生最後の破滅した主人公の走馬灯という形で最も幸せだった時代に時間を巻き戻すことで問題が解決されたと見るとスッキリ辻褄が合う気がした。やっぱりイ・チャンドン監督の作品は「主人公が何かしらの方法で問題を解決する」のだなと。

おわり

6作品中の4作品しか観てはいないが、それだけでもすごい監督のすごい作品だということがわかった。年末の忙しく少ない時間のなか時間を見つけて観に行くことができてとても良かった。

よい作品に触れられてよい年末の過ごし方ができた。


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