バナナワニは今日もいる【今日のgood&new】
「バナナワニは、バナナですか?ワニですか?」
大学1年時の最初の講義で、教授が学生に問いかける。謎掛けのような突然の問いに教室がしんとしたところで、「では、ワニバナナだと、どうでしょう?」と続く。
わたしたちは、隣に座っているまだ出会って数日の同級生と互いの解釈を話し合う。ワニか、バナナか。頭の中を緑や黄色の謎の生き物がウロウロしている。
そのあと教授がどんな話をしたかは忘れてしまったが、わたしは妙なうれしさを感じていた。今日からの4年間、ワニか?バナナか?のような問いを何度も渡してもらえるのだろうな、と静かに胸が踊る。
教室には似たようなメンバーが集まっていた。そのあともわたしたちは、アルバイトや恋愛や課題の合間に「なぜ『東京へ』ではなくて『東京に』と書かれているのか」とか「だから『好きです』じゃなくて『好きなんです』になっているのか!」とかそんなことを話しながら大学生活を送った。
言葉に敏感な友人たちと、それぞれの頭の中を見せ合っていた自習室は、大学でもっとも好きな場所だった。
先日、数年ぶりにバナナワニに遭遇した。「苦しい」と「疲れる」はどこが違うのか?みたいなことをXでポロっとつぶやいたら、さとゆみゼミのメンバーの1人からすぐに返信があった。「10キロ走ると呼吸は苦しい、身体は疲れる、メンタルはつらいよね」。たしかに。答えがでなかった問いの輪郭が、少しずつ見えてくる。
次第にほかのメンバーも加わり、次々に見解を飛ばしあう。「3歳の息子に『苦しいってなに?』って聞いた。『痛いこと』だって」。「わが家の9歳にも聞いてみるね」。
あぁ、この感じ。自習室での会話を思い出して画面越しににやにやしてしまう。
人も場所も時間も超えて、またバナナワニに会えたのは、なにかのご褒美かな。今も頭の中で、緑と黄色の生き物を飼っている。
#ウェルビーイング × #ショートエッセイ
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