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広報の定義(日本広報学会)

【広報の定義】 
組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。

日本広報学会 2023年6月21日

日本広報学会「広報の定義と解説」
https://www.jsccs.jp/.assets/definition.pdf

定義の目的

  1. 広報に対する共通認識の形成
    取材対応や記者会見などのメディアリレーションズ中心だった時代から、インターナルコミュニケーション、IR、公式サイトや SNS の運用などの相乗効果を重視する時代へ変化し、より総合的 かつ戦略的なアプローチを重視する時代へと移行した。

  2. 隣接領域との関係の明確化
    一つの文章の中で「広報」「PR」という表記が互換的に用いられることは多い一方、「広報」と「PR」は異なる意味を持つ概念であるという指摘もある。組織の広報担当部署には「広報部」、「コーポレート・コミュニケーション部」といった名称が用いられて おり、英語では「パブリック・リレーションズ」という名称を使うことが多い。定義を行うことで、表現の不統一に伴う混乱の収束に貢献する。

  3. 広報領域の地位向上
    広報に対する共通認識の統一性がないことにより、広報研究や広報実務へ の理解が不十分になっている。その概念が不明確だとその価値を明確に伝えることが困難になる。その理念を示すことで、広報領域の地位向上に貢献する。

検討課題

定義の再検討への課題として、
1 :名称として何を選ぶべきか
2 :目的・対象は何か
3 :どのような手段・コミュニケーションであるべきか
4 :どのような機能・役割を持つべきか
5 :どの領域・分野まで関与すべきか

定義の特徴

1:「広報」「パブリック・リレーションズ」「コーポレート・コミュニケーション」を同じ意味を持つ言葉として定義したこと
2 :広報の主体を広く捉え「組織や個人」としたこと
3 :広報の目的を「関係の構築や維持」ではなく、(組織や個人の)「目的達成や課題解決」としたこと
4 :広報の客体を「パブリック」ではなく「ステークホルダー」としたこと
5 :目的に至るまでの過程として、目標に「社会的に望ましい関係を構築・維持する」を掲げ、 そこに信頼・倫理・自己修正の概念も包含したこと
6 :広報の分類を「コミュニケーションプロセス」ではなく「経営機能」としたこと

「対象」

「パブリック・リレーションズ」「広報」「コーポレート・コミュニケーション」の用語はそれぞれ実務における社会的な要請や問題意識を背景に誕生している。同時に「本来の意味」について、明確な違いを指摘することも困 難で、いずれの用語も、理念や本来の意味として掲げられる内容は類似している。本定義においては、こうした実態を重視して、三つは同じ意味を持つ表現および概念として捉えることが望ましいと考える。

「主体」

本定義では、広報の主体にあらゆる組織や個人を含む。つまり営利企業だけでなく、行政機関、学校法人、医療機関、非営利組織はもちろん、個人も含むと考える。従来、 広報は、組織が主な担い手だったが、メディア環境が激変し、オウンドメディアや SNS を活用して、アスリートや芸術家など、個人が自らをセルフプロモーションするなど、事業目的で広報することが可能になった。

「目的」

本定義では、広報の目的は、組織や個人の「目的達成や課題解決に貢献すること」と捉える。広報の目的は幅広く、認知の獲得や売り上げの向上、採用計画の実現、失われた信頼の回復など多岐にわたる。

「客体」

本定義では、広報の客体にも、個人から組織、社会まで、多種多様なステークホルダーを含む。「パブリック・リレーションズ」の表現に用いられる「パブリック」は抽象的な概念であるのに対し、「ステークホルダー」は主体との関係を具体的に意識する上で効果的な表現だと考える。

「手段」

ステークホルダーに対する理解を伴う「双方向コミュニケーション」。組織や個人が目的の達成や課題の解決を試みる上で、多様なステークホルダーと双方向コミュニケーションを展開することは不可欠であり、マーケティングや危機管理を含むあらゆる領域で重要視されている。

「目標」

目的に至る目標として「社会的に望ましい関係」を挙げる。社会的に望ましいとはいえないような広報は批判にもさらされる。例えば、広告であることを明示しないようなステルスマーケティングや、記者会見での不誠実な対応は問題視される。

「分類」

広報を経営機能の一つとして位置づける。経営機能とは、継続的・計画的に 事業を遂行するために必要な役割であり、企業経営においては、人事機能、マーケティング 機能、販売機能、財務機能などと並ぶのが広報機能である。広報機能を果たすための業務と しては、記者会見の実施、取材対応、社内報の発行、SNS の運用など、具体的な活動や、それに関わる調査・計画・実施・評価などのプロセス管理が含まれる。