日本の黒幕

 田中角栄と関係の深かった児玉誉士夫の周辺を描く。ラストで角栄が殺されるけど、粗筋が頭の中でまとまらない。ロッキードの利権が絡んだりして、社会派の作品なのだろうが、切った貼ったのシーンが一番よかった。児玉の娘と弟子が恋仲になり、実は二人が異母兄弟だったという悲劇が最もおもしろかった。

タイトルから、戦後日本の一大政治スキャンダルの内幕を暴露するものかと思ったが、人間の欲の深さをえぐるでもなく、日本を守ろうとする右翼の意気込みが称揚されるでもなく、アクションとエロの大衆映画だった。

 児玉誉士夫といえば、池上本門寺の大檀越として知られる。いまウイキを見たら、日蓮映画を製作した永田雅一とか、熱心な信徒だった横綱の大鵬とかの名前が出ていて、日本は寺周辺の人間関係によっても動いていたのかと思えた。戦前は日蓮主義という、宗教に基づく思想が政治に少なからぬ影響力を持っていた。戦後になると科学万能の世となり、お寺や信仰などの存在感はほぼなくなったのかと思っていたが、そうでもなさそうだ。

先日亡くなった石原慎太郎は霊友会の熱心な会員だった。一般の新聞やテレビは触れることがなかったが、石原が大きな政治決断をする際に霊的なものにすがったことは、関係者の間でよく知られている。宗教と政治というと、卑弥呼の時代を思わせるが、一億の人の命運を左右する決断は人知の及ぶものではなく、神仏にすがるしかないのは今も変わりない。

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