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時が経っても色褪せない 「エモい」ライブ映像の衝動

何年経っても何回観ても、何度だってエモーショナルになれるライブ映像がある。

曲自体ももちろん大好きな曲なのだが、何よりもそのライブならではの刹那的な「衝動」が映像の中にくっきりと残っているのである。

実際にその現場に参加したわけではないので、思い出の曲と言っていいものかどうかわからないが、初めて観たあの時の感覚は、いまだに何度もフラッシュバックされるのだ。

KID FRESINO / Eazy Breezy @森、道、市場

KID FRESINOを最初に見たのは、雑誌Ollie[オーリー]だったと思う。

まだ現在のアイコン的な坊主ではない姿で、若くてヒップホップな少年の印象だった。19歳でNYに渡米して、本場のヒップホップを仕込んだという肩書きと、誌面でも存在感のある最先端なストリートファッションが目を惹き、曲を聴くようになっていった。

かつてはFla$hBackSという3人組のクルーで活動していた。現在もトラックメイカー兼プレイヤーとして活躍するJJJと、Febb、KIDという、全員がトラックメイクもMCも出来る実力派なクルーだった。

しかし、Febbは2018年2月にこの世を去る。このライブでのこの一曲は、彼の死後にKIDが想いを馳せながら歌ったワンアクトである。最後のsee yaの歌詞では天に祈るような視線を見せ、Febbに対する弔いを感じる。

KIDは途中でFla$hBackSを脱退している。真相は分からないが、仲がうまくいかなかったという話もある。このEasy Breezyの歌詞を辿ると、3人から1人になり、それでも続く人生の中で、一人で続ける覚悟と、そこに対しての楽観を感じる。

Lifeは短くないぜ ただそんなに長くもないって
明る日のshineを求めて 徘徊するboy who I am

2018年は自分にとっても転機となったタイミング。悩みながらも一つの選択をするとき、このKIDと同じ「覚悟」と「楽観」の想いを噛み締めていた。

SANABAGUN. /  WARNING @渋谷路上

東京に来た一年目の夏、フェスでSANABAGUN.を見たときは最高に興奮した。

彼らのライブパフォーマンスには、こだわりとエンタメが詰まっていた。音楽って、ライブってこんなに楽しくて最高なんだと、フェスの中の短いパフォーマンス時間であれど、圧倒的に胸に刺さった記憶が蘇る。

彼らの原点には渋谷でのストリートパフォーマンスがある。この映像も、彼らの代表曲の一つである「WARNING」を披露しているシーンで、メジャーデビューする何年か前の映像だ。メンバーも初期メンバー。今や、キーボードもベースもギターも変わってしまって、すっかり新しいバンドになっている。

ジャズシンガーである高岩と、ラッパーの岩間の2MCが特徴的なバンド。本来はこの曲も二人で歌うサビと、岩間のラップで構成されているが、このライブでは高岩は全く歌わない。それどころか、途中から突然出てきてキュートな横ノリステップを披露するのみである。彼らの真骨頂である、ライブ感の強さがそこにはあるのだった。

東京に来て何年経っただろう。SANABAGUN.の歴史は、ちょうど自分の社会人人生と並行していて、胸を熱くするものと、沈ませるものがある。これからももちろんファンであることに変わりはない。でも、あの時ぐらい、SANABAGUN.を最高だと思える時間は、もう2度と戻らないのだろう。

踊ってばかりの国 / boy @りんご音楽祭

人生で一番繰り返し見たライブ映像は、間違いなくこのboyだ。

サイケデリックロックはヒッピー文化とともにアメリカで生まれた60年代の音楽だ。自然に回帰する、ゆるっと生きるカウンターカルチャーとして一時代を形成したヒッピーと結びつき、ドラッグや覚醒剤を打った時の、浮遊感やエキセントリックな世界観を表現している。

元々全くもってこのジャンルの音楽が好きなわけではない。踊ってばかりの国のフロントマン下津がまさにヒッピーの服装で活動しているときは、目にも止めたことのないバンドだった。

でもこのライブ映像は強烈に惹きつけられるものだった。

どこか不安定で、青春っぽさが滲んでいて、懐かしいサウンド。エモい気持ちをとてもつもなく掻き立てられる曲で、おそらくこれから歳を重ねるごとに、もっと沁みる曲になるのだろうと思う。


思い出の曲というのは、その曲を聴くと強烈な思い出が浮かび、具体的なエピソードとともに、懐かしい気持ちになれる曲が普通だろう。

ただ、古い記憶に結びつかなくとも、これから何度も繰り返し聴いて、強く心を占有するであろう曲もまた、強烈な「思い出の曲」なんだと思う。

#思い出の曲
#チルミュージック


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