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法務省、「親権」を"Parental responsibilities"(親責任)と翻訳 ―単独親権と定めなければならない場合についても限定的な説明に

法務省が作成した民法改正の「概要」説明資料について、英語版・フランス語版が公開されました。
親権を"Parental responsibilities"(親責任)と翻訳しており、単独親権と定めなければならない場合の説明も不適切な内容です。


法務省:民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について (moj.go.jp)



法務省、「親権」を"Parental responsibilities"(親責任)と翻訳

法務省は、法制審議会の議事速報で、「親権」を「Parental Authority」と訳していました。
今回の概要版では、法務省は「親権」の訳語として、"Parental responsibilities"(親責任)を採用しました。

法制審議会では、親権概念について「親責任」とすることは見送り、「親権」が維持された経過があります。
国会審議でも、争点は重要事項決定などの親権行使であり、「親権」概念の見直しに踏み込まないまま、採決が強行されています。

英語版では、単独親権と定めなければならない場合について、限定的に読める記述に

また、親権者の決定についても、日本語版と英語版での差異が見られます。

①英語版では、裁判所の親権者指定について、「子の利益の観点から」の文言が削除されています。

②単独親権としなければならない場合が例外のように読める文章になっており、「協議が調わない理由その他の事情を考慮し」も削除されています。

③また、虐待・DVについて、日本語版では「身体的なものに限らない」としていますが、英語版では「身体的・心理的に」とより狭めて記述しています。

日本語版

日本語版

英語版(仮訳)

A. 離婚後、誰が親責任を行使すべきか?

  1. 両親が離婚に同意した場合、親責任を共同で行使するか、一方の親に割り当てるかについても合意することができる。

  2. 親責任について合意できない場合、裁判所は共同親責任または単独親責任を認めることができる。

  3. 両方の親に親責任を認めると子の利益が損なわれる場合、裁判所は一方の親に親責任を認めなければならない。これには以下のような場合が含まれる。

  • 父母双方に親責任を認めることが、子どもへの虐待やDVを身体的・心理的に引き起こす可能性がある。

  • 共同親権が、その状況で現実的ではない。

英語版

A. Who should exercise parental responsibility after divorce?

  1. When the parents agree to divorce, they may also agree on whether parental responsibility should be
    exercised jointly or assigned to one parent.

  2. If they cannot agree on parental responsibility, courts may grant joint or sole parental responsibility.

  3. The court must grant parental responsibility to one parent if the child’s interests would be harmed by
    granting both parents parental responsibility. This includes cases where:

  • granting both parents parental responsibility could possibly lead to abuse of the child or domestic
    violence physically or psychologically.

  • joint parental responsibility is impractical under the circumstances.


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