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父からの本…

お盆だったので、父のことを少し思い出していた。…仕事で忙しかった父には、子供の頃はあまり顔を合わせる時間がなかった。
だが、リビングの書棚には子供向けの本を買っておいてくれてあった。読んでもらったことも多分なかったし、読みなさいとも言われなかったけれど。

小学校2年位になって、誰もいない部屋で、なんとなく分厚い本を手に取り、頁をめくり活字を読み進められるようになっていった。毎日、本の続きや、次の新しい話に進むのが楽しかった。本というのは楽しい、という感覚を覚えた。

ところで、そんな児童書に出てくる外国のお話には、森がよく出てきたように思う。森ってなんだろう、どこに行けばあるのだろう、子供心にそんな疑問を持った。そして大人になってもずっと持ち続けているように思う。日本の木々は林や、山の風景である。

森には、単純に木々があるだけではない。子供心に感じた森の精のような、森の住人がいる、そんな場所だと感じる。…地球は元来、陸地の多くは森に覆われている。海と森と砂漠と氷。(今は建造物の街や人の営利がだいぶ森を遮っているだろうが)…

…森に住む。人は森に住むことで夜の影を知り、他の命あるものの息づきを感じ、自分には計り知れぬ存在への敬虔さや恐れや、潤いのある想像を培ったのだろうか。今森を歩きたい。父が幼い私に置いていった本を思い出しながら、大事な時間を歩いていくように。

#エッセイ #詩 #現代詩

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