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登山なんて大嫌い:酒呑童子、大江山連峰編

自慢じゃないが、私は登山が大嫌いである。しかし、時折、ふと乱心を起こすことがある。

ある日私は深酒をして、倒れ込むように布団にもぐりこんだ。

朝日にたたき起こされ、眠い目をこすって窓を開けると、晴天快晴。さわやかな風が頬を撫で、酔いを醒ます。何とも気持ちのいい朝ではないか。

よし!! 山に登ろう!!

思い立ったら吉日である。

Tシャツにジャージ。完全に山をなめきった姿に身を包み・・・

ジャージのお尻のところに穴が!!

いきなり出鼻をくじかれてしまった。

まぁいい。ジャージを脱ぎ捨て、アーミー柄のメンパンに履き替えた。

よし、軽ーい登山に行くとき用のお気に入りウエストポーチを押入れから取り出し・・・

無い!!

ヒマラヤ(スポーツ用品店)で気合を入れて買った、ちょっとかっこいい目のちょっと値段がお高い目のウエストポーチが・・・無い!!

押入れと格闘すること30分。家中をひっくり返して探索。

結局ウエストポーチは見つからず、部屋がぐちゃぐちゃに散らかっただけだった。

くっそー!!

「だから登山は嫌いなんだ。」

と、ひとり呟きながら、近所のリサイクルショップで適当なウエストポーチを買い、いざ出発。

以前から「景色がいいので行ってみてください。」

と、アウトドアラーの知人から言われていたところである。

大江山連峰。鍋塚、鳩ヶ峰、赤石ヶ岳をつなぐ連峰である。

標高は750m前後と、比較的軽いコースである。

車を走らせて、登山口のある大江町へレッツラゴー・・・

「土砂崩れのために通行止め」の看板。

神よ、今日は私に山には登るなと仰せか。

いや待て、あきらめるにはまだ早い。ちょっと迂回して大江町に入ればいいのだ。

カーナビで別の道をセットしていざ大江町へ!!

道はドンドン狭くなっていき、ちょっと不安を覚え始めた時、

「この先、道幅減少。大型車通行困難。」

と書かれた立て看板発見。

「トラックはムリだ」と言う事だろう。まぁ、普通乗用車だし、大丈夫でしょう。とタカをくくって、前進。

数100m進んだところで絶句。車一台ギリッギリッの山道。ガードレールはなく、タイヤから崖までの余裕が10?そこそこ。これはやばい!!やばいですよ。先を見やれば、延々と続く砂利道クランク。

そ〜っと谷底を見ると・・・

見るんじゃなかった。身の毛もよだつほどの絶壁度ではないか。

後悔先に立たず。もう後には引けない。たかだか数100mとはいえ、到底バックで帰れるような道ではない。確実に谷底に転落してしまう。前進あるのみ。もし、対向車が来たら、終了。

こんな道を案内しやがったカーナビの野郎を恨みつつ、対向車が来ませんように、来ませんように。とぶつぶつ呪文を唱えながら、必死のパッチ、死に物狂いで恐怖の山道を時速2キロ程度で遅々と進んでいった。

仏のご加護か、天使がラッパを吹き鳴らしたか、対向車はなく、無事山里まで降りることができた。

ズボンは破れているは、お気に入りのウエストポーチは紛失しているは、道は狭いは・・・もう嫌だ。

登山口に着くまでに早くも疲弊してしまった私は、元来登山なんて大嫌いな性格も手伝って、もう帰ろうかな?と、家路に向かいかけた。

しかしまぁ待て、せっかくここまで来たのだから、ちょっとぐらい登ってみてはいかがなものだろうか?

と、もう一人の自分が語りかける。

まぁ、ちょっとぐらいなら、ちょっとね。

と、自分に言い聞かせ登山口へと車を向かわせた。

大江の鬼と源の頼光四天王に出迎えられ、登山口を目指す・・・

しかし、またもやアクシデント勃発。登山口が見つからない。

山道を行ったり来たりしながらようやく登山口を見つけることができた。

杭に書かれた文字を読むと鍋塚まで1100米。

今までの経緯プラス登山口探索で完全にやる気をなくしていた私だったが、表示が書かれた杭を見て、ようやく登山口を見つけだした達成感と喜びで登山意欲が俄然復活してきた。

よし!登るぞ〜。まず目指すは鍋塚!!

歩き始めること15分。突然のスコール襲来!!

ガスも立ち込め一寸先は純白!!

ダメだ!! これは完璧にダメなやつだ!

撤退、撤退!

数々の苦難を乗り越えて登山口までやっとの思いでやってきたと言うのに・・・

ただ、ずぶ濡れになっただけで終了。

やっぱり登山なんて大嫌いだ〜。

今日は向かい酒でも煽ってふて寝しよ。

はぁ〜。お部屋片付けなきゃ。お片付け、お片付け。

(^ー^; ))

このお話はそこでは終わらなかった。

後日、大江山の例の山道のことを地元の人に聞いたところ、驚きの事実が判明した。

その山道。地元でも有名な道らしくて、春になると雪解けとともに、毎年のように数台の車と死人が見つかるそうな。

知らぬが仏とはまさにこのこと。知らず知らずの間に、身の毛もよだつ心霊恐怖スポットに足を踏み入れていたとは・・・

その話を聞きながら、背筋が凍り、腕にはサブイボの雨嵐。

(サブイボ=鳥肌のこと。方言かもしれないので)

お〜。コワ。

山に行くときは、あまりカーナビ君の言う事を聞かないようにしましょう。命が無くなります。

ヒィー(((゚Д゚)))ガタガタ ガクガクガクカヒィー

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