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向日葵さん 1

 入院は脊髄腫瘍疑いのため、脳外科病棟で最上階のフロアだった。
 母に付き添われ、エレベーターを降りた私の目に飛び込んできたのは、想像絶する光景だった。この病棟に入る自分の未来を、前向きに捉える事ができず、不安と悲しみが一気に込み上げ、目に涙をいっぱいにして入院手続きをしたのを思い出す。付き添ってくれた母も帰り日が落ち、大阪のきれいな夜景を眺めながら1人で過ごす時間は、なかなか進まず朝を迎えた。
 翌早朝から、採血・MRI・レントゲン・CT・スパイロと、検査の連続だ。続いて神経内科の受診が入った。初めての受診で話していた、脳外科と神経内科と連携で病名を探してくれるための受診だ。私にはたくさんの先生がついてくれる事になった。
 神経内科の診察は30分程かけ、歩行や反射検査、病院や検査についての説明を丁寧にしてくれた。私は数年間にわたる体の不調を全て書いたメモを医師に手渡した。この時点で、特定疾患で疑わしい病名が5つ程聞かされたが、どれも聞いたことのない病名ばかりだった。今後、脳外科と別で神経内科の検査も加わるとの説明があり、この時、髄液検査が項目に含まれている事を知った。過去に1度、高熱が下がらず福岡の病院でストレッチャーの上で検査し、嘔吐と頭痛で7日間入院することになり、怖さばかりが残る記憶の検査だ。こんな検査で怖がっていては手術なんてできるはずもないと思いながらも、いざ始まると痛さより恐怖で自然に涙がこぼれる私に、医師や看護師も困ったことだろう。自分の器の小ささにも驚きだった。
 怯える私を気遣い、足をゆっくりさすってくれた優しい看護師さんは、とても印象に残っている。静かな病室には、髄液が落ちる音だけがポトポトと響いていた。
「大丈夫?痛くなかったですか?」
と聞いてくれる医師と優しい看護師さんのおかげで、恐怖の検査は無事に終了した。
 そんな頃だった・・・、彼女と出会ったのは。

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