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AI術師の心得(モラル)

AI術師※になってみたものの、学ぶことがたくさんあって、着いていくので精一杯!
そんなあなたに、少しだけ覚えておいてほしいことをまとめました。

※注:AI術師→イラスト作成AIモデルでAIアートを生成する人。絵師とは立場が異なるものとして「術師(術士)」と自称する場合が多い。

はじめに


 こんにちは。AIイラスト術師の世界の片隅で細々とイラスト生成を楽しんでいる有明月アリアと申します。

 昨年、AIイラスト生成モデルが大きく注目を浴びてから現在まで数ヶ月が経ち、界隈も大いに賑わっています。

 有志の方々による初心者向けの教本や、美しいAIイラストを生成するための手引き、プロンプトガイド、お題チャレンジなど。
 界隈を俯瞰で眺めていても、参入される方がAI術師を始めやすい環境がかなり整ってきたと実感しています。

 そこで気づいたことがあります。
 AIイラスト生成のための技術的なサポート体制は整ってきましたが、それ以前の最も大事なものについて述べている内容は少ないということです。

 AI術師に最も大事なものとは?
 それは、モラルです。

 えっちな絵はやめようとか、暴力や犯罪に関わるテーマはやめようとか言う内容ではありません。
 AIイラストの生成を始める前に、少しだけ頭の片隅に置いておいてほしいことです。

 それは社会生活を送る上での「人を殺してはいけない」「他者に危害を与えてはいけない」という、当たり前のモラルに似ています。
 AI術師にももちろん必要なモラルがあります。ただ、あまりにも当たり前すぎて、話題には上らないのです。

 それらを、いくつかご紹介したいと思います。

1.他人の著作物を使用してAIイラストを生成してはならない


 ここでは主に、AI生成モデルを利用できる特定のサービスに組み込まれている「image to image(絵から絵を生成する)」(※i2iと通称されることもあります)という機能を使ったものに限定させていただきます。

 自分の描いた絵や、自分が生成したイラストを使用することは問題ありません。
 ですが、他人の絵やイラスト、写真などの著作物を無許可で使用するのはだめです。

「黙っていれば大丈夫」「生成結果が似ていなければ大丈夫」「個人の利用の範囲でなら大丈夫」などの意見もあるでしょう。そういった考え方を否定はしません。

 しかし、黙っていても似ていればバレます。そして、どの程度似ているか?どの程度なら大丈夫か?という判断は、残念ながら自分の基準ではほとんど当てになりません。
 誰でも自分に対しては甘いからです。

 本当に個人の利用の範囲内で済むのでしょう
か?
 あなたが他人の著作物で生成したその作品が、偶然にもその時点で自分が生成してきたAI作品の中の最高傑作になってしまったら?
 絶対にそれをどこにも公開しないという強い意志が、あなたにはあるでしょうか?

 少しでも自信がないと考えてしまったなら、他人の作品を使ったimage to imageは止めておいた方が賢明です。

 下記は「自分の著作物、AI生成画像のみを使用したimage to imageです」という意思表示をする活動についての記事です。
 よろしければ目を通してみてください。

2.どんなAIイラストでも生成していいわけではない


 イラスト生成AIモデル(長いので、有明月流にAIさんと呼びます。)は、理論的にはどんなイラストでも生成できます。

 もちろんAIさんのモデルによって苦手なテーマや分野はあります。
 けれど「このAIモデルはこういうテーマは生成できない」と決めつけてしまうのは早計です。

 公式AIモデルのアップデート、あるいは個人のマージモデルの再学習などで、苦手なテーマは次々と克服されます。AIさんはそうやって進化を続けているのです。
 将来AIさんに生成できない要素は、どんどん少なくなくなっていくことでしょう。

 さて本題です。何でも生成できるAIさんですが、だからといって何でも生成していいわけではありません。

 もちろんまだAIさんは自分の意思でイラストを生成できませんので、生成するのはAI術師ということになります。

 例えば。

  • 自分の知人に似た顔のキャラクターが、ミスをして泣いているイラストを生成しよう。

  • テレビのニュースで見た自然災害のインパクトが凄かったから、写真そっくりな災害のイラストを生成してSNSに載せよう。

  • 好きなVtuberに喜んでほしいから、ファンアートを生成してタグをつけて公開しよう。

 これらは、望まれないAIイラストの使われ方です。
 知人そっくりのキャラクターを勝手に生成するのは肖像権の侵害に問われる可能性があります。

 実際に起こっている災害を連想させるイラストを生成することは、世間を混乱させ、本当に困っている現場への支援を滞らせることに繋がります。

 VtuberさんへのファンアートとしてAIイラストを生成し公開するのは、現時点では歓迎されないと考えたほうが良さそうです。

 AIモデルに生成されたイラストの学習元となったデータセットには、他人が実際に描いたイラストや撮った写真などが含まれているため、一般的な絵師様からのAIイラストへの評価はかなり悪いと思っておいてください。

 また、AIイラストだと知らずにそれらをサムネイルに使ったりリツイートしたりしたVtuberご本人さまが糾弾される可能性もゼロとは言えません。

 好きだからこそ、好きなVtuberさまが犯すリスクの可能性を減らすために、今はAIファンアートをご本人の目に触れさせることは控えましょう。

 これらは実際にあったことです。
 でも、少し考えれば、自分が生成したものが周りにどのような影響を及ぼすかは自然と分かってくるはずです。

 AIイラストに限らず、創作するということにはそれなりの責任が伴います。
 慣れないうちは他の方の作品を見て、どういう傾向があるのかを探ってみるのもおすすめです。

3.焦りは禁物


 冒頭でも少し触れた通り、現在イラスト生成AIモデルの界隈は大いに賑わっています。
 AI術師の数も増え、AIモデルの種類も増え、毎日がお祭り騒ぎのようです。

 そんな中で、毎日イラストを生成しないと新しい技術に追いつけないという焦り。同じ時期に始めた術師の方がフォロワー数の伸びが良いという焦り。なかなか評価してもらえないという焦り。
 術師になってから生じたさまざまな焦りが、皆さまを苛むと思います。

 けれど、焦らないでください。
 流行に乗り遅れてはいけない、フォロワー数が増えないといけない、評価してもらわないといけない。
 そんな決まりなど、どこにもないんです。

 術師がふとしたことで最低限のモラルを忘れ、足を踏み外してしまう。そんな瞬間があります。
 それは、全て上記のような焦りが生み出したものです。

 増えたとはいえ、AI術師はまだまだ世間的にはマイナーな存在です。もしもあなたがAIイラストとは縁もゆかりもない知人にAI生成イラストを見せたとします。その方は、何の疑いもなくそれをあなたが描いたイラストだと思うことでしょう。

 AI術師が術師を呼び、AI術師が評価した作品が評価を呼ぶ。今の時点では、AI術師の界隈はかなり閉じられた世界なのです。

 それでもどうしても評価がほしい、フォロワー数を増やしたいというのであれば。
 何も考えずに、かわいい女の子と、おっぱいをテーマにしてください。
 少なくともTwitterに限定するならば、それである程度の評価、フォロワー数になるはずです。

 しかし本当に熱心に取り組める術師でなければ自分自身が飽きてしまいます。
 えっちな絵を下に見ているわけではありません。えっちなテーマに情熱を注げる才能は、誰でも持っているわけではないのです。

 そこで改めて考えてほしいことがあります。

 あなたがAIイラストを生成したいと思ったきっかけは何でしたか?

 可愛い女の子?
 かっこいい男の子?
 美しい風景?
 愛らしい動物?
 魅力的な衣装デザイン?
 自分だけの理想の家?
 恐ろしい怪物?
 身の毛もよだつホラー作品?
 今まで見たことのない、ありえない表現?

 何でもいいです。あなたには確かに「こういうものが見たい」というイメージがあったはずです。
 実際に紙に書いてみたり、声に出したりするとより効果てきめんです。

 それを大事にしてください。また、その作品を評価してくれる人を大事にしてください。
 価値観の合う仲間と交流し、技術を高め、褒め合い、時に意見を交わし、術師としての道のりを楽しんでください。

 そうすれば、いつの間にか評価もフォロワーも自分自身で満足できる数になっています。
 あるいは、ある日突然爆発的にその才能が認められる日が来るかもしれません。先人たちは皆、自分の道のりを大事にしてきた術師なのです。

 あなたはAI術師になり、自分の頭の中のイメージを他人に伝えることができる技術を手に入れました。それはとても素晴らしいものです。

 焦りは禁物です。
 そして、あなただけの旅路を楽しんでください。

4.著作権について


 最後に、note公式のヘルプ記事に著作権についてのとても良いまとめがありましたので、リンクを貼っておきます。

 AI術師のモラルについて考えるとき、著作権は切っても切れない関係があります。
 知っておいて絶対に損はしませんので、これを機会に目を通しておくと良いと思います。

▼創作を後押しする著作権の考え方


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