子どもの雪

 昼間もずっと冷え込んでいて風が強く、薄暮の頃から舞い始めた雪は、日が落ちてからも大袈裟に降り続いている。
 帰宅途中、最初の雪片がひとつふたつ、ふわりふわりと左から右へ飛んでいき、それを目で追ううち、あっという間に視界は真っ白に塗り潰された。
 街灯や車のヘッドライトの明かりの中を、白い影が高速で横切っていく。冷えたアスファルトに落ちた雪はすぐには溶けない。走る車が起こす風に煽られて舞い上がり、波立ったり渦を巻いたりして右往左往する。
 雪が降ればどうしたって心が騒ぐ。慣れていないのだから仕方がない。
 積もると困るとか、寒いのは嫌だとか、そういうんじゃなくて、単純にいつもと違う風景が見たい子どもの心だ。
 明日の朝、積もっているかな。起きたら雪だるまを作ろう。手のひらに乗るくらいの、小さいやつ。

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