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DVは共同親権の「例外」ってホント?―柴山発言 5つの疑問

産経新聞の記事「DV被害者ら『共同親権は慎重議論を』 小泉龍司法相に要望」について、12月22日、柴山昌彦議員が、「適正に判断し、例外事由とするので心配ありません」とコメントしました。

関連記事:柴山議員、DV被害者ら1万6千人の署名を"斬り捨て" ―怒りの声 次々と

離婚後共同親権が導入されても「DVは例外」とも言われていますが、本当でしょうか?
具体的に検証してみると、「心配しかない」実態が浮かび上がってきます。



1.いまも裁判所はDVを見抜けていない

2012年から2020年頃、裁判所は「面会交流原則実施」論のもと、DV・虐待でも面会交流を命じてきました。現在でも、DV・虐待の実態を理解してもらえなかったという被害者の声が絶えません。

参考:面会交流と共同親権――当事者の声と海外の法制度 | 熊上 崇, 岡村 晴美, 熊上 崇, 岡村 晴美, 小川 富之, 石堂 典秀, 山田 嘉則


2.協議離婚は「ノーチェック」で共同親権へ

法制審議会(家族法制部会)で審議されている要綱案(案)では、協議離婚の場合は、当事者の「合意」のみで離婚後共同親権にできるとされています。つまり、離婚の9割を占める協議離婚については「ノーチェック」という制度設計です。
DV加害者から「共同親権を認めなければ離婚しない」と迫られたら、被害者は拒否できるでしょうか? 

2 父母の離婚後等の親権者の定め
⑴ 父母が離婚をするときはその一方を親権者と定めなければならないことを定める民法第819条を見直し、次のような規律を設けるものとする。
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。

法制審議会家族法制部会(2023年12月19日)
資料35-1 家族法制の見直しに関する要綱案(案)


3.海外でも、共同親権からDVを除外できていない

「すでに海外では共同親権が導入されていて、きちんとDV・虐待を除外できている」との主張もありますが、これも、実態とは違っています。
共同親権を導入した国では、離婚後もDV・虐待が継続する被害が起こっているにもかかわらず、被害者の声が社会的に黙殺されてきただけのことです。

「離婚しても、父母と関わるのが子どもの幸せ」という思い込みを前提にして、「原則は共同、DV虐待は例外」とすると、危害のある事案を除外できず、子の福祉を害してしまう…。
このような深刻な反省にたって、イギリス、オーストラリアほか、海外では家族法制の見直しが進んでいるところです。

参考:noteマガジン オーストラリア家族法改正


4.そもそも、密室で行われるDVは立証困難

DVは、家庭内という「密室」で行われるため、「目撃証言」は期待できません。加害者は、会社や地域では「優しそうな人」に見えたりもします。

殴る蹴るなどのひどい暴力を振るう相手を前にして、録画・録音などの証拠を残すことは容易ではありません。また、とりわけ、精神的暴力は立証するのが困難です。


5.法務省もDV対策は「ノープラン」

離婚後共同親権とDVに係る懸念について、要綱案(案)を作成した法務省は、どのように対策を考えているのでしょうか?

国会議員が質問主意書で岸田内閣へ問い質したところ、法務省は、9点中8点の質問について、「お答えすることは困難」「差し控えたい」として回答を避けました。法務省は、当然、想定しておくべき事柄についても、「仮定の質問」を連発しており、いわば「ノープラン」の状態なのです。


このような懸念があるにも関わらず、法制審議会で年明け1月に「取りまとめ」、通常国会へ法案提出、という政治日程が強行されようとしています。

そして、何よりも心配なのは、共同親権を推進している人たちのDV・虐待についての認識です。

共同養育推進議員連盟の会長は、「耐えられるDV」発言の柴山昌彦会長。
DVシェルターの場所をYouTubeで晒した嘉田由紀子幹事。
「虚偽DVの温床」としてDV被害者保護の支援措置を攻撃する、梅村みずほ事務局次長…。

DV被害者らの懸念は、柴山議員の言うように、「適正に判断し、例外事由とするので心配ありません」の一言で斬り捨てられるものでしょうか??

(共同養育支援議連 関連記事)


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