【前編】湯島のブックバー「気絶」で働くメイド・休符インタビュー
湯島には「気絶」というメイドのいるブックバーがある。コンカフェオタクの間で今話題になっているこのお店で友人の休符さん(https://twitter.com/musubu333)が先日から働きはじめた。ハンドメイド作家、元保育士、ミスiDスタッフなど様々な活動経験のある彼女がなぜ気絶でメイドとして働くことを決めたのか。気絶に入るまでの経緯や今の心境を、彼女が働く「気絶」で聞いてみた。
取材・写真 アリマカナコ
協力 気絶 様
https://twitter.com/k_i_z_e_t_s_u
◎なぜ気絶でメイドとして働くことになったのか
ーやっぱりまずは気絶に入った経緯が聞きたくて。
自分が保育士しながらだったり、その時期毎に違うことやりつつコンカフェとかで細々と働きはじめてから5年目とかになってて。今年の7月に思い立って短期でクラブで働いてみたんです。それは接客楽しいし人と話すの好きだから。実際働いてみるとなんか割り切りすぎる関係が苦手過ぎて。あまりにも「金」「客」「シャンパン」みたいな感じだから。私はもっとコミュニティというか、もうちょっと暖かい場所がいいなあと思って。
その後何をしたらいいかわからず、8月ふらふら夢眠書店(※でんぱ組.inc元メンバー夢眠ねむさんが今年7月にオープンした書店)に行ったらすごく暖かい空間で。ねむきゅんが「お母さんと子どもたちが過ごしやすい環境を提供できる本屋さんがあればいいなと思ってこういう本屋さんを作った」ということを言っていたのが心に響きすぎちゃって、自分もなんかそういう環境だったりちゃんと今まで自分が細々とだけどやってきた集大成を何かやりたいと思った時に、客でたまたまやってきた気絶が初めて中野ブロードウェイに入った時と同じ衝撃で。「え!?これ私の地元にないんですけど!」みたいな、雷が落ちたというかショックで、ここで働かないと嘘じゃんじゃないけど、気絶で働けたらなんかこれまでの過去を伏線として回収できるのでは?とすごくわくわくした。
でもすぐに「働かせてください」と言える空気感じゃないというか、どうなんだろうと思ってたんですけど2回目ぐらいで舎長(※気絶オーナー)に熱いDMを送り。
ー私が初めて気絶に遊びに来た時に舎長からその時の話ちょっと聞きました。文章読むと大丈夫な人か大丈夫じゃない人かわかるって。「DMを見て休符ちゃんは大丈夫だと思ったから、休符ちゃんを採用することにした」みたいなことおっしゃってた。
DMの内容読むね。「メールフォームなどが分からず、先日お店に伺ったのですが会えずじまいでしたのでDMで大変失礼致します。日曜日に気絶さんに来店した際に少しだけお会いした休符というものです。
サブカルチャーと言われるものや共通の趣味を持つ人同士のコミュニケーションが好きでそういったお店で働いていたりお客として行ったりしていたのですが徐々に、コミュニティとしてではなく観光資源とガールズバー化の二極化している事にモヤモヤして手当たり次第に色んなコンカフェやトークイベントなどに足を運んでいる時に気絶さんに出会い、『ガンッ!』と鈍器で殴られるようなカルチャーショックと居場所のような温もりを感じて
是非ここで働かせて頂きたいと思いDMさせて頂きました。」
ここから先は恥ずかしすぎるのでもうやめますね。
ー概要としては?
「スタッフがたくさん入っていることも承知しており、無理な話かもしれませんがどうしても気絶さんと関わりたいと思いいてもたってもおられず連絡させていただきました。舎長さんがメイドさんに対して『萌えはいらない』とおっしゃっていたり、『うどん作るのめんどくさいです』とメニュー表に表記されているところなどが、お店とお客さん側の関係性がフラットな感じがしてとても好きです。フリーターなので時間も融通がききますので、ぜひとも雇ってください。」…やばいねー。それに対して舎長からは「いいよー」みたいな感じで。
ー軽かった。
いつも軽妙!なんか全力で悪ふざけしても怒られないでいてくれて、ほんとにありがたいですね。
ーもう一か月ぐらい経つんだっけ?
9月に入ったからもう1か月…。でもまだ10回も働いてなくって。
ーでももう馴染めてる感じしない?
本当にそこには感謝しかない..。みんな本当に優しいので馴染ませてもらってるんだと思う。ありがたいです。
ー今まだ一番新人?
いや、実は新しい人めちゃくちゃ入って来てて、リモートメイド(スカイプでオンライン出勤しているメイド)の人もいるし、働かないメイドもいるし。きっと、まだまだ色んな形で仲間が出来るんだと思う!
◎私はみんなの葬式に行きたい
ー前のお店の休符ちゃんのお客さん達は気絶に来てる?
絶対来て欲しい!とは、思ってはいないけれど、知ってて欲しいなとは思っているので言える人には少しずつ言えたらと思ってて。なんかね、前のお店は変なお店でコンカフェって感じじゃないんだよね。コミュニティスペースみたいな。例えばうつ気味の人って心療内科に行ってしまうと点数かなんかついて働きづらくなっちゃうんだって。だからそういうような事情で敢えて病院に行かずここへ話しに来てる人もいるし、気軽にリフレッシュしに来ている方もいて多様性のあるお店だった。
ーそんな場所があるんだ。
うん。だからほんとに、めっちゃ金持ちで何も働かなくていいんだって言う人もいたし、もう心身ともに疲弊してしまって働けないような人もいた。3時間お店にいて、ずっとお店のテレビを一緒に観てそれだけで過ごす日もあった。でもなんか徐々にお客さんとの関係性とか自分の在り方とか「これでいいのかな」ってすごい考えはじめてしまって。ツイッターでの交流は良いけどLINEの交換とかは一切ダメだしその人達の住所も知らないし
いやこれはただの私の願望なんだけど、この何でも話せる距離感や関係性を嘘にしないまま私はみんなの葬式に行きたいって本気で思っていて、だから気絶だったら葬式行ってもいいんじゃないかなって思って気絶を選びました。そのお店のお客さん達に対しては色んな想いがあるんだけど上手く言葉に出来なくて泣きそうになってしまうごめんなさい。
今まで働いてきたお店では笑顔の自分しかダメというか、キャラクター化をしすぎてしまって、7年間くらい自分のキャラクター消費をやってしまって、気持ち的にもたぶん疲弊していた。こっちのわがままなんですけど一回人間としてその人達に接してちゃんと仲良くなりたかったっていう思いがあって、でもそれが嫌なのであれば、全然来て欲しいとは思ってない。ただこういう所が真面目すぎると言われるので、治したい..。
ー「真面目すぎる」っていうのはどういう意味で言われてるの?
いやたぶん悪い意味だと思うんだけど。「そんな泣きながら言わなくても大丈夫だよ、考えすぎだよ」と。何がしたいんだろう。でもやっぱ一番大きいのは、そのお店の雰囲気がすごく変わってしまって、でもそこに残りたかったから。
ー自分推しのお客さんがいるからってこと?
かつ、なんか、そこの場所が好き。
ー急に雰囲気が変わってしまったのはどうして?
経営状況が悪くなってしまったっていうことと、やっぱ女の子達が「もっと稼げると思ってた」ってすぐ辞めちゃって、めっちゃ長い人とめっちゃ浅い人しかいないって状況が出来上がってしまった。しかも下の層は入れ替わりが激しいから、そういう時代にコミットしていくためなのかお給料のシステムが急に実力主義的になってしまったのが大きい気がする。だからお店って経営するの大変なんだなあって思ってる。あと店長さんが一人でお店を全て切り盛りしているからか神経質で怖かった。
でもその時のお客さんでめっちゃ気絶のことを気に入ってくれてる人がいる。すっごい切ない顔する人もいるけど。「君はこっちの道でがんばっていくんだね」みたいな寂しさが伝わってきてしまって。もっと沢山話せると思ってたのにと残念な気持ちにさせている気がして、完全に力量不足を感じてる。もっと精進して開眼するかプリキュアにでもなってニコニコハッピーな気持ちのまま現実世界に送り出したい。
ー気絶に入りたいと思った経緯にそういう事情があるって全然知らなかった…。
こないだ舎長にも言ったの。そしたら「へ~」だって。
後半はこちら
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