本棚：『太陽の坐る場所』

F県立藤見高校の旧3年2組のクラス会は、卒業以来、ほぼ１年に１回、卒業から10年経った今も開催されている。しかし、女優となったキョウコはずっと参加していない。クラス会のメンバーはキョウコを参加させようと画策するものの…。なぜキョウコはクラス会に参加しないのか。

終わりに近づいたところで気づいた「ある仕掛け」にやられた！と思い、今まで読んだところをパラパラと読み返しました。あぁ、そうだったんだ！完全に勘違いしていたな、と。耳読よりも目で読む読書をお勧めします。
自分の高校時代を振り返ってみれば、この作品のような出来事はなかった、登場人物はいなかったと思うけれど、私が知らないだけで、人それぞれ物語があったんだろうなぁ、きっと。
高校卒業後10年。もう社会に出て何年か経っているし、結婚して親になっている人もいるでしょう。でも人生経験の乏しい私から見ても、まだ30代前のその時期は心が不安定かもしれないなとも思います。大人ではあるけれど、高校時代のあれこれを笑い飛ばせるほどには大人にはなってないのではないかなと。大それたことをしなくとも、生きているだけで、時間によって生み出される何かがあるように思います。日々、年をとるのは嫌だし、老けたなって思われたくないけれど、ある時期から「お互い年を取ったね」と笑い合える時が来るのではないかと。
たった数年一緒に過ごしただけで、その後は全く違う場所にいるのに、同級生ってやっぱり違って、不思議なものですね。

太陽の坐る場所 (文春文庫)