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キョウソウのまちづくり

令和2年12月のある平日のお昼、三河安城ツインパークでは、いつもとはちがう光景が広がっていた。大きなテントが設置され、その中では温かいコーヒーを飲んでくつろいでいる人の姿や、PCを開いてリラックスして作業をしている人の姿が見られた。
「公園で、デイキャンプを。」
この取組みは、安城市で活動する団体(三河安城商店街振興組合株式会社 カンドタカメNPO Mieru-DaProject三河安城まちかどネットワークlink)と安城市が協力して実施した、公共空間の活用による社会課題解決を目的とした「まちをつかう」社会実験の一つである。この取組みの仕掛け人のひとりである、安城市職員(都市整備部都市計画課拠点整備係)前田晃佑さんにお話を伺った。

前田さん

みんなでまちをつかう=まちづくりの戦術

取組みがはじまる前の、三河安城ツインパークがあるJR三河安城駅周辺では、まちびらきから30年以上が経過し、公共空間の劣化や、都市施設の陳腐化が始まっていたという。また、居住者や就労者が多く、公共空間が一定規模以上あるにもかかわらず、それらを継続してつかう仕組みがなく、人が集まって居心地がよく滞在できるまちになっていないという課題があった。そうした課題を解決するために始まったのが、「三河安城パワーアップ再生プロジェクト」である。このプロジェクトは、「まちをつかってからつくる」というまちづくりの進め方のもと、今あるまちを、活動者が心地よくつかい続けられ、人々が居心地よく滞在できる空間へと変えることを目標とした取組みである。その一環として、「公園で、デイキャンプを。」の取組みが行われた。デイキャンプの他にも、イルミネーションの展示や、eスポーツ大会実施等、まちをつかう取組みが展開され、継続してつかうため、あるいはより豊かにつかうための都市機能のあり方(課題・必要性)を目指した取組みとして「まちがつかわれ」はじめている。
新型コロナ感染拡大により、当初予定していたイベントが実施できなかったり、取組みのターゲットとしていたオフィスワーカーがテレワークになることでマーケットが崩壊するといった影響を受けたそうだ。しかし一方で、企業のテレワーク状況を把握し、それを題材に活動者同士でオンラインミーテイングにより活動内容を考える取組みを行った。新型コロナの感染拡大という、想定していなかった困難を共有することで、より一層地域の結束が固まったのではないだろうか。

NPO Mieru-Da Project(プレイヤー)

つかう.meet実施状況

株式会社カンドタカメ(プレイヤー)×ホテルグランドティアラ安城(ステークホルダー)

地域の取組みを支援し、地域の一員として取組む

「まちをつかう」取組みを後押ししているのが、平成31年の安城市都市計画マスタープランの改訂だったと前田さんは話す。市の都市づくりの目標が検討された当時、20年、30年先を見据えた情勢変化に柔軟に対応できるまちづくりには、「みんなでまちをつかって、まちの質を高めるしくみ」が必要であるということが議論され、その結果、「みんなでまちをつかう!市民とともに育む持続可能な都市づくり」を行うことが目標のひとつとして位置づけられ、まちをつかう取組みを推進するための政策が整備された。
こうした政策に基づき、前田さんは、行政職員として、公共空間の貸出制度をはじめとする新制度を創設や、オープンデータ活用に向けたフォローを行うことにより、地域の活動者がまちをつかうための支援を行っている。
また、行政職員として活動者を支援するだけでなく、自身が趣味とするプログラミング技術を活かし、活動のデータを収集・みえる化する「NPO法人ミエルダプロジェクト」を仲間とともに設立し、データ分析に基づく活動者のマーケティング支援を行っている。このように自らも地域で活動する人になることが、まちで活動する方々と同じ目線で地域に溶け込むことができ、一緒に取組みを行いながら人間関係をつくっていく(信頼関係を築く)ことにつながると考えている、と話してくれた。

優先3_where(動画不可の場合)

よりそう覚悟、はさまれる覚悟

前田さんが「まちをつかう」取組みを進める中で、庁内では「何をやっているの?」という目で見られることも実際あったという。行政職員として地域の活動を支援するにあたり、前田さんが重要だと考えていることは、「地域に寄り添う覚悟と、行政職員と活動者との間に挟まれる覚悟」と、「全国でエリアマネジメントに取組んでいる行政同士がつながること」だそうだ。「まちにはそれぞれ固有の悩みがあり、多様なエリアマネジメントのあり方がある。だからこそ、人づくりのしくみ等、取組みにおけるノウハウを共有し、情報交換を行うことで、それぞれのまちで気づきが生まれると思う。」と、話してくれた。

地域主導のエリアマネジメントを推進・継続していく上で、伴走支援の立場である行政においては、政策及び体制変更への対応、財政の確保、組織間連携等、多様な課題がある。今回のインタビューから、そのような課題を抱えながらも、地域の主体的な取組みを後押しし、キョウソウのまちづくりを実現するためには、まちへの思いと、その思いを共有する人とのつながりをもつことが重要であると感じた。

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本研究会は、以下をテーマとし、エリマネの人材育成について検討する。 ・エリアマネジメントに関わる法律・制度及び政策の変遷の整理 ・エリアマネジメントの実践知の体系化と担い手の役割の規範化を通じた個別解の一般化 ・個別解の一般化・応用化による人材育成のプログラム化