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ジャンプ漫画『アクタージュ act-age』打ち切り決定を聞いて

 この手の「作品に罪はないのに……」系の事件って怒りをのぶつけ先がないから本当につらい。

 一番やるせないのは当然、作画担当の宇佐崎しろ氏ですよね。物語も「大河ドラマ編」が盛り上がり、ホリプロと提携した「銀河鉄道の夜編」舞台も2022年に決まっており、そのオーディションも進んでいた。アニメ化も時間の問題だったと思う。

 まさに順風満帆だったのに……。その悔しさは想像もつかない。

 もちろん、いち読者としても悔しい。少年誌にはかなり珍しい「演劇」「役者」がテーマにも関わらず、結構少年マンガらしい熱い展開が多く、連載当初から本誌で読んでいた。絵もきれいで迫力あるし、主人公・夜凪景のちょっと危ういヤバい感じがよく絵に出てて、そこも気にいってたのだ。

 なにより、たまにめちゃくちゃ刺さることをキャラが言ったりするんですよね。なので今回は、作品を偲んで自分の中で印象的だった一コマを。

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(『アクタージュ act-age』第61話「そういう普通」より)

 「高校映像研究部編」(わたしが勝手に呼んでいる)の一コマ。

 ざっくりあらすじを書くと、夜凪は高校で普通の友達を作るために、映像研に入り、そこで3人の部員と出会う。上のコマで喋ってるヤンキー風の男がそのうちのひとり、花井。

 花井は、映像研の部室を自由に使えるという理由で入部した幽霊部員。部長である吉岡をパシリするなど、見た目どおりちゃらんぽらんで素行が良くないやつ。

 でも実は、花井は野球一筋で頑張ってきたが、故障をきっかけにその野球人生を絶たれてしまった過去をもつ。

 才覚もあった花井は、人生をかけていた野球を失い不良になってしまうが、がんばっている人間は応援してやろうと思い、映像研に入る。映像研は花井が入らないと部員が集まらず部として認めてもらえない状況で、実は吉岡を助けるために入部してたのだ。

 上記のコマも吉岡と映像研が撮影した映画が、あるトラブルで上映できなかったときに、校則をやぶってまで花井が助けてくれたシーンのあとのセリフ。

 長くなったけど、コマの説明はここまで。

 適当っぽいキャラが実は周囲のことを考え動いていたり、裏で活躍してたりする、みたいなのは大好物だったし、才能ある人間がその才能を失って堕ちるみたいなパターンは多いけど、「周囲は応援してやりたい。でも自分については諦めている」「前向きに見せかけて、やっぱり突き詰めると絶望している」そのズラされた堕ち方が哀愁漂ってて忘れられない話だった。

 ず〜っと少年ジャンプを購読してるとたくさんのマンガに出会う。正直、連載当初から読んでいたのに、完結または打ち切られあとは、記憶にほとんど残ることなく消費されるように流れていってしまう作品も多い。

 今回、全然演劇に関係ない話を取り上げてしまったけれど、どんな話にせよ記憶に残る回があるってことは、それだけの自分にとって素晴らしい作品なわけで。その作品が不本意な形で終わってしまうことは、やっぱり悲しい。

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