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本棚:『まぼろしを織る』

主人公の亡き祖母は有名な染織家でした。同じく染織家となった叔母さんの好意により、コロナにより仕事を失った主人公は一緒に暮らすこととなりました。叔母さんの仕事の手伝いや、塾の事務の仕事もしていますが、何のために生きているのか、ただ死ぬのが怖いから生きている、と思っています。そんな中、飛び降り事故に巻き込まれ、身体は回復したものの、ほとんど口をきかず、部屋に閉じこもってばかりとなった従弟も、しばらく一緒に暮らすこととなります。

染織のお話なので違うのですが、以前読んだ髙森美由紀さんの『藍色ちくちく 魔女の菱刺し工房』を思い出しました。既製の服が安く手軽に買える時代ですが、昔は各家庭で家族が着る服を作っていたんだよなと思うと、服に対する考え方もちょっと変わるような気がします。「流行だから」ではなく、自分にとっての愛着、ストーリーのあるものを長く大切に身に着けられたらいいなと思いました。

何のために生きているのかわからない。でも、死ぬほどの強さもない。だから惰性で生きている。こういうことをたまに考えることがあります。考えたところで、どうにもならないのですが、最近は「まぁ、それでもいいじゃない」と思うようになりました。これまで読んできた本の影響で、別に何者かにならなくたっていい、生きる目的みたいな高尚なものがなくても、ただ生きるだけでいいじゃないか、と考えるようになったからだと思います。

それから、くだらないですが、心が「どよ~ん」とした時、害虫を見つけたら、「それどころじゃないわい!」と一発で気が吹っ飛ぶんだけどなぁ~なんて、考えてしまうこともあります…。いや、出てきてほしくないんですよ、害虫は…。


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