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森川智之と遊佐浩二、そして梶裕貴

2009年にドラマCD化された、

『その唇に夜の露』

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【ざっくりあらすじ】

バスの運転手 和田琢紀〈遊佐浩二〉は
中学生時代 若江恭一〈梶裕貴〉を犯した罪深い過去があった

15年後のある日、
中学以来疎遠になっていた 恭一〈森川智之〉が和田の運転するバスに乗車したことをきっかけに
二人の愛憎劇が幕を開ける___


基本的に性的同意があっての関係が好みなので、
未成年の頃に無理やり同級生を犯して
成人後に心に傷を負ったかつての同級生に犯し返されるという話の筋には正直抵抗感を抱いた

でもそんな抵抗感が跳ねのけられるほどに
とても丁寧でこだわりを感じるSE・BGM、
遊佐さん・森川さん・梶さんの芝居が素晴らしかったので
各キャラクターの感想を綴っていく🖊




和田琢紀〈遊佐浩二〉

家庭環境と思春期特有の思い込みや苛立ちが混ざり合い、
未熟な狂気性が生まれて 恭一〈梶裕貴/森川智之〉に性加害を働いた人物 

相手の気持ちなんてお構い無しに犯すシーンは
とても生々しくて腹立たしかったけど、
大人になった和田は過去の行いを悔いていたのがまだ救いだった


やはり遊佐さんの受け芝居が絶品…

基本的にツンケンしているけれど
森川さん演じる恭一に無人のバスの中で過去の卑劣な行いを詰めに詰められて所々弱々しくなるところや、
話が進むにつれて本当の自分の気持ちに気づき
恭一から与えられる苦痛が快楽に変化していく様が伝わってきた

「した…」「ほしかった…」
ピンポイントに切なく甘える言い方があまりにもお見事だったなぁ


特筆すべきは激しく混乱する琢紀のシーン
恭一だけを乗せたバスを急発進させたのち、
おかしくなった自分を自覚しながら
痛々しく笑う芝居が本当に素晴らしかった

自分が犯した罪だとはいえ
追い詰められて心が壊れる瞬間を見事に表現されていて、
このシーンを聴くだけでも価値があると思う


若江恭一〈森川智之〉

あんなにかわいい声から、
数年後にはハンサムで骨太な声に変化した恭一

中学時代に悪気なく琢紀〈遊佐浩二〉を傷つけたことがきっかけで、
思春期ゆえに怒りがおさまらない琢磨から犯され人間不信になるというキャラクター


大人になった恭一は企業の良いポジションに就き、さらには専務の娘と婚約していたのだが
琢紀が運転手を務めるバスに乗車したことがきっかけで過去の消化しきれなかった怒りをぶつけるようになる


かつて弱々しかった中学生が
自分を人間不信に陥らせた同級生に攻めに攻めて復讐する様は当然な怒りだと思いながらも、
複雑な気持ちにさせられた

でも恭一と琢紀が痛々しく体を重ねて
本音をぶつけ合ううちに、
互いに誤解していたことに気づき
散々ほろ苦い展開から最後にはぐるんっと甘い展開になって両想いで体を重ねる描写があったことが本当によかった

憎しみから愛おしさに変わる・・・
加害者と被害者だと思うとこれは特殊なケースだろうけど、
無理矢理な展開ではなかったので受け入れられた


若江恭一(中学生時代)〈梶裕貴〉

かわいくて、真っ直ぐさが声に滲み出ていた中学生時代の恭一

慣れない土地で馴染もうとするも
結果的にイジメられた挙げ句に犯されるという
トラウマを植え付けられるシーンは
とても胸が痛む芝居だった

でもそれだけではなく、
まだ良好な関係だった頃の琢紀とのやりとりは
爽やかで理想とする友情って感じだったし
だからこそ犯されるシーンが悲しかった

梶さん演じる中学生の恭一の出番はとても効果的な使われ方をされていて、
過去と現在の恭一の変化を感じることができた


まるでバスの中にいるみたい

各キャラクターのやりとりはもちろんのこと、
バスの中のシーンは本当に自分も乗車しているかのような臨場感があった

車内アナウンス、
小銭がパラパラ投入口に入れられる音、
ドアの開閉音、
ちょっとしたASMRのようになっていて
クセになって思わず聞き返したくなる良さがあった

あとは吐血の音もリアルだったり
自然音も雰囲気があったり、
細かい音にとてもこだわりを感じた



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