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りったいぶつをへいめんにするって…

バリアフリーの本を色々調べてみよう…ということで、国立国会図書館へ。

1975年に作られた『手で見る絵本』村瀬省三 著 全5巻(カセットテープ音源付き)
をさわって、音源をきいてきました。
国立国会図書館の本は写真撮影ができないので、ビジュアルをここに載せられません。

1975年8月刊行で非売品、自費出版のよう。
黒い表紙。
5冊 ; 25×25cm箱入りでわりと重い。
『触覚と聴覚によって視覚障害者に物の形象を理解させるよう工夫された資料』『本文は墨字と立体図で作成されている』

本文は、厚手のつるつるした白い紙に凹凸がついて、形がわかるようになっていました。最近の本はインクで膨らませるものが多いですが、こちらは紙をしっかりとくぼませています。
キャプションが小さな文字で短く、ページの下に書いてある。これは、本人ではなく見える大人のためのもの。点字はいっさいないです。
点字を覚える前の全盲の子が楽しめる本というコンセプトのよう。だから音源つきなのですね。

本文のキャプションが、かなりあっさりなので、音源のなかで説明をしているのではないかなあと思い、視聴してみましたら、やはり墨字文よりも詳しい内容でした。1975年だからカセットテープなのよ。50年近く経ってしまって、大丈夫なのか。再生していただいたものを聞いたら、音全体が微妙に揺れている感じです。経年劣化なのか当時からこんな感じだったのかは、よくわかりません。記憶をたどれば、付録のソノシートみたいな音←歳がわかる。
女性のアナウンサーのはっきりした声。70年代の、諭すような話し方。
音源を聞きながら本に触ります。うーん、なるほど。
ところで、
わたし的にすごく気になったのが、ページめくりの合図の音とBGMでした。
これ、初期の電子音……! トランジスタ使用の電子オルガン。たぶん、エレクトーン。はじめはシンセかなーと思いながら聞いていたのですが、曲の構成がメロディー、和音、ベースで、特に低音の音が「足鍵盤」の音だったので、エレクトーン(ヤマハ製じゃないかもしれないが)で演奏しているのだろうと推定。
サスティーンかかっている。おおおビブラートと、なんか違うところでウケてしまいました。
当時はこういう単純な曲でも良かったんだよなあ……珍しかったんだよなあ……。当時、最新の楽器だったはずです。今聞くと、すべてがピーピーするサイン波の音なので、耳が痛いです。(電子楽器の進化とともに成長したわたし。笑)

気にしたことがなかったのですが、国会図書館には音源の資料も残されているということなのですね。決められた場所でしか聞けないけれど。時間のあるときに、昔の音をいろいろ聞いてみたいと思いました。


で、本の内容ですが。
当時は、きっと先進的な試みだったのだと思います。
50年後の人間が触ってみると、いろいろな面でかなり難しい。
たとえば、亀と瓶、蚤と鑿、釜と鎌の形が出てくるのですが、令和の日本では実物を見ても道具のノミという名前がわからない人のほうが多いだろうな……とかの難しさです。

それ以上に、目の見えない人にとって、手で触った立体物と手で触った平面図って、まるで別の形の物です。
本物のリンゴの立体的な形。絵に描いた平面のリンゴの形。これを目で見えない人は同じものとして、記号として覚えていくんだなあ……。と本に触りながら気がついた。目で見るひとは平面のリンゴの形を触ってもリンゴとわかるけど、目で見ない人はリンゴと言えば立体のものだから、平面のリンゴは生活の中の実体験としてはない。
立体の実物はこれだけど、平面にしたらこの形、というのを学習しなくてはわからない。
それを踏まえると、一般向けに売られている絵本に、絵の形がわかるように凹凸インクで形をつけても、立体と平面の形がむすびつける経験をした人でないと、でこぼこを触っても楽しめないのだろう……。とくに、小さい子であればあるほどわからない。
ですよね?

なるほど。
バリアフリー絵本って、難しい。


どうでもいい記念撮影


支えられたい……。m(_ _)m