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ユーザー企業とベンダー企業の関係性で考える、日本のIT人材

Arentが考えるDXについて連載している本シリーズ。
今回は既存産業におけるIT人材、ユーザー企業とベンダー企業の関係性について解説していきます。

まずはこちらの図をご覧ください。

DX白書2023

これはIPA(独立行政法人情報処理推進機)発行のDX白書2023で示されたアメリカと日本のIT人材の所属別の割合を表した図です。
DX先進国のアメリカと比べて、日本は圧倒的にユーザー企業(IT企業以外の事業会社)にIT人材が不足しています。
ではユーザー企業の社内システムは誰が開発しているかと言えば、SIerと言われるベンダー企業です。
この役割分担が日本のDX推進の足かせのひとつと言われています。

分担することで共倒れ。デジタル時代の敗者に

ユーザー企業とベンダー企業は、現状ではお互いが利用し合うことでメリットを享受し合えており、一見するとよい関係性に見えますが、今の関係性のままだとバリューアップDXを実行できない「低位安定の関係」です。この現状が打破できないと、両者ともにデジタル競争の敗者になるのは免れないとDXレポートでは指摘しています。

デジタル時代のユーザー企業とベンダー企業の理想の関係

DXの本質であるバリューアップDXを実現するには、お互いが価値創造へと歩みを進め、アジャイル開発などによって事業変化にタイムリーに対応し、顧客体験の迅速な向上を続けることが不可欠です。

これによりユーザー企業とベンダー企業の垣根がなくなり、高位な伴走企業になれるとDXレポートでは示しています。

DXレポートではデジタル産業の構造と企業類型を以下に分類しています。

デジタル産業の構造と企業類型

これがどういうことかと既存産業の①②について具体的に説明します。

①企業の変革を共に推進するパートナー
ユーザー企業、ベンダー企業共に双方に変革を推進するパートナーとして信頼関係を築きましょう。
従来のビジネスモデルではユーザー企業がベンダー企業へ開発を丸投げし、ベンダー企業は言われたことだけを行い、より良い提案を行わずにいました。
今後はお互いを企業の変革を共にするパートナーだと認識を改め、DXは「コストカット・業務効率化」のために行うことではなく、「バリューアップ(収益を上げる、企業価値を上げる)」のために行うことだといい加減思考を切り替えましょう。

②DXに必要な技術を提供するパートナー
①のように両社は信頼関係を築き、ユーザー企業は自社のコア技術やノウハウをベンダー企業へ提供し、ベンダー企業は開発に必要なIT知識をユーザー企業に提供しましょう。これを行うには従来のウォーターフォール型の開発では難しく、アジャイル型の開発が必須となります。

低位安定の関係脱却を阻む3つのジレンマ

ではなぜこのような低位安定の関係になっているかというとユーザー企業、ベンダー企業それぞれに以下のジレンマがあるからです。

ユーザー企業のジレンマ

1.目先の業績が好調のため変革に対する危機感がない。
投資体力があるうちに変革を進めていくことが重要であるが、危機感が高まったときはすでに業績が不調であり、変革に必要な投資体力を失っている。 

2.人材育成のジレンマ
技術が陳腐化するスピードが速く、時間をかけて学んだとしても、習得したときには古い技術となっている。即座に新技術を獲得できる人材は引き抜かれてしまう。 

DX白書2.1

ベンダー企業のジレンマ

1.ビジネスのジレンマ
受託型ビジネスを現業とするベンダー企業が、ユーザー企業のデジタル変革を伴走支援する企業へと変革しようとすると、内製化への移行により受託型ビジネスと比べて売上規模が縮小する。また、ベンダー企業がユーザー企業をデジタル企業へ移行する支援を行うことにより、最終的には自分たちが不要になってしまう。 

DX白書2.1

繰り返しになりますが、このまま低位安定の関係を打破できないと、両者ともにデジタル時代の敗者となることは結論付けられています。


まとめ

こうしたジレンマを打破してDXを進めるためには、企業はITは「コストカットのためのコスト」ではなく「バリューアップのための投資」と腹をくくり、現行ビジネスの維持・運営(ランザビジネス)から脱却し、価値創造型ビジネス(バリューアップDX)へと舵を切りましょう。

次回は、バリューアップDXに欠かせない、アジャイル開発について解説していきます。

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