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【検証】嘉田由紀子議員の国会質疑 ―デタラメと印象操作で「論理展開」

3月3日、参議院予算委員会で、嘉田由紀子議員が離婚後共同親権への法改正を岸田総理と法務大臣に求めました。今回の記事では、嘉田議員の質疑を批判的に読み解いてみます。
【全文・資料】嘉田由紀子議員(3月3日 予算委員会)|ありしん@共同親権反対です|note


嘉田議員の「論理構成」

プレゼンテーションの有名な手法として、PREP法(プレップ法)というものがあります。長々とした質疑をシンプルに理解するために、嘉田議員の「論理構成」をPREP法に当てはめてみましょう。

結論(Point)
特別の財政措置なしに、法律改正で子育ての価値観を変える政策として、離婚後共同親権への民法改正を提案する。

理由(Reason)
男女がともに前向きに協力して子育てに関われるないのは、現行民法が離婚後単独親権だからだ。

具体例(Exsample)
(1)ひとり親世帯は貧困率が高い。
(2)児童虐待による死亡事例もひとり親が高い。

結論(Point)
貧困と虐待の阻止のためには、共同親権が必要である。

嘉田議員の質疑を検証してみた

では、一つずつ見ていきましょう。

結論(Point)
特別の財政措置なしに、法律改正で子育ての価値観を変える政策として、離婚後共同親権への民法改正を提案する。

まず、冒頭からびっくりです。嘉田由紀子議員は、離婚後共同親権に法改正するにあたり、財政措置は不要と考えているようです!

理由(Reason)
共同親権になれば、男女がともに前向きに協力して子育てに関われるようになる。

離婚後共同親権は「子育ての価値観を変える政策」であり、「男女がともに前向きに協力して子育てに関われるように」するものだと述べていますが、その根拠は何ら語られません。

具体例(Exsample)
(1)ひとり親世帯は貧困率が高い

資料2 離婚数の増大と片親ロスに直面する子ども数の増大

ひとり親世帯の貧困率が高いことは事実ですが、その背景は、子育てしながら働く女性の賃金水準が低いこと、養育費の支払い率が低いことのほか、複合的な要因があります。だからこそ、厚労省や文科省は総合的な対策を推進しようとしています。
ひとり親世帯の貧困を安易に共同親権に結び付ける姿勢は、嘉田議員が子どもの貧困と真摯に向き合わず、自らの政治的主張に利用していることの表れです。

具体例(Exsample)
(2)児童虐待による死亡事例もひとり親が高い

資料4 家族形態別の親による子ども虐待(子ども殺人)

資料4は、「子ども殺人」という煽情的な見出しをつけている、極めて恣意的なスライドです。虐待死で最も割合の高い「実父母」47.5%は無視する一方、なぜか「ひとり親」と「内縁」を合算して35%と強調しています。
しかも、「ひとり親」27%の内訳は、「離婚」「未婚」「死別」「別居」であり、「離婚」は9.2%に過ぎません。
元大学教授が国会で提示する資料として、あまりに粗雑すぎないでしょうか? なお、厚生労働省は「この中には未婚のものが128件含まれおります」と正しく答弁しています。

結論(Point)
貧困と虐待の阻止のためには、共同親権が必要である。

以上より共同親権を!という主張が展開されますが、共同親権が貧困と虐待の防止につながるという論証は何一つありません。
予算措置もなしに共同親権を導入しただけで貧困・虐待が防止できるかのような言説を振りまくこと自体、元知事としての見識を疑います。
(福祉・医療・教育の現場を知らないのでしょうか)

他にもデタラメと印象操作が…

嘉田議員の発言の中には、他にもデタラメと印象操作が散りばめられています。

「いま日本では婚姻家族の3組に一組が離婚をしています」??
 よく「3組に1組が離婚」と言われますが、国会の論議としては正確な表現ではありません。3分の1というのは、単純に同じ年の婚姻件数と離婚件数を比較したもので、実際に離婚した割合ではありません。
また、当然ながら離婚家庭の全てに子どもがいるわけではなく、「未成年の子どもあり」は、離婚総数のうち6割程度です。

「1年間で約80万人の子どもしか生まれない中で約20万人の子どもが片親に!」??
資料では昭和20年代初頭は270万人出生(かつては8/270が 今は20/80)の割合」との記述もあります。
算数の基本ですが、異なる性格の数字を分数にしてはいけません! 80万人は生まれた子どもの数(0歳)、20万人は親が離婚した子どもの数(未成年)です。
また、「片親」という表現も嘉田議員の印象操作です。離婚しても円満に共同子育てしている家庭があることを捨象しています。

「1年で20万人、一日で550人ものお子さんが貧困や虐待で苦しんでいるんです」??
これまで見てきたように、1年で20万人というのは、親が離婚した子どもの人数です。その全てが貧困・虐待に苦しんでいるかのように見せる嘉田議員の印象操作です。


さて、嘉田由紀子議員は、2021年5月13日の参議院法務委員会にて、池田良子著『実子誘拐ビジネスの闇』を取り上げ、「社会的事実として重く、データも信頼が置ける書籍と判断をいたしました」と述べています。
20210513参議院法務委員会【確定稿】 – 嘉田由紀子 (kadayukiko.jp)

この本は、脚注がなく出典も不明で、どこが引用なのかもわからないという酷い書籍で、率直に言えば「根拠のない陰謀論の羅列」です。こんなものを国会で取り上げてしまうこと自体、国会議員としての資質を疑います。

会派を組んでいる国民民主党、嘉田議員を支援してきた団体は、これまでの質疑を聞いて、どのように受け止めているのでしょうか?

<参考>
嘉田議員が国会で取り上げた「実子誘拐ビジネスの闇」は、foresight1974さんのnoteで詳細に検証されています。


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