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松本清張ドラマ『黒い画集~証言~』嘘に嘘を重ねること、人を信じ愛するということ。

リアタイし終わった直後の感想を残そうと思う。


凄かった...圧倒された。


ここ最近新しいドラマに飢えていたけれど、
1時間30分色んな感情が渦巻いた末に
すっかり飢えは消え去り、満たされた。
途中スマホを片手に視聴することもなく
久々に画面に釘付けになって最後の最後まで夢中になれた。

とことんシリアス、とことん物悲しく悲劇的、
でも事実を貫き通した者のみ僅かな救いがあるという物語のテイストが好みのど真ん中だった。

どんなに小さな嘘でもつくものじゃないし、
嘘に嘘を重ねて本来の自分を見失ったのが
谷原章介さん演じる貞一郎だったんだなぁ。

浅香航大さん演じる不倫相手の智久を愛していたなら、
あの事件をきっかけに自分に正直に生きる道を選択できたはず。
でも貞一郎の長年の葛藤がそうはさせなかったと。

反対に智久はずっと貞一郎のことを真っ直ぐ愛しているように見えたし、
途中浮気をしたのは正妻・家族への嫉妬や
貞一郎のはっきりしなささによる苛立ちからの
ほんの気の迷いだったのかもしれないけれど、
状況的に互いの心の脆い部分が露呈しすぎて
補い合えなかったが故に取り返しのつかないことになったんだと思った。
物凄く切ない。

一方西田尚美さん演じる貞一郎の妻、幸子。
ラストのどんでん返し、
ひょっとしたら彼女が主役かもしれない。
懐の深さと静かな怒り、怖かった。
でもこの物語で一番深く傷ついたのは間違いなく幸子だと思うから、
なんだか責めるに責められない。 

生前の貞一郎は散々やらかして仕事にも影響が出るほど憔悴しきっていたのに、
幸子は毒を盛った翌朝でもいつもと変わらない母親の役割をこなしていたのが印象的だった。

それに関係者一人一人のインタビュー的な演出の中で、
父親を尊敬していた娘の涙に胸を締め付けられた。

NHKという枠組みから考えたらかなり攻めた内容で、
人間模様がほろ苦くどこまでもドロドロ、
全体的にクオリティが高くて本当に素晴らしいドラマだった。
観て良かった。

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