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【オーストラリア家族法改正】(8)日本での議論の参考としたいポイント

11月26日、「共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会」が、改正法Billとその説明文書の一部の翻訳をnoteに掲載しました(長谷川京子弁護士提供)。

日本では、法制審議会で家族法制の見直しが論議されており、現在、「要綱案の取りまとめに向けたたたき台」が議題となっています。
この記事では「たたき台」との関係で、注目したいポイント等取り上げます。



「弁護士の会」による注目5ポイント

「弁護士の会」は、大掛かりな改正となったオーストラリア家族法改正について、注目される点として5点をあげています。
(引用にあたり見出しをつけました。また、強調箇所を太字にしました)

1.「原則共同」「DV・虐待例外」では、危害ある事案を除外できず

別居親の関わりを推進する法政策の下、「原則共同(分担)、DV虐待例外」というアプローチでは、危害ある事案をスクリーニングできず、子の福祉を害したという経験に基づいて、

2.「別居親との関係継続が子どもの利益」という推定条項を削除

「別居親との関係継続(親責任の均等分担)が子どもの利益になる」という推定条項を削除し、子どもの養育(親責任の分配・コンタクト)に関しては、子どもと子どもをケアする親の安全安心を確保することを重要な前提に据えたこと。

3.長期的重要事項は、一方の親が単独で決定することもできる

そのため、いわゆる長期的重要事項の決定について、安全であれば父母の共同を推奨するものの、一方の親が単独で決定することもできることとしたこと。

4.別居親と過ごす時間は、「個々の家庭の事情に基づき決める」

別居親と過ごす時間についても、個々の家庭の事情に基づき決めることとし、従来「均等もしくは実質的な時間」の検討を義務付けていた条項を削除したこと。

5.リーガルハラスメントを防止するための命令を規定

支配の継続を望む虐待加害者が、法的手続きを被害親子に対する危害の手段として用いるという現象が激化し、これによる被害親子の再被害や疲弊はもちろん、司法リソースも圧迫され、家庭裁判所がますます子どもと監護親を危害から守れなくなる、という悪循環を来たしたことから、濫訴防止の有害手続阻止命令と子の処遇手続き(監護の裁判手続き)を規定したこと。

日本の議論の参考にすべき点

その他、日本の議論の参考にすべき点として、改正法Billとその説明文書から3つほど抜粋します。

1.家族法制度の主な利用者は、DV・虐待含め、複雑なニーズを抱える家族

<背景:家族法の現状>
家族法制度は、しばしば危機的状況にあると指摘されている。業務量は飛躍的に増加しており、許容できないほど長い遅延が発生している。家族法裁判に関する論争や議論の多くは、家族間暴力(FV)という複雑な問題に対する裁判所の対応に集中している。様々な研究が示しているように、家族法制度の主な利用者は、暴力に関連するものも含め、複雑なニーズを抱える家族である。
このような問題をさらに深刻にしているのが、代理人を立てない当事者の数の多さである。その多くは法的代理人を立てる余裕がなく、家族間暴力や子どもへの虐待により心に傷を負い、家族法制度を利用することに困難を感じている。(原文ページp5)

2.共同決定を求める不明確な条項が、紛争を誘発する要因に

ALRC報告は、その調査に寄せられた回答には、この手順について、以下に述べたものを含め、いくつもの懸念が示されたと指摘する。
‐複雑で反復的であるため、依頼人のコストは増大し、裁判所の効率も損なわれている。
‐親責任の均等分担の推定は、一般に子どもと過ごす時間を均等に有するという推定であるという誤解を社会にもたらしている。
‐父母の共同決定を求める条項は、どのような決定なら協議を必要としないかについての明確な情報がないため、紛争を誘発する要因となっている。
‐決定において、子どもの意見が十分に重視されていない。そして、
‐子どもと子どもの監護(ケア)をする者の安全を高めることに、より大きな重点が置かれるべきである。(原文ページp10)

3.子の利益を考慮するにあたり、裁判所は「子どもの保護」を最重視すべき

<第1部:子の最善利益>
裁判所が考慮しなければならない主要な点は以下の通りである:
‐子どもの両親と有意義な関係を持つことにより子どもにもたらされる利益。
‐虐待、ネグレクト、家族間暴力にさらされたり、身体的・心理的危害を受けたりしないよう、子どもを保護する必要があること。
これらの考慮事項を適用する際、裁判所はこのうちの2つ目をより重視する必要がある。(原文ページp11)


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
オーストラリアの家族法改正については、こちらにまとめています。


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