ノンセクだって恋がしたい！ 5.マッチングアプリの奇跡

完全に理解するのは難しいかもしれないけど、恋愛もこうじゃなきゃいけないって決まりもないし、どんな考え方でも尊重するよ

＊このシリーズは、性に関する内容が含まれますので、苦手な方はご注意ください。

ノンセクとは、ノンセクシャル(非性愛)の略で、恋愛感情はあるものの、「他者に対して性的欲求を抱かない」方々のことを指す。

前回、とある男性とお会いしてノンセクシャルはやはり理解されにくいと確信してしまった私ですが、同時進行で連絡を取り合っている方がいました。文面ややり取りの仕方から彼の誠実さが伝わってきて、前回とは違って好印象を持っていました。そして、何より印象深かったのが、お会いするまでお互い恋愛トークを一切しなかったのです。自分から話すことも無かったし、根掘り葉掘り聞かれるのも嫌なので、恋愛トークが無かったのは嬉しかったですね。
そしてお会いした当日、前話の方のように下心が見えるようなことは一切なく、アプリで会った人はいるか等、ほんの少し質問された程度で、過去の恋愛などを掘り下げて聞かれることも無く、とても和やかに終わりました。その後も連絡を続け、私が海外に戻る日も近かったため、トントン拍子で更に2回ほどお会いしました。一般的な「好意」とは少しずれているかもしれませんが、心地良さと安心感からこの方となら一緒にいられそう、この方と一緒だったらきっと何でも楽しく穏やかに過ごせそう、と自分の中で将来を考えられる程の好印象でした。彼も私に好意を抱いてくれてそうだなというのも感じていたのですが、さすがに海外に住んでいて、更にノンセクシャルという一般的に見たら変わり種の私から、何かアクションを起こすのはおこがましくて到底出来そうにありませんでした。しかし、最後にお会いした日、彼の方からお付き合いしませんかと言ってくれました。そこで、超遠距離な上に、ノンセクシャルということもきっとネックになってしまうだろうから、それでも良いのかと質問したら、予想もしていなかった答えが返ってきたのです。

プロフィールを見て、実は少し調べたんだ。正直、完全に理解することは難しいかもしれない。でも、強要するつもりもないし、恋愛もこうじゃなきゃいけないって決まりもないから、ノンセクシャルだから悪いと気にしなくて大丈夫だよ。どんな考えでも尊重されるべきだと思ってるからね。何かあったらいつでも言ってね。

ただプロフィールを見て、性欲がないことだけを知ってくれているんだろうなと私は思っていたので、色々と調べてくれたということにびっくりしました。「ノンセクシャルを100%理解してもらう」ということを私はさほど重要視していません。ノンセクの中でも、ここまでは大丈夫といった限度は人それぞれ違うので、ノンセク同士でもきっと全て理解して納得することは難しいと思います。なので、理解しようとしてくれる姿勢が私にとって1番大事なのです。彼ならきっと、例え普通ではない考え方、彼にとって初めての考え方も、理解しようと努力してくれそうだなと確信しました。

そんな彼とお付き合いしてもう1年ほど経ちます。超遠距離で会える時間も少ないですが、お互い特に不満も無く仲良く過ごしています。ちなみに、後になって分かったのですが、おそらく彼はデミロマ・デミセクに近いのだと思います。

デミロマ
デミロマンティックの略で、恋愛感情を滅多に抱かないが、「強い感情的な絆や、信頼関係が築かれている関係」の人に対して稀に恋愛感情を抱くセクシュアリティのこと。

デミセク
デミセクシュアルの略で、他者に対して基本的に性的欲求を抱くことはないが、強い愛情や深い友情を持った相手に対してなど、ごく一部の場合に性的な欲求を抱くこともあるセクシュアリティのこと。「半性愛」とも呼ばれている。

お互いなんとなく考え方が似ているから、何の問題もなく続いていけるんでしょうね。アプリでこんな方と知り合えるとは思ってもみなかったので、運が良かったなと思うばかりです。

さて、0話のプロローグからお付き合いいただきありがとうございます。このお話は一旦ここで終わりにして、次回からは番外編をいくつか書いていけたらと思っているので、今後ともご覧いただけると嬉しいです！


ありさん