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クラウドツーリズム

01 クラウドツーリズムの概念

”クラウドツーリズム”は、中国Analysis社の2020年3月に発表した「アフターコロナの中国で消費急増が予測される5大産業の現状と未来」の翻訳記事によると、”現地に行けず、ネットで旅行先の情報を堪能すること”という表現がある。(※1)

ツーリズムという言葉は、単なる旅行による楽しみの意味を超え、観光をビジネス的に捉えた場合に用いられており、それを踏まえるとクラウドツーリズムはオンライン上での旅行の楽しみを超えて、観光事業としての意味を含んでいると言える。コロナ以前にはさほど意味を持たなかったWEBサイト上のオンライン旅行体験は、いま新たな消費活動として見出されたと言える。

 さらに”観光”の定義として、観光政策審議会(1995)では「余暇時間の中で、日常生活圏を離れて行うさまざまな活動であって、触れ合い、学び、遊ぶということを目的とするもの」としている。(※2)
そのような観点では、オンライン上であってもコミュニケーションが取れ、国内外を問わずあらゆる風景や体験を実現できるのであればクラウドツーリズムも観光に含まれる概念と言える。

02  雲旅行

中国語の「云旅游」、日本語の漢字にするとすなわち「雲旅行」となる。2020年の中国の旧正月(春節、2020年は1月24日〜30日)は中国本土や台湾、香港などの中華圏では大きな連休の時期であったが、コロナ の影響により旅行の中止が相次ぐことになった。それに変わって流行したものがインターネット上での観光地の動画や写真をみて旅行気分を味わう「雲旅行」だった。すなわちクラウドツーリズムである。中国では、SNSのWeiboでのハッシュタグの拡散やアリババの運営するOTAでも観光地の様子の生配信などが行われた。

もちろん旅行は国内に限らず、海外旅行も含まれ、特に各国の入国制限中では海外へ行くことはより困難なもので、旅行への渇望は高まるばかりの時期だ。そのような背景もあり、クラウドツーリズムは苦し紛れだったとしても新たなな存在価値が生まれたと言える。

03 Airbnbのオンライン体験

民泊など宿泊のネットワークを運営するAirbnb(エアービーアンドビー)では2020年4月よりオンライン体験プログラムを開始。

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(参照:Airbnbプレスリリース)

● お坊さんとオンライン瞑想(1人1000円。日本語/中国語/英語)
● ボブスレーのオリンピック代表選手のある1日(1人3300円。英語)
● チェルノブイリの犬たちに会おう(1人3690円。英語)
● アニメオタクと学ぶ日本のサブカル文化(1人2000円。日本語、英語)

04 まいまい京都のミニツアー

「まいまい京都」のミニツアーは2020年5月GW期間中にライブ配信による5コースを公開。(1人2000円)




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(参照:公式サイト)

トラベリングコーヒー牧野さんの、おしゃべり珈琲教室
~珈琲豆&ドリッパー、選び方淹れ方レクチャー、最新珈琲屋事情まで~
一から学ぶ仏像の世界、政田マリのオンライン白熱教室
~見方・法則・時代性、美と信仰が刻まれた仏教の宇宙観~
オンラインだョ、全員集合!庭師と、日本全国バーチャル庭園ツアー
~見方・法則・時代性、美と思想が凝縮された極上の日本庭園に迫る~

05 国立科学博物館 おうちで体験VR

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06 スマートツーリズム

クラウドツーリズムに対し、スマートツーリズムについて近畿日本ツーリストは「ウェアラブル端末のスマートグラスを利用し、失われた文化財や街並み、歴史的事件などをバーチャル上に復元・再現。可視化させた文化的・歴史的資源を自然環境、伝統文化などと調和することで地域の魅力を再発見するツールとして活用できることを提案し、誘客を図っていく(※3)」としている。
VRを使えば広い意味で観光地に訪問せずとも旅行を楽しむことができるが、どちらかというとウェアラブルなどの端末を活用することを前提にしている事例が多い。

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(参照:SONYインタビューサイト)

また、バーチャルツーリズムという表現も散見されるがオンライン体験のうちでもVRなどのツールで視聴することを前提として撮影されたものが多いようである。バーチャルというぐらいなので疑似体験というニュアンスが強い。一方、クラウドツーリズムは疑似体験の域を超え、オンライン上でのコミュニケーションが発生するもの含まれ、オンライン観光の中ではより意味が広いものと捉えられる。

07 参照サイト

※1 日本CTO協会2020年4月
※2 国土交通委員会レポート2007年6月
※3 トラベルボイス2014年11月
他  Vponレポート2020年4月
SONYインタビュー(近畿日本ツーリスト)