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卒業式をオンラインで観てたらリモート飲み会をより楽しむ方法を思いついた

2020年3月25日(水)

【Day 6】

今日は、本来なら長女・ナツモの卒業式だった。

シドニー行きは以前から決まっていたが、ナツモはもちろん卒業式に参加するはずだった。それが、世界を襲うCOVID-19の波は日に日に荒くなり、あれよあれよというまにオーストラリアがロックダウンする寸前となったため、予定を早めざるを得なかったのだ。

東京は晴天、温暖化のせいで年々開花を早めている校庭の桜は今日あたりきっと見頃なのだろう。

そういった空気感や手触りは想像するしかないが、今日は我々も卒業式をオンライン配信で観覧することができた。ツールは近頃話題のZoom、これもCOVID-19の影響の一部である。

都知事が自粛要請を出したのが今日の夜だったから、卒業式の開催自体、ギリギリのところだったと言えるだろう。

そもそも、前代未聞の休校要請が出た時には卒業式ができるかどうかも危うかったのだ。そこからの二転三転ぶりは激動とも言える様相だった。

3月24日まで休校です!(卒業式やるの?やらないの?)

やります!でも教師と生徒のみで。(まあ、仕方ないよね)

親が参列できないのは可哀想だからオンライン配信を行います!(うん、オンライン配信だけでもありがたい)

どうやら都内の観戦者も少ないし、一生に一度の門出なので、子供1名につき保護者1名のみ参加可能とします!予定通りオンライン配信も行います!(ああ、よかった)

※括弧内は6年生保護者の平均的な反応

状況の変化に伴い、もっとも振り回されたのは卒業対策委員の保護者たちだ。1年かけて企画してきた卒業生を送る会、そして謝恩会は中止。卒業式本番そのものも、オンライン配信の手配や全家庭からの肖像権の承認取り付け、保護者が参列できない前提で準備を進めていたものがギリギリになって急遽1名だけ参列可能に変更と、極めて高度なプロジェクトマネジメントスキルを求められる状態だった。

それらの困難を乗り越えて本番当日を迎えられ、こうしてオンライン配信を観られることに感謝しかない(卒対委員の皆さん、本当にありがとうございました)。

卒業式が行われる体育館には在校生もおらず、保護者の数も限られているため、画面を通じてもスペースに余裕がありすぎるのがわかった。

それでも、知った顔の子供達が袴やブレザーなどでめかしこみ、急に大人びたと感じさせる表情で卒業証書を受け取るシーンはなかなか感慨深いものがある……が。

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一方で、一緒にブラウザを覗き込むナツモは、寝グセのひどい頭にTシャツ短パンという緊張感のなさである。しかも、あろうことか自分のiPadで、画面の中の校長先生を指でつまんだ写真を撮ろうと一生懸命になるという、バチ当たりなヤツだ(ちなみに長女は、日本を発つ日に即席で一人卒業式をやってもらえた幸せ者)。

もちろん卒業式自体は素晴らしかったが、ここに、オンライン配信の限界も感じるのである。


そういえば、つい先日、巷で話題の「リモート飲み会」を体験した時も、同じような感想を持った。

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近所のパパ友が集まる定例飲み会に、僕はZoomを通じてこちらから参加することになったのだ。

リモートで参加する立場からすると、近況を報告してしまったあとは、マンツーマンで話でもしない限り、やはり現場の空気に完全には入り込んでいけないな、と感じた。

飲み会の良さは、会話の内容そのものにあるのではなく、人との距離感やその場に生まれる熱量、そして行間などを肌で感じることにあるのだと思う。だから、リモート飲みにそれと同じ価値を求めても、そこにはフィジカルなコミュニケーションがない故に食い足りなくなってしまう。

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ここで、ふと思う。

待てよ。卒業式のオンライン配信やリモート飲みを物足りないと感じるのは、本当にライブ感がないからだけなのか?

僕はサーフィンが大好きで、上手いサーファーの迫力は生で観るのが一番なのは知っているが、サーフィンの大会をウェブキャストで観るのも全然好きだ。「生で観ないと面白くないわ!」とは1ミリも思わない。

NBAのゲームも、格闘技の試合も、ブラウザで観ていてちゃんと面白い。決して「食い足りない」とは感じない。

この違いは何だろうと思ったのだが、それはきっと、「自分の中で前提ができている」からだ。

卒業式や飲み会は、これまでの人生でライブしか知らない。だから「ライブで体験することが前提」というマインドセットになっている。

一方、サーフィンやNBAや格闘技は、生で観る時のマインドセットと、ウェブで観るときのマインドセットは違う。それらをウェブで観る時、無意識にライブと同じ迫力は求めていない。だからウェブでも十二分に楽しめる。

そして、迫力の代わりに、インフォメーションだったり、ちょっとしたストーリー(選手とか試合のバックグラウンドとかの)だったり、リプレイだったり、いろんなアングルだったり、逆にそういったものを無意識に求めている。

だからきっとリモート飲み会も、生の飲み会とは全く別物であるというマインドセットを作りつつ、スポーツのウェブキャストのような付加価値が提供できるツールがあるといいのではないだろうか?

たとえば、メンバーの飲み物の種類と、今何杯目、みたいな基本情報は常に画面に出ている。加えて、何か失敗したり、爆笑を誘う発言が飛び出したら様々なアングルからリプレイ。飲みすぎた人の妻の怒り度合いがどう変化するかというデータ。その人の明日の予定がどうなっているか(早起きが必要なのか、昼まで寝ていられるのか)、などなど。

しかも、それらを飲んでいる本人が入力するのは興醒めするので、進化したAIが画像とデータから判別してインフォメーションを自動生成、まるでスポーツ中継のようなフォーマットで表示するツールであることが理想的だ。

フィジカルなコミュニケーションを楽しむのではなく、そういうインフォメーションを眺めつつ、それらすらも肴にして飲むのが「リモート飲み会」であるという前提が一般的になれば、ハマる人は一定数いるだろう。

……いつの間にか卒業式の話が何処かへ行ってしまったが、そんなことを延々と考え続けるぐらいには暇なのがセルフアイソレーション期間である。

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