見出し画像

2020.3.28Version農耕民族史B最終講義

農耕民族史B最終講義は第一稿こそあれど完成した状態を持ちません。
上演の度に改稿します。
今回名前のない演劇祭4の為に改稿した「農耕民族史B最終講義」を
演劇祭辞退に伴い公開します。会場は池袋の木星劇場を想定していました。

「農耕民族史B最終講義」
                    ありがとう高橋

B(ハル)

舞台の中心には穴の中心
ふたりは穴を掘っている
深さは不明
穴を掘る木の棒を持っていても良い
二人は基本的に目を合わせず直接触れる事は無い
交わされる話は自由に間投詞を入れても構わないが
同じ言葉を言う部分は合わせること

開場

観客が入ってきても二人は見向きもせず
穴を掘ろうとしている
やがて明かりが舞台のみになり
開演

静寂

B 「何で穴掘っているんだ?」
A 「まただ、」

A 「また出た」
B 「あ、また?」
A 「骨」

B 「骨」
A 「・・ああ、」

B 「それがなに?」
A 「え、」
B 「さっきの骨が、な、どうしたって?」
A 「まぁ、また骨が出てきたなって言う、話」
B 「何の骨?」
A 「さぁ、」
B 「あぁ、どうでもいいか」

A 「そんなの気になる?」
B 「何が?」
A 「骨」

一瞬の間

B 「いや、え?なんの話?」
A 「骨のこと、なんか気になるみたいだからさ」
B 「別にそんな事ないけど、え?そう見えた?」
A 「あぁ、いやそこまでの意味じゃないから」
B 「あー、うん、ふーん」

会話はフェードアウト

B 「今何時?」
A 「分かんない、三時くらい」
B 「え?」
A 「なんとなく」
B 「ああ、三時?」
A 「うん、何となくね」
B 「えでも三時だよね?」
A 「いや、どうだろ」
B 「あ、あれ違うの?」
A 「うん」
B 「三時なんだよね?」
A 「あぁ、違うよ」
B 「違うか、(間)で何時なの?」
A 「分かんない」
B 「三時?」
A 「三時かぁ、」
B 「一端、三時で」
A 「ああ、ありがとう助かる」

チャイムの幻聴が二人には聞こえる

A 「チャイム、聞こえる?遠くの」
B 「十キロは向こうかな」
A 「どうだろ、何にも無いからもっと遠いかも、」
B 「そうだよな」
A 「学校か、なんかだろうね」
B 「え?この場所?」
A 「チャイム」
B 「ああ多分そう、どこか、学校があったんだろう」
A 「学校はあったでしょ、流石に」
B 「流石に、な」

会話はフェードアウト

B 「やっぱりそれなら、今が十二時か」
A 「え?なにが」
B 「学校のチャイムが鳴るのは十二時だから、」
A 「ああ、時間」

A 「夕方にも鳴らない?」
B 「あ、そうか、鳴るか」
A 「うん」
B 「朝も鳴るよな?」
A 「そう、確かに、」
B 「あれ、全然分かんなくなった、何の話だっけ」
A 「骨が気になる話」
B 「気になんないよ!それは、全然」
A 「あぁ、分かった」
B 「もういいや、暗くなったら午後で、」
B 「あ」

穴から見えない腕時計を取り出すB

A 「(それを見つつ)また骨?」
B 「腕時計」
A 「どこの?」
B 「アナログの、分からない、ブランドの、腕時計、(土を掃う)」
A 「いいじゃん」
B 「(腕に見えない時計を巻く)こんな感じか、」
A 「どう?」
B 「ま、まあまあ」
A 「それ、どこから?」
B 「なんか、普通に、土の中から」
A 「えー、欲しいなぁ」
B 「これ?」
A 「いや、別にそれが良いって事でもないけど、なんか欲しいなって」
B 「あぁ、」

A 「(つぶやく)時計、欲しいな、」
B 「え?なに」
A 「良いよな、時計、」
B 「うん、」

沈黙

A 「時計、いい」
B 「あげようか?これ、」
A 「いや!、いいって!、なんか申し訳ないし」
B 「でも、すごい、欲しい感じ、」
A 「いや、」
B 「え?」
A 「いや」
B 「あげるよ」
A 「いや」
B 「えっ」
A 「逆に、いらないの?それ」
B 「だって、欲しいみたいだから」
A 「それは、おかしくない?」
B 「何が?」
A 「時計欲しい訳でもないのに時計つけたの?」
B 「それは、腕時計つけない訳にいかなかったから、着けなかったらそれ、置き時計だもん」
A 「どうせそれ前は、誰かの腕時計なのに」
B 「知ってるよ」
A 「この世界はどうせ祖先のお下がり、」
B 「もう、分かった、要らないよ、この時計、」
A 「え?」
B 「なに、」
A 「どうするの、それ」
B 「うん、捨てる」
A 「え、なんで?」
B 「なんで?」
A 「いや、せっかくの時計捨てるなんて勿体ないよ」
B 「じゃあいる?」
A 「まただ、」

A 「また出た」
B 「あ、また?」
A 「時計だ、腕時計」
B 「骨」
A 「・・ああ、」

B 「それがなに?」
A 「え、」
B 「そんなの気になる?」
A 「何が?」
B 「骨」
A 「アナログの、分からない、ブランドのなんか腕時計、(土を払う)」
B 「いいじゃん」
A 「(腕に見えない時計を巻く)こんな感じか、」
B 「どう?」
A 「ま、まあまあ」
B 「それ、どこから?」
A 「なんか、普通に、土の中から」
B 「何の骨?」
A 「さぁ、」
B 「あぁ、どうでもいいか」
A 「ま、まあまあ」

無人飛行機の音に気付いて
二人は空を見上げる

B 「また飛んでる」
A 「昨日も」
B 「あぁ、巡回ルートかな」
A 「どうだろう、分からない」
B 「あれー、無人なんだな!、無人戦闘機」
A 「ああ、あれは防空機」
B 「攻撃、するだろ」

A 「え?守るために飛んでるんだよ、あれは」
B 「守るために戦闘をするなら戦闘機だ」
A 「いや、向こうの空までは飛んで行かないし、別の役割だよ」
B 「でも飛んでいけるじゃん、」

A 「銃持ってるからって人を殺すとは限らない、要はさぁ、使う人次第ってことじゃん」
B 「銃を持つって事はさぁ、銃を持つって事なんだよ?」
A 「持ったってさ、撃たなきゃいいんだって、相手に撃つかも知れないと思われれば相手も下手なまねをしなくなる、」

B 「今、銃持ってるか?」
A 「どうでしょうかね」
B 「そうか、え?」

A 「休みたい」
B 「休んだら?」
A 「え、いや、いい」
B 「休むべき時にさ」
A 「休んだら?」
B 「え、いや、いい」
A 「休みたい」
B 「休みたい」
A 「休みたいなー」
B 「休みたいなー」

B 「痛い」
A 「痛い」
B 「指が痛い」
A 「手、痛い、」
B 「あー関節がキリキリする」
A 「いや、ジンジンする」
B 「頭がガンガン」
A 「寝てないからだよ」
B 「眠れない身体なのだよ」
A 「寝たい」
B 「寝たい」
A 「嫌だよ」
B 「嫌だな」
A 「嫌だよ」
B 「嫌だな」
A 「嫌だよ」
B 「嫌だな」
A 「嫌だよ」
B 「嫌だな」
A 「まただ、」

A 「また出た、骨」
B 「骨ー・・」
A 「・・ああ、」

B 「何の骨?」
A 「え、ああ」
B 「その骨、」
A 「なんだと思う?」
B 「えぇ、っとね」
A 「さぁ、何でしょう、」
B 「あぁ、分かんないわ」
A 「残念」

B 「あのさ、骨って集めたくならない?」
A 「デアゴスティーニ?」

B 「え?なんの話?」
A 「いやいい、いい、いいから、別に、うん」
B 「待ってって、え?、デアゴ?って言った?」
A 「うん」
B 「それは、何?」
A 「毎号毎号パーツが送られてきてそれを組み立てる、やつ」
B 「あー、パズル的な、」
A 「あぁ、うん?、そう、的な、」
B 「下アゴってある?」
A 「え?なに、デアゴ?」
B 「下アゴ、・・骨の」
A 「あー、アゴね、下アゴ、(骨を渡す)」
B 「(眺めながら)ああ、これ良く出るやつだ」
A 「うん、だけど、金歯が光ってるからさ、」
B 「いや!、違う」
A 「え、あぁ、あ?ん何が」
B 「(強くカットインする)大型爬虫類の下アゴの骨!」

A 「あぁ、ごめん、今それ無いわ早く言って?」
B 「あったらでいいや、」
A 「そんな感じなの?」
B 「え?」
A 「そこまで集めてる訳じゃない?」
B 「いや、別に」

B 「今何時?」
A 「(時計を見て)八時十五分」
B 「え?」
A 「うん」
B 「ああ、そうなんだ」
A 「うん、朝でした」
B 「えでも少し前は三時だったよね」
A 「いや、どうだろその後十二時ってことになった」
B 「あ、あれ違う?」
A 「うん」
A 「でも今は、(時計を見る)八時十五分だから」
B 「じゃあ朝、朝のチャイムが鳴るんだろ?」
A 「うん、そうか」

B 「もうすぐだな」
A 「チャイム?」
B 「ああ」
A 「今は八時十五分」
B 「分かった」

沈黙

A 「聞こえる」
B 「ええ?何が」
A 「ウーーーーーって」
B 「何それ、唸ってるのか踏ん張ってるのか」
A 「叫んでる」
B 「ウーって?」
A 「いや、人が叫んでる」
B 「ウーって?」
A 「水、」
B 「水?」
A 「水を飲みたがってる」
B 「へー、質素だな」
A 「うん、すげーほしがってる、水分」
B 「異常気象だもんな」
A 「さっきの、聞こえなかったか」
B 「聞こえなかったよ」
A 「聞こえたよ」
B 「みたいだね!」
A 「何で聴こえてないの」
B 「知るかよ、遠いからじゃない?」
A 「まただ、」

A 「また、」
B 「あ、また?」
A 「カブとニンジン」
B 「骨?」
A 「・・ああ、いやカブとニンジン」

B 「それがなに?」
A 「え、」
B 「野菜がどうしたって?」
A 「まぁ、野菜が良く育つなって言う、話」
B 「あぁ、そう?良かったじゃん、困らない」
A 「あ、多分栄養吸ってるんだな、骨の」

B 「腹、減らない?」
A 「減らない、」
B 「ああ、そう、」

A 「減るのか?、腹、」
B 「いや、別に、」
A 「なんだ、いつ食べたかな」
B 「さぁ、?」
A 「ならさ、食べておいた方がいいんじゃないか?」
B 「腹は、減ってないって、」
A 「いや、食べ物は食べる為にあるじゃないか、なぁ(穴から見えないニンジン、カブを出して)ニンジンとカブ、どっちが良い、」
B 「ニンジン」

Aが手の物を一つ渡す

B 「これ、ニンジン?(見えないニンジンを見る)」
A 「ああ、当たり前だよ、食えよ」

B、ニンジンではない加工食品を食べる動き
A、穴を掘り続ける

A 「うまい?」
B 「うまい、」
A 「え、どんな風に、」
B 「そう、外はパリッ、中はトロッ、」
A 「なんだ、そっちの方が良さそうだな、」
B 「まさか、ニンジン食べた事無いのか?」
A 「いや、ある、」

B 「カブ、食えよ」

B、カブを渡すと穴を掘る
A、カブを食べるが動きは加工食品

B 「うまいか」
A 「ふわふわのモチモチ」
B 「ニンジンの方が旨かった」
A 「いや、カブの方が旨い」
B 「あ、いや、ニンジンはパリトロだ」
A 「ふわふわのモチモチの方が良い」

静寂

B 「あれ三本だっけ」
A 「あ何が?」
B 「龍の横棒」
A 「ん?あぁ、漢字の、竜?、五本じゃない?」
B 「え、五?」
A 「待って、あ、難しい方の?」
B 「画数多い方の」
A 「あーはいはいはい」

B 「右側の、三本だよ」
A 「えぇっと、四、じゃない?」
B 「あれちょっと待ってそれ、ええあれ?」
A 「違う?」
B 「違うかな」

考える間

A 「だめだ、休みたい」
B 「うん、だめだな」
A 「休むべき時にさ」
B 「休んだら?」
A 「え、いや、いい」
B 「休みたい」
A 「休みたいなー」
B 「休みたいなー」

B 「痛い」
A 「痛い」
B 「指が痛い」
A 「手、痛い、」
B 「あー関節がキリキリする」
A 「いや、ジンジンする」
B 「頭がガンガン」
A 「寝てないからだよ」
B 「眠れない身体なのだよ」
A 「寝たい」
B 「寝たい」
A 「嫌だよ」
B 「嫌だな」
A 「嫌だよ」
B 「嫌だな」
A 「嫌だよ」
B 「嫌だな」
A 「嫌だよ」
B 「嫌だな」
B 「(時間に追われたように)今何時?」
A 「(時計を見て)八時十五分」
B 「え?」
A 「うん」
B 「ああ、そうなんだ」
A 「うん、朝でした」
B 「えでも少し前は三時だったよね」
A 「いや、どうだろその後十二時ってことになった」
B 「あ、あれ違う?」
A 「うん」
A 「でも今は、(時計を見る)八時十五分だから」
B 「じゃあ朝、朝のチャイムが鳴るんだろ?」
A 「うん、そうか」

B 「もうすぐだな」
A 「チャイム?」
B 「うん」
A 「今は、八時十五分だから」
B 「じゃあ朝!、朝のチャイムが鳴るんだろ!」
A 「うん、そうか?」

A 「聞こえる?」
B 「聞こえる」
A 「ええ?何が」
B 「ピーーーーーって」
A 「何それ、心拍計?」
B 「あ、いや、気のせいかもな」
A 「ええ?なんで」
B 「目を閉じても目を凝らすと、なんか見えたような気がする、みたいなことない?」
A 「それはー、気のせいの範囲じゃないか、?」
B 「いやいや、聞こえるから、聞こえてるの」
A 「いや、聞こえないって」
B 「あーあ、耳が悪くなったね多分」
A 「思いこみだな、きっとチャイムが鳴るってさ、そういう、宗教みたいな?」
B 「(軽く)神は死んだよ」
A 「なんだ、」

A 「なんか出た」
B 「あ、また?骨?」
A 「うん、銃」

B 「それがなに?」
A 「え、銃なんだよ?」
B 「な、どうしたって?」
A 「なんか、銃が出てきたなってゆう、」
B 「どんな銃?」
A 「冷たくて、かっこいいやつ」
B 「あぁ、どうでもいいか」

一瞬の間
拾い上げた見えないマシンガンを構えるA

A 「おい、(Bの頭に銃を添える)」
B 「え、なに?」
A 「あぁ、大丈夫、撃つ気ないから」
B 「え、なんで構えんの?」
A 「見つけたから、銃」
B 「じゃあ、下ろせよ」
A 「え?なんで?撃たない撃たない、撃たないから」
B 「撃つとか撃たないとかじゃないから」
A 「冗談きかねーな」
B 「銃人に向ける冗談?」
A 「撃たないから冗談なんだよ、分かるだろ?それくらい」
B 「銃を持ってるんだからな?」
A 「俺がな」

一瞬の危険な空気

B 「おい、それを置けよ」
A 「あー!盗る気だ、俺の武器、分かるんだよそういうのは」
B 「何だよ、真面目になろうって、なぁ、」
A 「今まで何ともなかったのにすぐにこうだ」
B 「分かってんなら止めようじゃないか」
A 「なんでだよ」

A 「撃ってもいいか?」
B 「何が、」
A 「お前、」
B 「俺が?」
A 「違う」
B 「なぜ?なぜ撃たなきゃいけないんだよ」
A 「本当は撃たないけど、」

B 「ああ、なら銃を捨てろよ」
A 「いややっぱ撃つ」
B 「何だよ何だよ、どうしてんだよ」
A 「どう?何かしら、命乞いしないの?今から見せしめに一人、囚人を殺すけど、どう?」
B 「殺さないよな、結局は、殺したら本当に面倒だぞ?ダダ漏れだぞ?」
A 「別に、何もないから問題も起きないでしょ、多分、いいよ、(間)ここに血ィ・・落としたらいいよ、」

沈黙

A 「ホントは撃たないけどね」
B 「だよな!だよな!だよな!」
A 「嘘だよ」
B 「何のつもりなんだよ」
A 「じゃあー、掘れ」
A 「埋めろ」
B 「え?」
A 「今掘った分埋めろ」

穴を少し埋める

A 「(段々早くなる)掘れ、埋めろ、掘れ、埋めろ、掘れ、埋めろ、掘れ、埋めろ、掘れ、埋めろ、掘れ、埋めろ、掘れ、埋めろ、掘れ、埋めろ、掘れ、埋めろ、掘れ、埋めろ、え?でか。」
B 「あーこれこれこれ!、これ、あの、大型爬虫類の下アゴ!、ほらここらへんは昔川だったから、そこで溺れた生物の、」
A 「あー、トカゲの骨」
B 「大型爬虫類の下アゴね」
A 「うん」
B 「え?」
A 「トカゲの骨」
B 「トカゲじゃないから、それ間違いだからね、トカゲは、」
A 「あー、」
B 「え?聞いてる?こっち説明してるんだけど、」

A 「いや、正直どーでもいいから」
B 「何が、」
A 「トカゲとか、だって、骨じゃんもうさ」
B 「こっから出てくる俺たちの骨とは違うんだよ、何万年何千年も前の、骨、だから」
A 「骨だよ」
B 「ま、骨、だけど、どうせ、骨なんだよ、どうせ、」
A 「うん、え?どうした」
B 「骨ごとき、だよ、」
A 「そろそろ休んだら?」
B 「いや、いい」
A 「休むべき時に休む、べき、」
B 「そうだけど」
A 「ずっと掘ってるじゃん」

B 「(怒って)じゃあ、休んで!」
A 「なんで!できません、君が休んで!」
B 「そう、早く休むべきだから、どうぞ、休んで!」
A 「俺まだ大丈夫、」
B 「靴が痛そう、」
A 「靴は痛がらない!」
B 「足が痛そう、脱げるのか?」
A 「脱げるよ!靴ぐらい!」
B 「なら、脱いで、」
A 「まだ、休まなくても良い!」
B 「嫌にならない?」
A 「なる!」
B 「嫌だな!」
A 「嫌だよ!」
B 「嫌だな」
A 「嫌だよ」
B 「嫌だな」
A 「嫌だよ」
B 「嫌だな」
A 「嫌だよ」
B 「嫌だな」
A 「まただ、」

A 「また出た」
B 「なに?」
A 「骨」
B 「骨・・」
A 「・・ああ、」
B 「えなんの?」
A 「いや、」
B 「(期待して)その骨は、」
A 「あぁ、えーと、」
B 「何の骨?」
A 「人間」

B 「あー、一番良く出るやつね」
A 「なんか、嫌だなって、」
B 「え?あ、ごめんなんか、」
A 「いや、しょうがないよ正直言ってなんか、分かんなくなるっていうか、骨とかなんとか」
B 「うん、」
A 「だけどさぁこの骨って、もしかして親戚かもなぁって思うんだよね、」
B 「ああ多分、知らない人たちだから」
A 「そうなんだけどさ、ニンゲンだからその、遡れば血縁なんだよ」
B 「うん、だとしたら、(気付いて)そうなら(AとBのことを意識して)ここもそうなんだ、ね、」
A 「ああ、うん、」
B 「あ、やだ、」
A 「え、」
B 「いや、そういう事じゃなくて、うん」
A 「ああ、そう、」

沈黙

B 「なんか、足りないんだよねー、そう足りてない」
A 「何が、?」
B 「全部?かなぁーー、」
A 「しょうがないし、生きてるからいいほうじゃん、」
B 「いや、そーなんだけどさ、(辛そうに)分かるんだけどさ、(嘆いて)分かるんだけどさー、うんでもああ、そうだね、」
A 「お酒も煙草ものまなくていい、車はいらない、お金もいらない、セックスしなくてもいい、結婚しなくたっていい、恋人居なくても死なない、(間)でしょ?、友達居なくてもいい、まぁ、自分も居なくていい、」
B 「え?いいの?」
A 「え?別によくない?誰も引き留めないよ、」
B 「待って、(間)いや引き留める、」
A 「えなんで、?こっちの気持ち分かんないでしょ、」
B 「うん、え、待ってって、ほんとに、」
A 「ああ、今じゃない今じゃない、」
B 「あー、(一拍の間)分かる、」

Bの気持ちがひっくり返る間

B 「こっちの気持ち分かんないでしょ、今、」
A 「うん、あたりまえじゃん」
B 「(怒って)なんで?なんで分かってくれないの?」
A 「え?何?」
B 「は?、何で気持ち分からないの?」
A 「いやごめん、」
B 「何、当たり前って、なんかすごく腹立つっていうかカチンときた、」
A 「あーなんかもう分かったから、ごめんって、」
B 「え?分かったからって言った今、分かったって、え?分かんないんじゃないの?」
A 「(時計を見て)八時四六分」
B 「あのさあ、気にしてないの?、少しはさぁ、」
A 「そんなことないよ、(時計を見て)九時二分」
B 「え、誠実なフリするの?、自分の方見せないで僕の方を見る、自分で触らないのに僕に触らせる、そうさせるんだ、また、」
A 「いや、落ち着いて、」
B 「(絶対に目を見ないまま)目を見て、向き合って僕にすぐに、」
A 「うん、あー、今度話そうそれは(時計を見て)今はもうすぐ何か聞こえてくるからさ、」
B 「今度っていつ?」
A 「え?、あー(あした)明日、」
B 「(あす)明日はない、」
A 「サイレン聴こえる?」
B 「聞こえない、」
A 「あっそ、」
B 「僕の声を聴いてからその声を聴かせて」
A 「でもなんか聞こえない?」
B 「聞こえないし答えて、」
A 「そうじゃなくて聴こえるよ?なんか、リアルっぽい叫び声と消防車の音、ザ・大事件、って感じの、なんか、」
B 「(悲しそうに)あっそ、全然分かんないわ」
A 「まぁいいか遠いし別に」

空を旅客機が飛んでくるのを見る

B 「あれなに?」
A 「あー、ボーイング七六七、旅客機だよ、でもあれはアメリカン航空の」
B 「ああ飛行機、旅行行きたいなー、ハワイとか、アメリカー、ワシントンDCとか」
A 「ボーイング七五七、」
B 「あっち?」
A 「ユナイテッド航空の」
B 「なんかグローバルな人生とか、昔っぽい、」
A 「聞こえるよやっぱ段々強くなってる、消防車とパトカーと警報の音、と建物が崩れる音、大きなビルか何か、」
B 「それはー、気のせいじゃない、?ねぇ」
A 「いやいや、聞こえるから、聞こえてるの」
B 「いや、聞こえないって」
A 「あーあ、耳が悪くなったな?多分、」
B 「それは思いこみ。きっとチャイムが鳴るって、そういう感じで信じてるから聞こえる、宗教みたいな、あ、またなんか出てきた、えー黒い棒、焼けた木の棒」
A 「棒っていうか柱、」
B 「ええ細、だとしたら、」
A 「でもなんか十字になってるな、」
B 「あー、いやぁだから柱ってこともないでしょ?」
A 「うん、」
B 「これさ、おもちゃのモッケンじゃないかな」
A 「え?シナイじゃなく?」
B 「この短い横棒が、剣のつばで、この縦の短い方が柄で、一番長いのが斬れる、ヤイバ、?」
A 「じゃ捨てられたんだ、おもちゃ?、武器を、」
B 「この本は?」
A 「このやや焦げてる?」
B 「そうそう、」
A 「あれじゃない?知ってる?」
B 「辞書、」
A 「マンガ、」
B 「マンガは知ってるよ、」
A 「あー、なんだ、」
B 「だからえー、これはさ、辞書だって、分からない時に開く」
A 「読んでみたら?」
B 「えー、別にこれはもう読まなくても、いい」

二人の関係性が変化する
電車かどこかでの世間話

A 「あ、あれ見た?飛行機のやつ、」
B 「うん?、うん、」
A 「やばいよな、」
B 「どれくらい死んだかな、」
A 「えー、ダメでしょ、あれはもうだって潰れたし燃えたし、爆発したし、」
B 「うん」
A 「そーいえばさ、今朝?昨日?明日?かな、なんか人身事故でさ、すんごい大変だったよね」
B 「あー、大変だよね止まっちゃってさ、」
A 「そう皆人身事故死ねよってカオしてたし、ふざけんなよって俺も正直思った、」
B 「そうか、まぁ、確かに」
A 「死ぬなら一人で死ねよって、辛いなら一人で永遠に休んでろよって思った(笑う)」
B 「ああ休むのはね、」
A 「別に死ぬのは知らないけど、せめて関わらないでって思うんだよね、自分の範囲で消えてって」
B 「あー、ごめん、今朝か昨日か明日グモったの僕なんだわ、ぐもっちゅいーん」
A 「あ、そっか、そうだったっけ、居ないんだっけ(Bの独り言が終わるまで唱える)」
B 「(観客へ向けた止めない独り言)あーー全然、えまぁ実際のところで言うと、そういう迷惑とかは、考えるけどだって、もう、自分はこの世界に不必要な人間で、誰も気にも留めない存在?存在してないけど。みたいな、苦しいこの世界から出る為に、決めてたから、もうこれしか救われる方法は無いって、ま、救いが何かもよく分かってなかったんですけど、・・・あの、これ全部嘘です。忘れてください」
A 「あ、そっか、そうだったっけ、居ないんだっけ」
B 「であのさぁ!、答えは?」

ここで初めて二人は穴を掘らずに互いを見る

A 「答え?」
B 「質問に対する、答え、」
A 「質問?」
B 「えー、したじゃん質問」
A 「あー、えっといつ?」
B 「したよ、したんだよ、まぁ、自分で忘れかけたけどさ、(感情的に流れ出す)今さっき思い出したんだからいいよね?すっごく引っかかってるんだよ、だからさぁ(間)何で、穴を掘ってるんだ、って」

止まる

A 「知らない」
B 「(冷めて)ああ、うん、そんな気はした」
A 「(堰を切ったように感情的に怒鳴る)なんだよ。知らないよそんなこと!、あーなんかいつか?、親か先生か政治家か神様が教えてくれるだろ?、その問題の正解をさ、それまで待てばいいんだよ、求められてるのは正解だけなんだからさ、な?」
B 「それまで待てって?」
A 「ああ、それまでは待て、」
B 「え、?希望はないのか、どこにも」
A 「希望、希望って?」
B 「退屈なんだよ、現実はさ、そうだろ?」
A 「でもしょうがないんだよなぁ、特筆すべき物語は現実に無いしさ、人生なんてそんなもんだよ」

穴を挟んで二人は少しふらふらして緊張を解く
演技プランの会議の再現のような立ち話が始まる

B 「(手で空中に立体の井戸や穴を描く)この、穴は井戸になる、掘り進めていくと、水が、噴き出す、すぐに、ここらへんに、水が流れ出す」
A 「え、なんで水なの、水ってさ、つまんなくない?」
B 「石油はだめだよ」
A 「石油は、だめだよ、えーワインとか牛乳の方が面白くない?」
B 「水をワインに変えるのはダメだって、ありえないもん!、触ったら病気治るじゃん」
A 「あーねん」
B 「質素だな、穴からずっと水が湧くの、」
A 「そう、壊れた蛇口のように流しっぱで、だけど、水道じゃ無いからこうやって水は増えていく、」
B 「(続けて一息で言う、息を出し切る)そしてはいにみずがながれこむつまりペットボトルなんかで飲んでいるモノに逆に飲まれるということ浸水」

Bは息を出し切った肺に空気が流れこむ音を出してから
ジムノペディの一部分を鼻歌で探りながら演奏する
Aの言葉の間壊れたようにリピートする

A 「(客席に顔を向けて)最短ルートで六億キロそこからもう少し。イオの次!ガニメデの前!つまりエウロパの大地!このなだらかな大地の下にはボストークレイクのように水がある。掘る、掘る、掘る、この穴から高く湧きあがり流れ出す水!私は高い放射線に加えてそれに飲み込まれてしまう、水が流れ地面を削る。風化する時間経過の範囲が拡大する。かき混ぜられる物質。芽生える命の根元。」
B(ハル) 「おい!旦那!この渡し船に乗っていくかい?」
A 「乗ります!」

Aが渡し船に乗る
揺れる船
AとBは向かい合っている

B(ハル) 「お金を頂戴。」
A 「お金?」
B(ハル) 「ここにだってお金は必要。六文だよ。」
A 「はい。(懐を探ってお金を出そうとするが見つからない)あ。これ?(紙の冥銭を出す)」

B(ハル) 「旦那ぁ!これ何処で手に入れたんだ、これがありゃあなぁ、池袋駅から東京メトロ副都心線使って地球まで約七億キロをひとっ飛びだよ」
A 「え?そうなんですか?」
B(ハル) 「でもせっかくだからウチに乗っていけって!俺も一人で退屈してたんだ。こいつは大切に持っときな(紙切れを返す)」
A 「ああ。はい」

Bがこぎ出す

A 「ここは海ですか?」
B(ハル) 「川にきまってるだろ?!天の川銀河。旦那は琵琶湖を海って言うタイプだな」
A 「琵琶湖は湖って付いてますから間違えることはないですよ流石に。」
B 「カササギが見える」
A 「(河原を指さして)あの子供たちは?」
B(ハル) 「石積だよ。河原の石を積み上げては鬼に崩される。」
A 「あーなんか、・・・・酷いですね」
B(ハル) 「あの子たちは親泣かせだよ」
A 「え?親泣かせ?」
B(ハル) 「親より先に死んじまったからああやることになってるんだ」

A 「逆、逆じゃないですか。いや、分かんないですけど、石積ずっとさせられたから親より先に死んだって事はないんですか?」
B(ハル) 「ああ?なんだそりゃ」
A 「あの自分ずっと働いてたんですけど、掘る仕事で、ずっと掘ってて、終わらなくて、学校も行ってたんですけど仕事の疲れで全然出来なくて、でも学費と生活費あるから仕事は辞めない。みたいな」
B(ハル) 「なんで学校に?」
A 「なんとなくって言うか、えーっと似たような奴が居て、働いてる、俺よりまともな奴ででも、なんか居なくなったんですよ。」
B(ハル) 「居なくなった?」
A 「鉄道に飛び込んだっていうか、よくは知らないんですけど名前も、あんまり意見も合わなくてでもなんか凄く仲良くなってきた矢先で、そいつと。」
B(ハル) 「飛び込んだ?何のために?」
A 「もがいてる自分を助ける為、ですよ。苦しい状態から抜け出す為に死を選んだんで、」
B(ハル) 「死が救いになるって?」
A 「はい、まぁ、それで全部訳が分からなくなって、掘るために生きるのか、生きるために掘るのか、」
B(ハル) 「んで、で?どうなったんだい?」
A 「答えが分からないので、だから、先生を待ったんです、」
B(ハル) 「あ?先生?」
A 「みんな算数の問題に取り組んでて、確か八時五十分から始まる授業で、黒板のキッチンタイマーが鳴って、先生が答えを教えてくれるんですいつも。それを待って。なんかピピピみたいな、警報とかサイレンじゃなくて、時間を知らせるあの、」

A、記憶と思考が崩れて言葉が出ない

A 「だから待ってたんですよ。正解を。あれ、なんの話でした?」
B(ハル) 「はぁ、よく分からん話だな。」
A 「ああ、そうか、思い出した。一つ答えが出たんです。」
B(ハル) 「答え。」
A 「水、穴からは水が出てくる、」
B(ハル) 「あんた名前は?」
A 「名前は分かりません。」
B(ハル) 「なんだ、わからないのか?」
A 「あの、どこまで分からなくなるんですか?」
B(ハル) 「最後は何もかも。分からなくなることになる。」
A 「あー、はい、え?そうなんですか、なんか天国とか地獄とかあるー、かもなって思ってたんすけど、」
B(ハル) 「ゼロがイチになったように今度はイチがゼロになるんだ。それ以上はない。」
A 「あ、なんか悲しいですね、もっと今までにすることがあった気がするって言うか、もう色々忘れて来てる感じですけど、」
B(ハル) 「夢中で生きたら夜だ。ほら日が沈む。(客席奥を見る、照明がゆっくりと暗くなり始める)」
A 「はい。あ、やっと沈むんですね。やっと午後になる、」
B 「恒星の陰はとても寒いが、大丈夫か。」
A 「夜が来るんです」
B 「そうだ。人間の最後は独りだ。」
A 「夢を見ることができる。これでやっと眠りにつく。(喜ぶ)やった。寝られる!やった!休めるんだ!(一息の間が空いて悲しみがこみ上げて無に近づく)永遠に終わりだ。終わりなんだ。独りで永遠に休んでおやすみなんだ。」
AB 「バイバーイ!、(手を振るこどもたちが見えている)じゃあ、また明日、学校で会おうね、さようなら!」

真っ暗になる

終わり


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?