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第2話 天空の面接会場


~面接地へ
私は新しいスーツを着て慣れないパンプスを履き地下鉄の駅を出た。
小雨が降っている。スマホで地図を確認して急ぎ足で面接会場へ。
青山墓地近くのマンション入り口に立つ。
どうみても3階建てだが、間違いなくこの場所だ。
入り口には「ドリーンカンパニー面接会場4F」と、紙が一枚貼られている。
インターホンを恐る恐る押すと「Please」と機械音が流れドアが開く。目の前のエレベーターに乗る。
1,2,3,R4(会社が屋上に?)Rを押す。
エレベーターが開くと一面、緑に囲まれたガーデンが目の前に現れた。
空には雲がポッカリと浮かび鳥が囀りながら飛び交う。
ふんわりとしたミニドレスを着た髪の長い女性が近づいてくる。
私は慌てて髪をハンカチで拭きながら挨拶する。

「あの~面接に伺った浦島と申しますが、こちらで間違いないですか?」
「はい、こちらです。どうぞ、こちらに掛けてお待ち下さい」

タレントのトリンドルさんに似ている可愛らしい方が手招きした先には
白いガーデンテーブルと椅子が置かれていた。私は緊張しながら腰掛ける。

「天井がドーム型になっていてモニターで好きな風景に変えられるんですよ。
宜しければ手元のリモコンで変えてみて下さいね」とテーブルを指し示す。

(まるで天空の面接会場。都会って色々あるのね~とキョドってしまう。)

やがて先程の女性が、ハーブティーを運んできてくれた。
「カモミールティ一緒に飲みませんか?10時のお茶タイムですし」と、勧めて下さり、ご自身も椅子にゆったりと腰掛ける。
私「いい香りですね、では、遠慮なく頂戴します。」
癖がなく美味しいお茶だ。
私「ご馳走様です。久しぶりに都会に来たので緊張しちゃって、、、お陰様で一息つけました。有難うございます。」

「改めまして。私は、ここの代表でドリーンといいます。」とニッコリ笑う。

(社長さん?もう面接は始まっていたのか!油断した~)
私は驚いて「すみません!すっかりくつろいじゃいました。」

立ち上がり、ちゃんと挨拶をしなければと焦ると
「どうぞ、そのままで」と言われて座り直す。

ドリーンさんの顔が経営者の顔になり話し始める。

「実は長引くコロナ禍でイベント中止が延々と続き、会社を解散しました。
今は一人で再スタートする為に準備中なのです。」
私「はい?」
ドリーン「いきなりこんな話で不安ですよね。なので、ネットで怪しい会社だとネガティブな書き込みをされたり、警戒して面接もほとんどキャンセルばかりです。」
私「もしかして今日の面接会は私一人って事ですか?」
ドリーン「はい、、、お帰りになりますか?せめて交通費はお支払い致しますが」
私「・・・折角なのでお話だけでも聞かせて下さい。」




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