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我が家にも"うろんな客"がやってきた

*本noteでは、エドワード・ゴーリーの絵本『うろんな客』のネタバレを含みます

 絵本作家エドワード・ゴーリーの作品に『うろんな客』という作品がある。

 もともと中田敦彦のyoutube大学で紹介されていたのをきっかけに興味をもった。

 もっと言うと、この動画の中で紹介される『ギャシュリークラムのちびっ子たち』という作品がわたしの大好きなアニメ『人類は衰退しました』でパロディされており、「あ!これが元ネタだったんだぁ」ってなったこともあり、がぜん興味が湧いた。

 ちなみに『ギャシュリークラムのちびっ子たち』がどんな内容かというと、いわゆるアルファベットブックなのだが、アルファベットを冠した子どもがAから順に死んでいく姿を淡々と描写していく、そんな話。

 たとえば、こんな感じ。

Aはエイミー かいだんおちた
Bはベイジル くまにやられた
ーエドワード・ゴーリー『ギャシュリークラムのちびっ子たち』

 その死に原因や因果とかは一切ない。ただ不条理に子どもが死んでいくだけの絵本。

 このシュールでダークな世界観が著者エドワード・ゴーリーの魅力らしく、「大人のための絵本」ということで世界中に熱狂的なファンがいるらしい。

 じゃあ『うろんな客』はどんな話か。

 風の強い冬の日、とある屋敷の来客用のベルが鳴る。一家のものが迎えるとそこには誰もいない。振り返ると壺の上にペンギンのような奇っ怪な生き物が立っている。そこからその謎の生き物との共同生活が始まる。

 だいたいのあらすじはこんな感じ。明らかにこの世の生き物ではないお客様は見た目と同じく奇っ怪な行動ばかりして、屋敷の住人を困らせる。

 本のページをビリビリやぶったり、深夜に夢遊病のごとく歩き出したり、お風呂のバスタオルを全部どこかに持っていってしまったり、住人の持ち物で気に入ったものは、勝手に持ち出して池に放り込んで保管したり…と。

 この生き物が何者なのか?どこから来たのか?何が目的なのか?

 当然本編では明かされない。

 ただ『ギャシュリークラムのちびっ子たち』のように誰かが死んだりもしない。屋敷の住人は長い時間この奇妙な客人と生活をともにし、今も一緒に暮らしている。そんな感じで終わる。

 調べると、この本はファンの間で特に人気らしい。わたしも謎の生物のデザインがかわいいこともあり、それなりに楽しめた。だが、インパクトとしては『ギャシュリークラムのちびっ子たち』のほうに軍配が上がるのでは?と思っていた。

 しかし、末尾の訳者による解説を読んでこの本がグッと好きになった。

 本書の本編が始まる前のページに

アリソン・ビショップに

 という一文がある。この絵本は著者の友人アリソン・ビショップに捧げられた本らしい。そして解説によるとこの本は、子どもを産むアリソンに対してのメッセージとのことらしい。つまり、奇妙なお客様は生まれてきた子どもを表しているのだ。

 自分は実人生から着想など得ていないとゴーリーはつねに主張していた。が、ゴーリーの初期作品のひとつで、私に捧げられた『うろんな客』に関しては、私は時おりこう思ってきた。すなわちこの本は、私が下した、子どもを産もうという(ゴーリーにとっては)理解不能な決断へのコメントでもあるのではないか、と。
ーアリソン・ビショップによる追悼文より

 ゴーリーにとって子どもはヘンテコリンな見た目で、理解できない奇妙な生き物に見えていたんだろう。この前提をもとに本書を読み直してみると、お客様が子どもにしか見えてこないのだから不思議だ。

 さて、前段がとっても長くなってしまったし、前段が終わったからといって追加で何かを書くわけでもない。ここまで書いてしまってやっと本noteはタイトルがすべての記事になる。

 過去にはこんなふうに悩んだこともあったけれど、2021年4月4日に元気なお客様として我が家にやってきてくれた。ほんとうに、ほんとうにありがたいことである。

 まだまだ奇っ怪な挙動は少ないけれど、何をしてくれても愛しい。これから先、このお客様と歩む人生が楽しみでしょうがない。

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