見出し画像

ひとり旅の記録 #3|和歌山編1 列車に乗って一日を終える

ひとり旅シリーーーズ!
今回は、これから何度も書くことになるであろう和歌山編。
旅のテーマは「和歌山の日常に溶け込む」
観光地をたくさん巡るのも良いけれど、知らない土地、知らない文化の暮らしの中に入ってみたいと思い、このテーマを置いてから出発。

22/09/09-12

2月の福井が楽しかった、ひとり旅したい。この4日間なら行ける、と先に日程を決定。
観光地っぽすぎない候補地いくつか(和歌山、島根、鳥取、能登、山梨など)のうち、ゲストハウスが素敵すぎたので即決。
事前情報はほとんどなし。
海が近いので、ずっと朝の静かな海を眺めていたい、くらい。


9/9

遅めの出発。
昼過ぎまで寝てたらやる気がなくなってしまった。のそのそと起き出して旅支度を始める。(ちょっとだるかった。)

旅の準備は前日に終わらせておこう、と心に決める。(きっとできない人間なんだ、と割り切りながらもそう決めておくことが心の安定剤。)
家を出る直前にカメラを忘れていることに気づき、やっと届いた詩集と引き換えに持ってきた。写真への熱は以前ほど高くはないとはいえ、ふとした瞬間にシャッターを切りたくなるのでやはりカメラは大事。写真は撮りたくなったら撮ればいいや。
こういうことができるからひとり旅は良い。

出発は夕日に照らされながら。



新大阪から和歌山行きの特急に乗ったら蜘蛛がいた。指定された座席のひじ掛けの下にいた。
虫嫌いの私は、反射で一度は払ってしまったが、すぐに定位置に戻ってきたので、私はこの蜘蛛と特急の旅を続けてみることにした。

車窓から見える大阪の街は楽しい。細い路地なのに活気がある。さすが大阪。
都会に慣れてる風を装いつつ、内心はものすごくわくわくしていた。キラキラした街並み。ぎゅうぎゅうに詰め込まれた反対車線の電車。
いや、列車の窓にスマホカメラをぴったりくっつけていた時点で、都会人は装えていなかったかもしれない。
何度途中下車したくなったことか。

都市と都市の間のザ・住宅街、って場所の隙間にラムーとかコーナンとか、見覚えのある看板が光っていて、安心する。
と思った次の瞬間には、超高いビルがそびえ立っている。やっぱ都会ってこわい。

左後ろの席からはどこかの国の言葉で電話の声が聞こえてくる。聞き取れるかこっそりとチャレンジしてみる。舌を巻く系の言葉。マニラ、って聞こえた気がした。マニラってどこの都市だっけ。フィリピンか。

都会ではない、でも明らかに田舎でもない景色が延々と続いている。へんな感じ。わくわくするのに心が躍っているのとはちがう、心の中でくじらが静かに、でもうねりをつくりながらぐるぐるとしている感じ。

遠くに観覧車が見えた町。日根野。
観覧車の向こうには海があるらしい。車内の空気からじゃわかんなかったや。
こちらの車窓は汚れていないのに、反対方面へ向かう車窓には水滴が付いているのを見つけて、先の雨の気配を感じる。

新大阪にて。
列車に人が詰め込まれては運ばれるのを外側から見ていた。



次は和歌山、の声で一気にわくわくが上がってきた。夜に出たこと、ちょびっとだけ後悔してる。昼にはどんな景色が見えたんだろうか。

窓を雨がつたってゆく。越県した途端に降り出すなんて。
外が一瞬光ったかと思ってどきっとする。
それにしても柔らかい秋の雨。叩きつけるような季節はもう来年までお預け。それはそれで好きだったんだけどな。

本降り。ウォータースライダーのごとく、ガラスに沿って流れている。
明日の朝は晴れるといいな。雨上がりの空気をはやく吸いたい。

蜘蛛、いなくなった。バイバイ。最後にもう一度確認したが、姿は見せてもらえなかった。



夜の列車に揺られながらゆっくりとスタートする旅も良いかもな。福井旅のときは、完璧な状態で朝早く出発しようとか、出会った人とたくさん話そうとか、有名な場所はなるべく制覇しようとか。今はそれを抱えていないだけ身軽なきもち。
金曜の夜から使えばただのなんにもない週末でも旅できるな。気づいた瞬間旅が一気に身近になった。


着。知らない街の雨の夜ほど怖いものはない。雷はやっぱり鳴っている。
と思ったら看板の光のちかちかがビルに反射するだけだった。
建物が低くてのっぺりしている。
地元のまちなみをそのまま大きくして倉敷の美観地区のはずれを足して、だいぶ割って、和歌山の空気をふんわりと被せた感じ。
今までに見たことのある景色をバラバラにしてパズルにしたらきっと成り立つ、そんな感じ。

どしゃ降り、ゲストハウスを目指し一心不乱に歩く。
どうしてわたしは知らない夜の街をひとりで必死に歩いているんだろうか。

と、突如ストリートビューで見覚えのある街角の喫茶室があらわれた。あと少し。



着いた。Guesthouse RICO。空気があたたかい。
チェックインして荷物を置いて、1階のカフェでご飯を食べる。
ハンバーグ。塩をつけて食べるのが美味しい。
こころまでじゅわっとあたたかくなる。

ハンバーグとサラダとごはん。

夜ご飯を食べながら、スタッフのみんなとカウンター越しにお話しした。
大学生か社会人かとか、どんなことをしているだとか、どのくらい旅をしたことがあるかとか、そんなの関係なしに接してもらえるのがすごく幸せ。
自分のことを話さなきゃならない、身分を明かさなきゃならない、ってこれまで無意識のうちに思ってたなぁ。
岡山にいるときはきっとそんな気の張り方をしていた。小さいコミュニティの中で誰がえらいとか、誰と繋がってたらすごい、繋いでよ、とか。
それはそれで楽しいんだけど、「誰も私のことを知らない」から生まれる安心感にも気づいた。



せっかくなのでと、1階のラウンジでソファーに座り本を開いてみる。パタパタとめくる。シェアスペースで時間を使っている自分に酔っているだけの感じがする。
本の内容がまったく入ってこずに、しばらくぼーっとしていた。

ラウンジにはものがいっぱい。
弾いていいのかわからないギター。

屋上にも上がってみるけれど、大雨で濡れ過ぎていて、外に出るのは諦めた。明日晴れたらここで過ごしたいな、と思いながら部屋に戻る。
私の席は2段ベッドの上段。子どもの頃の憧れが叶うことにわくわくしつつ寝た。

この記事が参加している募集

#旅のフォトアルバム

38,890件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?