近くて遠いこたつ

住んでいる地域は今日も暑くて、家では冷房を稼働させている。それなのに気が早いと言えば早いのだがやはり10月に入ったことだし、こたつについて考えている。

我が家のこたつを人間が使用できるのは毎年設置して最初の10日間程度だ。あとは春まで猫のもの。

大人三人が入ってもまぁ楽に足を伸ばせるぐらいの、結構な広さのあるこたつだ。だけどうちの猫は絶っっっ対にそのこたつを人とシェアしない。

こたつ布団をめくり、猫が入っている位置を念入りに確認し、空いたスペースにそうっと脚を差し込んでも、「は?引くわ」と言って出て行ってしまう。残された我々人間は心象風景に汗を飛ばすぼのぼのちゃんを浮かべて、少し寂しい気持ちでこたつで過ごすことになる。

それでもそのシーズン最初にこたつを設置したばかりの時期はやはりテンションが上がっていて、我々人間のこたつ熱は高い。だから何とかして入ろうとする。しかし、人間・こたつにIN、猫・憤慨と軽蔑を顕わにしながらOUT、を繰り返すうち、人間は心が折れ、もうこたつは猫に捧げる。

そうなるとただでさえホコリの総本山になりがちなこたつは日々、猫毛にまみれていく。こたつ布団は組成表示に綿100%とあっても信じられたもんではない感じに仕上がっていく。猫毛は表面にたくさんつくとかいうレベルではなく、繊維に織り込まれていくかのように積もっていく。

なのでしょっちゅう天板を持ち上げ、テーブルを立てかけ、こたつ布団と敷布にコロコロをかけまくり、時には陽に当てる。通常の掃除にこの作業が頻繁に追加される。大変。大変以外の何物でもない。なのにその掃除をしている間中、猫は怒ってる。「ふざけるな。こたつに入れないじゃないか。早くして。そもそもそんなん何でする必要があるのか全然わかんない。のろま。ダボ」
私、こたつに入れないのにこたつのケアばっかりしてて、それを非難される。

それで家族は猫専用のこたつを買おうと画策しているのだけど、私は反対している。猫専用のこたつは買った最初の5日間ぐらいは猫に喜ばれるかもしれない。だけどそれ以降はフルシカトされ、我々人間のこたつが猫専用スペースに舞い戻るのが目に見えている。狭い我が家のスペースをただただ無駄に占領するだけの誰にも見向きもされないちっさいこたつなんて買いたくない。

そんな近くて遠いこたつを物入れからふぅふぅ言いながら引っ張り出すのには葛藤がある。
それでも猫が寒そうにしていたら、設置してしまうんだろうな。



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