「ボローニャ国際絵本原画展」in 西宮大谷美術館
七十二候の玄鳥去(つばめさる)をすっかり言及しそびれていた私ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
ついでに、9月20日は空の日だそうです。
ツバメが南の国へと去っていく空を見上げる・・・
さて、遠くに想いを馳せたところで、自分の遠い記憶にも気持ちを馳せてみようではありませんか。
そう、子供心を思い出させてくれる、素敵な展覧会に行ってきたのです。尤も、思い出すも何も、私の場合は子供心を忘れていなさすぎるかもしれませんが。
「ボローニャ国際絵本原画展」
“Bologna children’s book fair” という、イタリアのボローニャで1964年から毎年開催される絵本展。
5点1組のイラストを用意すれば誰でも応募できる公募展。絵本の専門家5人によって審査され、29カ国78人が入選。内日本人は4人。その入選作全てが展示されている。
コロナ禍の2年間はオンラインでの開催。今年は3年ぶりにボローニャで開催されたそう。応募自体は今年もオンラインだったらしく、そのおかげで過去最多の92カ国3,873組の応募があったそう。というのも、郵便事情がよくない国からも応募できるから。
先に断っておくと、鑑賞しながらのメモ書きなので、字が汚いのです。従って、作者の名前の表記が間違っているかもしれない。予めご了承ください。
展示を見ていて、中国・韓国・スペインの方の作品が多い印象を受けた。
環境問題を示唆する作品もいくつかあった。
虫が押し寄せて森が枯れるという作品。虫を人間に置き換えてみろ、ということかな。
黒いうさぎが破裂して、中からゴミが溢れてくる作品。
プラスチックの破片が海を漂い、それを魚が食べ、その魚を人間が食べる、という流れの作品。
全体の5枚だけしか展示されないので、ストーリーの全貌は断言できないけれど、これらは割と明らかなメッセージを読み取ることができると思う。
でも、シリアスな作品ばかりではない。というか、少数派かも。
好きだな、と思ったのは、韓国のチェ・ダニさん作「真夜中の美術館」
キース・へリングさんの人のシルエットや、ムンクの叫び、デュシャンのトイレ、じゃなくて泉、草間彌生さんのカボチャが一堂に会していて、面白い。他にも描かれていたから、あの絵を読み解くことで、モダンアートの教養を得られるかもしれない。
興味深いことに、他の作品でも草間さんのカボチャを彷彿させる絵があり。
イランのMohammed Babakoohさん「わたしはただの水玉」タイトルに水玉とあるけれど、その水玉のデザインがカボチャを思わせた。オマージュなのか、偶然なのか。
同じイランの方、Mona Amoliさん作「皇帝と衣装」は、パレードを真上から描いているのが面白い。上空を飛ぶ白い鳥の翼が覆いかぶさるようで、「鳥瞰」を絵にしているかのようだった。
一方で、スペインのRaquel Catalina Ledesmaさんの作品は、窓の外を飛ぶ鳥、サイズはとても小さいのだけれど繊細に描かれていたのが印象的だった。
構図の話で言うと、遠近感の出し方を学んだ。
というのも、色のブロックをポン、ポン、ポンと重ねて、その境に大小の人なり動物なりを描けば、起伏を表せることができ、結果的に遠近感が出ている、と思ったから。真似しよう。
そんな遠近感、面白いのもあった。
ウクライナのHanna Ivanenkoさんの作品。タイトルはメモしていなかったけど、コラージュのようでいて、そうではない、遊びのきいた作品だなと感じた。
それから、クロアチアのKlara Rusanさん「恐怖のリズム」
カルメン・ラヘラ・ビリディアナ、と表記があったので、スペイン映画?と思ったら、その横にはスペイン人が描いたネルソンマンデラさんの作品。
そして、スペインとなっているけれど、タイトルが"Viaggi in treni di prima classe"。イタリアルーツなのか、あるいは自身のイタリア旅行の記憶なのか。
スウェーデンの人の作品を見て、マリメッコのデザインを思い出したのだけど、やはりあのようなデザインを生む空気が、スウェーデンにはあるのだろうか。
その方がインタビューで語っていて知ったのだけど、絵とストーリーは必ずしも同じ作者ではないそう。
スウェーデン人の彼女は、あるストーリーを読んで、それに絵を付けたいと思ったそうで。
もちろん、全部をオリジナルのバージョンもある。
また、2作品だけ絵本全部が展示されていて。
2つとも最後が植物になって終わっていたのが面白い。絵本という子供向けの作品のため、最後をうやむやにして終わるのが最適なのだと思う。想像力を育むためにも。そして、うやむやにするには植物というフィニッシュがベストなのかも。
普段は出会えない色々な国の絵本、それもほとんどがデビュー前の作品というレアさ。絵本は子供向けの商品かもしれないけど、この展覧会はむしろ大人向けだと思うので、みなさま是非、足を運んでみては。
と言っても、会期は9/25までなのだけど。
ではまた、ごきげんよう。
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