名ばかりDX・逆効果:そこまで言わんでも【DX哀歌①】
1.「X(Transform)先行論」
「X(Transform)」が先か、「D(Digital)」が先か。
耳にタコができるぐらい議論されているテーマです。そしてこの議論の勝ち筋もほぼ決まっています。
まともに聞こえるのは「X(Transform)」先行の方のアプローチです。
「あるべき業務の姿を構想してから、その改革に資するデジタルツールを選択・導入するべきである。」
「Digitalの導入が目的になってはならない、必ずただちにTransformを伴うものでなければならない」
言っていることは至極まともなように聞こえます。ツールの導入は、何かの業務の改革を成し遂げるため。なるほど。
けれどもその言説を振りかざす人にあえて私が聞きたい質問があります。
それは、
「私生活でもそうなんですか?Digitalをいきなり最初から完璧に使いこなせるんですか?」
ということです。
2. 私生活の「DX」
例えば「メルカリ」や「Amazon」といったデジタルサービス、デジタルツールのことを考えてみましょう。
あるべき個人間の商取引の姿を考えた結果、私は「メルカリ」を利用することを決めた。
あるべき購買活動の姿を検討した結果、私は「Amazon」を利用することを決めた。
「X(Transform)」を先に考えてから、「D(Digital)」を考えるというのはこういうアプローチです。
そしてツールやサービスを使い始めたら、すぐに生活スタイルを変革しなければならない。
ツールだけ導入されるなんておかしい。
ツールの導入でなにか不都合なことが生じたら、そのDXは「名ばかり」で「逆効果」だ!
なるほど。厳しい意見です。
しかし実際自分が「メルカリ」や「Amazon」を使い始めた時のことを思い出してみてほしいです。
あなたが私生活でたどった順番は上に書いたようなものじゃなくて、むしろ逆だったんじゃないですか?
「メルカリ」や「Amazon」のようなデジタルツールやデジタルサービスをまず利用してみたら、思いのほか便利だった。
どんどんツールを使っていくうちに、結果的に自分の生活や行動が徐々にTransformされた
(いきなりではなく、徐々にヤフ〇クを使わなくなったり、実地の本屋に行かなくなったりした)
こうじゃないでしょうか?
言い換えると、先行したのは「D」で、後から意図せずついてきたのが「X」の方なのではなかったでしょうか?
もちろん最初はうまく「D」を使えなかった部分もあるかもしれません。
検索の仕方を間違ったので、最安値で買えなかったり、マナーを守らなかったので悪い評価がついたり・・・そういうことはあったと思います。
しかし結果的に多くの方が、それに慣れて、効果的なツールの使い方ができるようになり、そして「D」に合わせて、「X」を成し遂げた。
こういうヒストリーだったと思うのです。違いますか?
3. ビジネスの「DX」
にも拘らず、なぜビジネスの文脈になったとたんに、180度違うことを主張する人がいるのでしょうか?
リモートワーク必須になったから、ツールを導入してみたら、便利なところもあったけど、ちょっと不便なところもあるよね。
まぁ不便なところはルールを作って直していけば、よりよい業務になりそうだよね。
・・・多くの企業が現時点でたどっている道はこれです。
それを「名ばかり」だの「逆効果」だの言ってコテンパンにする意味が、どこまであるのかは私にはよくわかりませんでした。
「警鐘」・・・にしては、タイトルにパンチが利きすぎていると思います。
タイトルだけ見て下記のように短絡的に考える人がいたらどうなるでしょうか?
「それ見たことか、君ねぇ、安易にDigital Digitalっていうけど、そんなの逆効果なんだよ!」
・・・Digital導入が萎縮するだけです。
問題点を指摘するのは構いませんが、もう少し前向きな言い方で応援するとか、生暖かく見守るとかそういうことはできないのでしょうか?と今日は思ってしまいました。
世の中そんな「超人」だらけではないのですから。
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