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無敵姉妹

叔母の70歳のお誕生日の時のお話。

70才と言えば古希。お祝いだ!!しかし、叔母の息子どもはやれロサンゼルスだ東大阪だとグローバルに羽ばたいているため、お誕生日会には欠席。それじゃなんだから、と妹であるうちのオカンが叔母のお誕生日会を企画した。


オカンがお誕生会の旨を叔母に電話するところからこの物語は始まるのである。


プルルルルル。ガチャ。


オカン:あっ姉ちゃん。うちやけど。今度の土曜日姉ちゃんの古稀の誕生日やんか。姉ちゃんの息子たち帰ってけーへんねやろ。〇〇(私)と〇〇達(妹親子)連れてねーちゃん家行くわ。


叔母のお祝いに叔母の家に行くのか〜。とオカンの後ろで撮り溜めていた「天皇の料理番」を見ながら「お兄ちゃんいい人過ぎ!!!」と涙しながら、なにげに聞いていた。


オカン:せやから、姉ちゃん料理作っといて。食べに行くさかい。ほなな。
オカンはそう言って、受話器を置いた。


!!!!!


叔母の祝いに叔母に料理させるのか!しかもうちの家族ばっかり総勢5名分の料理を!!


感動の涙もすっかりへっこんでしまったではないか。ツッコまずにはいられない。

私:叔母ちゃんの古希の祝いやのにオカンが料理作らすんかい!!
オカン:せやけど姉ちゃん料理誰かに食べてもらうんが生き甲斐やねんから、作らしたったらええねん。食べてやるのが祝いやねん。


どんな理屈やねん。と突っ込みを重ねたくなったが、そんな祝いもあるのか〜。と一応納得することにした。


祝い当日。私たち家族は叔母の祝いに叔母の家へと向かった。なんだか変な感じだが、まぁ。オカンの決定には逆らえまい。


叔母の家に行くと、到着するなり、お通しの高野豆腐が粋な叔母手作りの陶器の皿で出てきた。


叔母は陶器、和裁、洋裁、書道、華道、絵画、和歌、短歌、狂歌、お茶にお花の達人である。私は以前から叔母流の流派を立ち上げればいいと進言している。


お料理はお通しを皮切りに、和洋折衷テーブルにのりきらないほどの料理が次々と出されていった。主役が一番せっせと働いている。


誰の祝いなんだ?と首をかしげながら、叔母の料理に舌鼓をうつ妹親子たち。


私のそんな違和感を打ち払うように叔母は「それ、おいしいやろ。今朝掘りたての新ジャガと玉ねぎやで」と、嬉々としている。まぁ。本人も何の疑問も持たずに喜んでいるのだから、いいか。


一通り料理が出そろったところで、オカンが「姉ちゃん。とりあえず座りや。」と、意味深に台所に立つ叔母をリビングに呼び寄せた。


おっオカン。珍しく気遣いができるじゃねーか。そうだ今日は叔母ちゃんの古希の祝いだからな。

と私が内心感心していると「私もうお腹いっぱいやわ。料理もういらんわ」と言い放った。


なんと!!神をも恐れぬ言いぐさ!!


自分の誕生日にせっせと我ら親子をもてなしてくれている叔母に対して言う言葉か!我が母ながら無敵なやつよの〜。と感心してしまう。叔母がリビングに座り、ビールを一口すすると、オカンは突然、バースデイソングを歌い始めた。私たちもオカンに続いてバースデイソングを合唱した。


オカン:姉ちゃん古稀のお誕生日おめでとう!!


オカンはそう言って、大きな包み紙を叔母に手渡した。


叔母は、ありがとう、ありがとう、とうっすら涙を浮かべて喜んでいた。
やっと、祝いらしくなってきた。


空けて、空けて、と嬉々と叔母の喜ぶ姿を期待してオカンが叔母に包みを開けるようにせがむ。


叔母は、ありがとうを繰り返しながら、包み紙を広げた。中には純米大吟醸と書かれたそこの酒蔵でもレアな一品が入っていた。

私はひそかに値段を予測し、オカン結構奮発しよったな。と感心してると、叔母は「これ、ええ酒やんか。ありがとう。」と酒瓶を手に一通りラベルを見ると私にその酒を手渡した。


「〇〇(私)それあんたにやるわ。おばちゃん飲まへんから」


まさかの一言。オカンは意外な展開に慌てふためき


オカン 「せやけど、姉ちゃんお酒好きやんか」
叔母 「お酒言うても、私は焼酎派やねん。ビールやワインも飲むけど、日本酒は料理にしか使わへんねん。こんなええ酒料理酒にしたら勿体ないやろ。せやから、酒の味のわかる〇〇(私)が飲んだ方がお酒のためやねん」


ごもっとも意見ではあるが、祝いの品を貰ってすぐに目の前の甥に贈呈しまう叔母も叔母である。


オカンのせやけど姉ちゃん。のリフレインにたいして叔母はひたすら「残念!!」と繰り返していた。この姉妹はどっちも無敵である。


ヤレヤレ ┐(´(エ)`)┌

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