徹頭徹尾、な~んにもない一日

今日は本当に何もない一日だった。何もない一日をどう表現すればいいものか。あまりにも日常。平穏極まるこの一日。いやホントにびっくりするぐらい可もなく不可もなく。笑っちゃうぐらいあまりにも何もなかったので、文字に興してみようと思い立ったのです。

今日という日をまとめてみませう。どのくだんから記したものかと思案する。手短にすませようと腕を組んでうんうんと脳漿をフル回転する所存だ。配慮むなしく思いのほか長々となってしまうと、僕のノートを読んで下さっている方々に申し訳がない。僕の文章集約能力にご期待あれというところだろうか。

ベッドと同化してまどろむ僕の体躯を携帯電話のモーニングコールがけたたましく咆哮し叩き起こす。目覚まし二台とスヌーズモードのおまけ付き。ぼっとん便所のおつりぐらいいらない機能だが自分の意志の弱さに定評のある僕としてはやむなくスヌーズモードを使用している。

携帯と本格派目覚まし時計。2台の猛攻が僕の耳をつんざく。大音量でいななく目覚ましの音を反故にして寝続けるほど剛の者にもなれず、いたし方なくゾンビの様に床を這って目覚ましの音源までにじり寄る。

目覚ましを止めてTKO負け寸前のボクサーの様に何とかファイティンポーズを取って千鳥足で電気とヒーターをつける。暖を即刻取らないといけない。布団からでて凍てつくブリザードにいつまでもこの身をさらしておくことが僕はことさら忌み嫌った。なぜなら僕は冷え性だからだ。

子供の頃「寒い、寒い」と母に言うと「冬からな。冬は寒いねん。結構昔からそう決まってんねん」といなされたものだ。

服を着替え一通り仕事に行く準備を終えて、しばし思索に耽る。朝食を食べるべきか食べざるべきか。ここは簡単に珈琲だけで済ませるかそれともさらなる高みを目指してT・K・Gと洒落こむか。眉間にしわを寄せ口を堅くつぐんで思案そして思案。

そして一つの答えが脳裏をよぎった。能うるかぎりカロリー摂取は控えるべし。because。僕の体重は正月のめでたさで膨らんだまま維持されていたからだ。バレンタインデーも過ぎたというのに体重だけ正月ぼけがいまだに継続しているしまつだ。

しかし腹の虫が奇声を上げて蠢いている。きりきりと胃を締め上げてくるようだ。とっさにコップを手にして乱暴に蛇口をひねって水を食道に流し込んだ。あれだけ僕の胃の中で暴力的破壊的空腹感を発していた腹の虫が少し大人しくなった。

好機!この瞬間を逃すわけにはいかない。すぐさま僕はドアノブに手をかけて外へ出た。

大雨。しかもかなりの大雨。がっかりだ。

僕はいつもは自転車で通勤している。しかしこの大雨。電車で行くしかない。そうとなれば・・・・・。

時間がない!自転車で20分程度の場所に職場はあるのだがひとたび電車で行こうとすれば、駅まで歩いて電車に乗り電車を降りてからがこれまた大変。ガンダーラを目指す三蔵チームかよ。とつっこみをいれたくなるほどはてしなく地下道を歩いていかなければならない。

つまり自転車で20分で行ける職場が電車だとその倍はかかる。時計に目を落とすと、ぎりぎりセーフか。まぁ、遅刻濃厚。や、やばす!

転職してまだ三か月そこそこ。新人社員の僕には遅刻なんて選択肢はない。万死に値する。年下の上司にお叱りを受けた暁にはいくら純粋無垢、いたいけな僕とて心がチクリと痛むのは必定。歩いて10分かかる駅までの道のり。薄くなった髪を振り乱し、傘をさしているのに全く意味をなさないぐらい雨脚にハイキックを喰らいながら息も絶えだえ走りに走った。駆け抜けた。駅の入り口まで必死でたどり着き、僕は地下鉄に向かうべく地中深くまで突き刺さる階段をつるべ落としの如く潜っていった。

急いでSuicaの入った財布をカバンから取り出してピッと改札を通って・・・通って。改札が開かない。財布を二転三転させて改札に早くmy Suicaを認知してください。と懇願しながらバンバン叩く。ようやくあーお前か。と改札さんがSuicaを認知して下さって通せんぼを解いてくれた。

僕は猛然と地下道を爆走した。息が上がり心臓が踊りだす。それでも債鬼の如く迫りくるタイムリミット。もうダメだ。万策尽きたか。

職場まであと3分ほどというところで無情にも出勤時間である9時を過ぎてしまった。身を切られる思いで申し訳なさそうに職場に入った。するとまだ誰も出勤してきていなかった。あれ?キツネにつままれたように首をかしげていつものルーティーンワークであるお掃除をしてると職場の先輩がしばらくしてから出勤してきた。

「今日はあなたは遅出だから10時出勤ですよ」

とのこと。顔面蒼白にして生命の危機を感じながら出勤してきた僕っていったい・・・・。まぁ、遅刻しなくてよかった。一時間も前に出勤してくる新人スタッフ。やる気満々みたいでいいじゃない。と自分を慰める僕だった。

それから、仕事が開始した・・・。これ以上書いたらPHP文庫で出版できるぐらいの分量になってしまう。これぐらいにしておこう。

本当に何もない一日でした。(笑)

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