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「フク」

壁に向かい、安座で座っていた僕。

(*安座とは、俗に言うお父さん座りだ)

僕は、ふとドアの方に目をやった。
目線の先は、いつのもの見慣れた風景だった。 
無機質な冷たい鉄の扉の右上には機械的に空けられた無数の穴がある。
その穴から流れるのはラジオ放送・・・ パチパチと雑音を混じらせながら流行りのJ-POPが流れている。

今日はFM放送が流れている。
(音質は、良いとは言えないが、娯楽の一つなので文句は言えない。)                  

 見つめる先のドアの内側には取手など無い鉄扉、、、その鉄扉の右上部に空いたその穴を僕はボーッと見つめていた・・・・

僕には凄く長い時間に感じられたが、時間にして数分だったはずだ。
急にFM放送が終わり就寝を知らせる官の放送に切り替わった。
もう9時かぁ・・・
まぁ、今の僕の生活には時間の重要性なんて微塵も無いし、実際に僕の今の生活空間には時間を表す「時計」なんてものはない。 
僕が生活をしているこの空間にある物は、1組の布団、剥き出しの洋式便器、壁付けの洗面台、作り付けの小さな棚、小さな液晶テレビ、木製の小机、黒色のキャリーバック。以上だ。

この3畳の居住空間には、必要最低限の物は全て揃っている。
 何の不自由も無いと言えば無い。そう全く無いのだ!

 そうだ、ここは大阪刑務所の独房の1室だ。
そしてすぐに、就寝時間になった。

○僕の個人的な意見になるのだが...

この刑務所という場所は、世間一般的なみんなが思っている程、悪い場所ではないように思う。「絶対に戻りたくは無いが・・・」 

刑務所の中にいる人の中には、
『ワ・ワ・ワシは絶望真っ只中やぁ・・・』  
的な人も居るが、大概の人は中々楽しんで生活している。
TVや娯楽も最低限は有るし、3食の食事も困らないし尚且つ、カロリー計算もしてくれているし・・・etc

良い言い方をすれば、オートマチックな生活なので凄く楽なのだ。 

こんな場所で、日々暮らすと余計に社会不適合者になるのでは無いかと思うほどだ。
〜まず説明すると〜
※扉は必要な時に看守が全て開けてくれる。
※朝は看守が起こしてくれる。
※洗濯物も朝に出せば、洗濯して乾燥してその日に部屋に戻してくれる。
(洗濯物の何を洗うかも教えてくれる)
※ご飯も時間になれば、持ってきてくれる。
※用事が有れば看守が呼びに来てくれる。
※歩く時の左右の足まで教えてくれる。

まぁ、全ての行動が決まっているので、思考回路は完全に衰える。
自己管理が出来なければ、入所した日と何も変わらず、出所することになる。
そんな単調な日々を淡々と過ごし刑期を終えれば出所する。
中で生活する人々は、1年を例える時にこんな風に例えることが多い。
春〜観桜会だ ホヤキ食えるで。(場所によりカラオケ大会)(ホヤキ=お菓子)
夏〜暑い〜盆休みや〜ホヤキ食えるで。(ホヤキ=お菓子)
秋〜運動会〜ホヤキ食えるで。(ホヤキ=お菓子)
冬〜クリスマス会・正月〜ホヤキ食えるで。(ホヤキ=お菓子)おせちに銀シャリやで(銀シャリ=白米)
囚人が1年を例えるときは大抵こんな感じだ。
その他には、ソフトボール大会や場所によりサッカー大会。卓球大会・将棋大会などがある。クラブ活動もあるし、職業訓練で資格を所得することも可能だ。
盛り上がるのは、慰問行事だ。娑婆からボランティアで歌や演劇や漫才などをみせてくれる。
PEPE(ぺぺ)「女性2人組歌手?」 は、刑務所の中ではアイドル的存在だ。

何より刑務所ではお金が全く無くても生活ができる。
お金が有れば、本を買ったり日用品を買うことが出来る。
入所時にお金がなくても、作業をすれば少ないが報奨金がもらえるので、日が経てば買える。
※買い物はマークシートにチェックを入れて1ヶ月待てば届き、なぜだか、その日を待ち望んでしまう。
単純な生活だからこそ、小さな出来事を心待ちにしてしまう。
本に関しては官本というものが有りレンタルしてくれるのだ。
(中々のラインナップで街の本屋より囚人好みの本が多い。)

○僕の個人的意見をもう1つ・・・
刑務所の中での囚人が、世間の一般の人と仮定すると、刑務官とは、其の他全てのお役人となるのだ。もう、そこは立派な1つの国と同じなのだ。

刑務所の中のルール(遵守事項)も刑務所長の1言で内容を変えられるし。
所長や処遇部長が歩けば他の刑務官は直立敬礼で声が裏変える位の大声で、
「異常有りません」
と叫ぶ。正に総理大臣並みだ。そして、刑務官の中には、警備隊も居るし、教育担当も居るし、その他に色々と役職もあり各各、階級も当然有る。
警察も政治家も医者も裁判官も・・・全て揃っている。
最高の共産主義国だ。
刑務所内の大方の修繕は、営繕工場の懲役囚が、洗濯は洗濯工場の懲役囚が、食事は炊事工場の懲役囚が、掃除などは内外ソウ工場の懲役囚が、購入した本や官本の管理は図書工場の懲役囚が、上記の懲役囚は一括で経理工場と呼ばれ懲役エリートと呼ばれる。そして893さんは居ない設定となっている。
ごく稀に名乗る方も居ます。www
その他の工場は一般工場と呼ばれ、物を作って社会に売ったり工芸品を作っている。無期懲役の方々が作る工芸品は職人そのものです。
余談だが、一般工場の中にはサムライ工場と呼ばれる工場が存在する。
サムライ工場の多くは、金属工場に多い、次に木工工場・・・
解罰者(懲罰明けの受刑者)が配役される事が多く、又現役者(G)も多い、その為喧嘩も多いし派閥も存在する、新たに工場での出会いで子や兄弟になることも多い。同じサムライでもプラチナの親分などが居る工場は纏まりが凄いのだ、担当刑務官も気を使い気味なのだ。工場での足洗い時は子分が、石鹸・タオルを横で持ち待っている。しかし工場の外で親分は、担当の顔を立てて皆と同調するのだ。そうしてバランスが取れてお互いの立場が暗黙で成り立っているのだ。

このように高い塀の中では1つの国のような感じになっている。

そして、罪を犯し、刑務所で刑事罰を受けてるにも関わらず、受刑中に規則を守らない人もいる。そんな人は懲役中に更に罰を受ける。書いて字の如く「懲罰」だ。
(その行為が酷ければ事件送致となり再度裁判を受けて、増刑となる。)

 まぁ・・懲罰と言っても朝から夕方まで座っているだけだが、一切の娯楽はない。お風呂の回数、運動の回数も制限される。それが懲罰と言うものだ。実際、中々嫌になるものだ。

当然、真面目に務めていれば、教育も受けられるし、資格取得も出来る。
仮釈放が貰えて少し早く釈放されることもある。

…と刑務所の事はこのくらいで・・・

兎も角、今僕は刑務所の独房の中で生活している。

この物語を書き出したきっかけは、
「時間潰しになる、読んでて疲れない、何処を開いても読めるもの。」
そんな物語を書いてみよう。と思って書いている。 

僕は元々読書なんてしなかった。なので当然、小説を書くなんて事は思うこともなかった。

でも服役を重なる内に読書をする様になった。そして書きたくなった。

僕の読んだ本の中で、一番印象的な小説は村上春樹さんのデビュー作
「風の歌を聴け」
その小説の中の、この部分が何よりも好きなんだ。

「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が 存在しないようにね。」

この文章での作者の本当の真意は僕には分からないけれど、僕個人の勝手な解釈で感じた事は、

「そうや、その通りや。良いことにも悪いことにも完璧(100%)がないって事は今が一番最悪なんじゃない。まだまだやり直せるぞ。」

この様に感じて、この小説の文章を読んで凄く感銘を受けたのだ。

何はともあれ、僕はこの本を読んだその日から村上春樹さんが好きになり村上春樹さんの小説を読み漁った。今となっては、大好きな作家さんだ。

と、ここからは本題に入ろうと思う。何を書けば良いのかよく分からないが・・・思いつくまま僕の実体験に多少の着色を交えて書いていこう。


1章             じゃあね。  

僕の目の前には、「フク」が居た。
フクは、真っ白でシワ1つ見当たらないワンピースを着て、裸足で立っていた。 
フクは、いつもと、なにひとつ変わらない姿だった。

フクは何も喋らず...上を向き遠くの空を、ジーっと見つめていた。

僕たちが 立っているのは、、、いったい何処なんだろう?
僕はこの場所に全く見覚えが無い。ここは辺り一面何にも無い。
見ていて気が遠くなるくらいに何処を見ても同じ景色だし、前も後ろも右も左も分からない。風も無い、石ころ1つ草木の1本も見当たらない。 
僕は、何処か見当もつかない謎の場所でいつもと変わらない姿のフクといる。

「フクと居る」

その1つの事実だけが理解出来ることだった。 僕はこの場所で何をすれば良いのか全く分からず、僕は、フクの横でフクと同じように、空を見上げることにした・・・
その空には雲一つもない灰色一色の空だった。
余計なものは、何も無い。何もかもが排除された空だった。

一体、どれ程の時間二人で空を見上げていたのか分からないがフクが急に口を開いた。

「もう、あなたには私は必要ないわ。私にはそういう事は直ぐに分かるの。」

「何が分かるん?どーゆー事?」

空を見上げたままのフクが、凄く良く通る声で、

「そのままの意味よ。じゃあね。」

と、フクが呟くと突然、どれだけの絵具を使っても一切の着色を許さない程の灰色一色だった空が突然消え、僕の目の前に、酷く霞んだ白色の天井と一切の温もりも感じられない明かりを灯す事だけを目的に量産された極々普通の蛍光灯があった。

僕はそこでやっと自分が今、刑務所の中で生活し尚且つ、寝ていた事に気付いた。僕の胸のあたりには、凄い喪失感だけが残っていた。 
その喪失感とは、まるで、胸元に穴が空き、風が吹いている様な感じだった。

僕は頭の中でフクの事を考えてみた、かれこれ長い間、フクが僕の前に姿を見せていない事に気がついたと同時にフクが言った言葉が頭の中でリフレインされていた・・・

「もう、あなたには私は必要ないわ。私にはそういう事は直ぐに分かるの。」

「そのままの意味よ。じゃあね。」

「もう、あなたには私は必要ないわ。私にはそういう事は直ぐに分かるの。」

「そのままの意味よ。じゃあね。」

「もう、あなたには私は必要ないわ。私には・・・・・・・・・・」

「じゃあね。」・・・・・・・・

フク・・・・僕はフクについてフクという名前以外何も知らない事に、その時気付いた。 すごく長い間、一緒に居たのに…。

フクは実に様々な事を僕に教えてくれた。

2章            フク姉ちゃん

僕が初めてフクと出会ったのは僕が5歳の時だったと思う。

詳しくは覚えていないが保育園児の時だった。その時のフクと、今のフクは、服装も顔も髪型も何一つ変わらない。
(ちなみにフクの髪型は真っ黒のオカッパ頭だ。長さは肩の少し上だ)

ある日、僕が自分の部屋で、ブロックで遊んでいる時にフクは突然現れた。
そして開口一番こう言った。

「いい?あなたには選ぶ事ができるの。どんな時も選ぶ事ができるの。」

僕は目の前の女の人が誰なのか・・・一体何を言っているのか・・・
全くわからなかったし理解ができなかった。しかし恐怖は全く感じなかった。
取り敢えず僕は目の前の女の人に質問してみた。
○「お姉ちゃんは誰なん?ママの友達なん?」
「私はフクよ。あなたのお母さんの友達ではないの。」
○「じゃあ、なんで僕の部屋におるん?」
「詳しくは私もわからないの。でも泥棒じゃないわ。安心して」
○「うん。わかった。」
僕は子供ながらに幾分かの不安は感じたが不思議と安心感があり大騒ぎする事もなくフクが目の前に現れたことを納得したのだ。
「あなたは、さっきから一体何をしているの?」
「作っては壊し作っては壊して・・」
○「ブロックが想い通りに作られへんねん。」
「それは、あなたの作りたい形への想いが足りないのよ。」
「もっともっと作りたい物の形をいっぱい考えてみて。」
「何事も思う事が大切なの。そのことを忘れないで。」
○「うん。でも何も考えてないねん・・・」
「そうね。それは見ていてわかるわ。」
その時急に、部屋に母が入ってきた。
「なにを一人で喋ってんのや?」
○「えっ?フク姉ちゃん。」
とフクの方を指差した。フクは無表情のまま僕を見つめていた。
母は、笑いながら
「なんの遊び?保育園で流行ってんのか?」
と言いながらリビングへ戻って行ったのだ。
そしてフクが、僕の方を見ながら
「私は、あなたにしか見えていないの。声もあなたにしか聞こえていないの。」
「それともう一つ、私とあなたとは声を出さなくても会話ができるの。」
○「えっ??どういう意味なん」
「そのままの意味よ。」
僕は、あまり意味が分からず頷いたのだった。
その日からフクは頻繁に僕の目の前に現れる様になったのだ。

ある日僕は、保育園で友達たちに意地悪をしてしまい、その為に、何日間かその友達たちと喋る事も一緒に遊ぶ事なく少し寂しかった、でも僕は友達たちに謝る事も出来ずに一人で砂場で遊んでいた。
気づけば目の前にフクが立っていた。
「あなたに、お話をしてあげるわ。遠い遠い所のカラーズ星のお話なの。」
○「カラーズ星?・・・どこにあるん?」
「言っても、あなたには分からない場所よ。」
○「ふーん。」
「この話を聞いて、あなたがどう感じたのか後で聞かせてもらうわ。」
○「うん。わかった。」

カラーズ星に来たルトン


カラーズ星には、色々な種類の動物が住んでいます。
動物たちは他の動物たちとお互いに喋る事も出来ますが、生活は同じ種類の動物同士で暮らしています。
ある日カラーズ星に宇宙船が落ちてきました。その宇宙船に一人の宇宙人が乗っていました。
「痛い・・」
宇宙船から出てきたのは体が透明なルトンという名前のクリアン星人でした。
「ここが、レイン坊が言っていたカラーズ星か凄く遠かったなぁ・・・」
「レイン坊が言っていた“色付き”を探してみるか」
そう呟くとルトンは宇宙船の中から小さな車の様な乗り物を取り出し、それに乗ってまずは遠くに見えている海に向かってみた。
少し走ると牛の様な見た目の動物の集団に出会った。
「やあ、君たちはこの星に住む動物かい?」
と、ルトンは、その動物に話しかけてみた
「こんにちは。そう我々は、ブルズという名の動物なのです。そして私はブルーシーと申します。」
「こんにちは。ブルーシー君。僕はルトン。ブルーシー君は“色付き”って聞いた事あるかな?」
ルトンはブルーシーに“色付き”について尋ねてみた。
「“色付き”とはなんですか?聞いた事もないですね。」
「そっかぁ。知らないか・・・じゃあ“色付き”とはなんなのか、説明しようか。」
「是非是非、教えてください。」
そういうと、その辺りにバラバラに居たブルズ達がきちんと2列に整列し座って、ルトンの方を見つめた。そしてルトンは咳払いを1つし

「オッホン、“色付き”とは・・・本来、者の心は何色にも染まってはならない。その染まってはいけない心が何色かに染まってしまう時がある。その現象が“色付き”なんだ。色付きになると自分では直せないし、見た目じゃ色付きなのか分からないんだ。何より怖いのは、色付きになって時間が経ちすぎると心が完全に染まってしまう。そうなると、もう元に戻れないんだ。それは凄く大変な事なんだ。」
ブルーノがびっくりした顔で
「元には戻れない?見た目じゃ分からないのに・・それは難題だな・・」
ルトンは口の前に人差し指を立てながら
「シー・・・話は最後まで聞こうじゃないか、ブルーシー君。
その問題は心配ないよ。僕はクリアン星人で、クリアン星人は、“色付き”になった者がハッキリと区別出来ちゃう能力があるんだよ。
僕の友達のレイン坊が言うには、このカラーズ星には数多くの“色付き”になっている者が居るみたいなんだよ。それで僕がこの星に来たんだよ。
なんか海の方に引き寄せられる感じがあってさ、僕は海へ向かっていたんだよ。そしたら君たちがいたんだ。」
「なるほど。そうだったんですね。 私たちブルズは常に集団行動をします。そういう性質なのです。そう言えば、最近一人だけ集団から離れているブルーノという者がいます。彼は、イタズラ好きで度が過ぎる事が屡々有ります。実際に我々の中にも彼を嫌がる者も出てきています。」
「ブルーシー君、そのブルーノ君の居場所は分かるかい?・・・いや、いいや。ブルーノ君の居場所は僕には分かるよ。きっとすぐに見つかるよ。じゃあ行くね。」
と言うと、ルトンは小さな車に乗ってブルズ達の群れから離れ海へと向かいました。
車をしばらく走らせると砂浜に辿り着きました。ルトンは砂浜にたち両手を広げて大きく深呼吸をしました。そして大きく息を吸い込み
「ブルーノ〜」と叫び、海を正面に見て、右手の方に走り出しヤシの木の下に座るブルズを見つけ声を掛けました。
「やぁ、キミ、ブルーノ君だよね? うん。間違いなくブルーノ君だね。君、身も心も真っ青だね。僕はルトン。さっき君の友達のブルーシー達に会ったよ。
ブルーノ君、キミは“色付き”になっているよ。」
「い、い、い、色付き・・・な、な、な、なんなんだキミは・・・ぼ、ぼ、ぼ、僕は、誰とも話したくないんだ。」
「まぁそう言うなよ。僕は“色付き”を直せるんだ。少しお話をしようよ。」
そう言うとルトンは、ブルーノの前に腰を下ろしブルーノの顔の真っ直ぐ見つめた。
「まずキミは、凄くイタズラが好きなんだろ? 皆が嫌がる事をするのが好きなのかい?」
ブルーノは首を左右に大きく振りながら
「ぼ、ぼ、ぼ、僕は、皆が嫌がる事は、す、す、す、好きじゃないよ。でもいつからなのか、み、み、み、皆との接し方が分からなくなって気付いたらイタズラをしてしまっているんだ。ぼ、ぼ、僕だってイタズラなんてしたくない。み、み、皆と仲良く生活したいよ。」
ルトンは何度も頷きながら、
「そうだよな。一人は寂しいだろ。会話って凄く大切なんだ。声に出さなくても心が通じ合ってれば、心が安心して落ち着くしね。でも、キミは少し間違っているんだよ。キミが、どこでどう間違ったのかは分からないけど、キミは間違っている。その間違いを僕と一緒に考えようよ。」
「ぼ、ぼ、僕は、な、な、何が間違っているんだろう?」
「僕が思うには、キミは素直な気持ちを皆に伝えれないんじゃないかい?何かしてもらったら『有難う』相手を困らせたり、嫌な気持ちにさせたら『ごめんなさい』もっと簡単な事は、朝、起きたら『おはよう』寝る時は『おやすみ』この4つの言葉は、最低限の礼儀だよね。でもこの言葉は伝えなくても生きていけるんだ。しかし、言われて嫌な気を起こす人も、まず居ない。全てを引っ括めて簡単にまとめるとね、相手の気持ちを考えて生きていこう。って事なんだ。
余り深くは考えないでよ。まず、自分が言われたり、されたら嫌な事はしない事だ。してしまった時は『ごめんなさい』だね。そして、『有難う』この言葉は凄く大切な言葉なんだよ。感謝の気持ちを伝える事は凄く大切。
でも、時たま、『少しくらい、いいか・・・』って思っちゃうよね?
その時に意識して気持ちを伝えるんだよ。繰り返せば自然に言える様になるよ。
キミの場合は、今、“色付き”になっているから少し時間は掛かるだろうけど、必ず皆と仲良く出来るよ。僕が保証する。」
言い終わると、ルトンがブルーノの肩に手を置いた。
「あ、あ、有難う。ルトン君、ぼ、僕変わりたいよ。」
「ああ、キミは気づいているかい?もう既にキミは変わって来ているよ。キミの言葉の出しにくさは“色付き”のせいなんだよ。恐らく長い間“色付き”の症状はあったんだろうね。でも今は、かなりマシになって来ているだろう。もう少し僕とお話をしよう。」
「う、うん。僕嬉しいよ。ルトン君。有難う。」
ルトンとブルーノは、夜遅くまで色々なお話をしました。
「ブルーノ君、もう遅いし今日は寝ようか。おやすみ。」
「ルトン君、おやすみ」
次の朝ルトンが目を覚ますと既に、ブルーノは起きていた。
「おはよう。ルトン君。起きたかい?」
ルトンがブルーノの方を見ると昨日までのブルーノとは違い、青かった体も通常のブルズの白と黒の斑ら模様に戻っていた。心だけが少し青色が残っていた。


  


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