うみやまのあいだ、あめつちのからだ

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うみやまのあいだ、あめつちのからだ

#iwate #morioka 「うみやまのあいだ、あめつちのからだ」 https://umiyama-ametsuchi.com ・『ひとしずく』幻冬舎、今明さみどり名義 ・『ひとひと』文芸社、うみやまのあいだ、あめつちのからだ名義

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曲線(自然物)について

相棒犬との山散歩。 私は犬より多くのものを拾うと思う。今日は何かの鳥の巣を拾った。 いや、本当は相棒犬の方がもっといろんな匂いを拾う。 彼女をとりまく世界の全てのあれこれから。 ↓ 裏側 私が拾った鳥の巣は、私の手の平よりも大きく、 断絶された曲線はもう少し先へのびるだろうことを示していた。 仮にくずれる前の完成形の巣を拾ったとすれば、 間違いなくスズメやマヒワの巣よりは大きいだろうが(このサイズは自分の庭でも毎年拾う) その正解はわからない。 他にも、1

    • 全う(食べること)

      足を縛られ吊り下げられたニワトリの 頸筋は、ことの異常を察してか羽毛が毛羽立ち皮膚が隆起し 素人の私でもわかった。ああ、あそこに頸動脈があるのだな、と。 こどもを含めた人間たちの好奇、不安、憐憫の眼差しに晒されて その場は一体となり、Kさんの小刀がぶすりとそれを断ち切ることを待ち望む空気であった。 この輪から少し遠く離れたところでは、Kさんの奥さんが 一心に手を合わせて目をつぶり念じていた。感謝か、謝罪か。 この目の前のニワトリをこれから食する私たちにも まず

      • 馬と鐵

        20代の頃、鉄鉱石から鉄をとり出すという小さな行事に参加したことがある。 いわゆる「たたら製鉄」で、主催の方お手製の練炭サイズの炉に鉄鉱石やら何やらをつめて 一緒に燃やした。 実際のたたら製鉄では粘土製の炉を使うのだがこのときはそうではなさそうだったことや、 鞴(ふいご)がなかったので、うちわで酸素を送り込むものの思ったように火力が上がらなかったことを記憶している。 それで、想定以上に時間がかかり、ようやくとり出してみればそれは私が思い描いていた鉄ではなかった。

        • 作家インタビュー(後編)

          新刊JPさんより、作家インタビューをしていただきました! こちらは後編です。 宮沢賢治さんにも触れられております…大変光栄です。 読んでいただけたら嬉しいです。 岩手県出身の作家が語る、日常生活に根付く「宮沢賢治」という存在 - 新刊JP (sinkan.jp) 新刊JPさま、どうもありがとうございました! Amazon ひとしずく | 今明 さみどり |本 | 通販 | Amazon 楽天 楽天ブックス: ひとしずく - 今明 さみどり ひとひと ひとひと | 作・

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        • 犬の字
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        • からむし日記
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        • ワタシをよんで
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        • 犬に「あした」を覚えさせる
          うみやまのあいだ、あめつちのからだ

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          作家インタビュー(前編)

          新刊JPさんより、作家インタビューをしていただきました! こちらは前編です。 読んでいただけたら嬉しいです。 新刊JPさま、どうもありがとうございました! Amazon ひとしずく | 今明 さみどり |本 | 通販 | Amazon 楽天 楽天ブックス: ひとしずく - 今明 さみどり ひとひと ひとひと | 作・絵:うみやまのあいだ、あめつちのからだ |本 | 通販 | Amazon ©うみやまのあいだ、あめつちのからだ https://umiyama-amets

          【先読み】うみやまのあいだのひとしずく③

          今明さみどり『ひとしずく』(幻冬舎、2023年2月発売) noteに児童小説を書き続けていたら、本になりました|うみやまのあいだ、あめつちのからだ|note その前身となった『うみやまのあいだのひとしずく』の冒頭数ページを三回に分けてご紹介します。 ①はこちら→【先読み】うみやまのあいだのひとしずく①|うみやまのあいだ、あめつちのからだ|note ②はこちら→【先読み】うみやまのあいだのひとしずく②|うみやまのあいだ、あめつちのからだ|note 私たちのそば、どこにでもい

          【先読み】うみやまのあいだのひとしずく③

          【先読み】うみやまのあいだのひとしずく②

          今明さみどり『ひとしずく』(幻冬舎、2023年2月発売) noteに児童小説を書き続けていたら、本になりました|うみやまのあいだ、あめつちのからだ|note その前身となった『うみやまのあいだのひとしずく』の冒頭数ページを三回に分けてご紹介します。 ①はこちら→【先読み】うみやまのあいだのひとしずく①|うみやまのあいだ、あめつちのからだ|note 私たちのそば、どこにでもいる水滴の一粒〈ひとしずく〉が主人公の物語です。 はじまり、はじまり。 改稿版・続きはこちらから。

          【先読み】うみやまのあいだのひとしずく②

          馬搬

          顔をはたく蔓や枝、脚にひっかかる藪や柴を予め切るなどして除けておき、 山中の丸太を運び出すために人一人、馬一頭が安全に通れる分だけの道をつくる。 今よりほんの少しだけ昔の、私の祖父母やその上の世代の人々にとって、山は宝。 必要以上に道は広げず、必要以上に山を傷つけぬ。 そのために、人馬が通る道の幹や根には柴や垣などで覆いをつくることさえしていたというのだから。 あるいは、他者にその山の道を知られぬための工夫とか。 馬の糞尿を肥しにして、たった一年ほどでその道は元に

          【先読み】うみやまのあいだのひとしずく①

          今明さみどり『ひとしずく』(幻冬舎、2023年2月発売) noteに児童小説を書き続けていたら、本になりました|うみやまのあいだ、あめつちのからだ|note その前身となった『うみやまのあいだのひとしずく』の冒頭数ページを三回に分けてご紹介します。 私たちのそば、どこにでもいる水滴の一粒〈ひとしずく〉が主人公の物語です。 はじまり、はじまり。 改稿版・続きはこちらから。 『ひとしずく』 Amazon ひとしずく | 今明 さみどり |本 | 通販 | Amazon 楽天

          【先読み】うみやまのあいだのひとしずく①

          noteに児童小説を書き続けていたら、本になりました

          この度、今明さみどり名義で、 幻冬舎様より『ひとしずく』を出版します! 早くて今週~2、3週間のちには全国書店に置いていただけるようです。 もちろん、アマゾンや楽天ブックスなどからも購入可能です。 お話をいただいたのは、2021年の暮れでしたが さらに遡ればきっかけは2020年1月に うみやまのあいだ、あめつちのからだ名義で出版した『ひとひと』(文芸社)に目を留めていただいたのがきっかけだったそうです。 私個人としましては、『ひとひと』を出版した月の翌月から 新型コロナ

          noteに児童小説を書き続けていたら、本になりました

          本を出版します

          メールが届いていたのは昨年のちょうど今頃だ。 コロナ流行前に出版していた『ひとひと』から縁がつながった。 思えば稀有でありがたいことだ。 noteやHPでの文章も読んでいただいていたらしい。 以降、自分の原稿にはもちろん全力を注いだが、挿絵やカバーデザインについても「ぜひこの方にお願いしたい…!」とお声がけした面々と一緒にお仕事ができ、とてもありがたい一年だった。 そしてようやく、昨年秋から何度も何度も目を通してきた完成ゲラを満を持して入稿に送り出した今日。 こういうと

          葉の名の犬⑤ コミュニケーション

           コミュニケーション   二月二十二日  犬は人になれないし、人は犬になれない。  犬は人ではないし、人は犬ではない。  犬は犬。人は人。生物種が違う。ある意味では究極の他者。 そのあいだのルールやことばは、ふたり(一人と一頭)で互いに関係を築き上げながらつくっていくしかない。  どうやって会話をするのか。いつかは通じ合えるだろうという前提だけを頼りにして。  互いの共通の認識、ルールやことばをともに錬成し、絆を深く強くしていく過程はなかなか容易なことではない。

          葉の名の犬⑤ コミュニケーション

          葉の名の犬④ 幸福 いつかの手記より

            幸福 いつかの手記より  早朝、おそらく五時半を過ぎたあたりだろうか。目を覚ました赤犬が、私が眠っているソファのそばに移動してくる足音がして、くんくんくんくん私の顔の匂いを嗅ぎに来た。硬いヒゲが顔中をかすめてちくちくする。尻尾はパタパタパタパタ際限がなく、朝から何て嬉しそうなこと。私は目を閉じたまま「おはようさん」とか「起きたのかあむにゃむにゃ」とか口先だけで赤犬の機嫌をとりながら、眠りを断行しようとする。  赤犬からすれば、五年連れ添った主人の二度寝の悪癖は想定内

          葉の名の犬④ 幸福 いつかの手記より

          葉の名の犬③ 穂の名

             穂の名  ところで、こうして犬に関するつれづれを忘れずにしたためようと思いついた以上、私の相棒犬についてもきちんと触れなければならないだろう。  葉の名の年長にあたる私の相棒犬は、赤い毛色の雌犬で、一緒に暮らして早五年が過ぎる。  彼女には、穂を冠する名を与えている。  春夏秋冬。朝昼夕方月明かり。この地の美しい田の風景を、私に代わり物語る名。 二月二十日 メモ ・葉の名。軟便がつづく。  やせっぽちなので少し太らせてやりたいと思い、朝晩の飯の量を多めにし

          葉の名の犬② 群れ

          群れ  二月十九日  今日は、新しく加わった葉の名の犬と、先住の相棒犬との世話とで私の一日が終わった。  ご飯、散歩、庭での排泄や室内でフリーにして生活すること。これらすべてを二頭同時にやれたら楽なのだが、相性の問題でそれはまだできない。なぜかって、相棒犬の立場からすればそりゃそうだろうと思う。突然若い犬が現れて、自分はまだ了解していないし事態についていけていないのに、飼い主の私が勝手に連れて帰ってしまったのだから。「侵入者!」。これに尽きる。 結果、すべての世話を代

          葉の名の犬①

          葉の名の犬 二月十八日 どういう巡り合わせなのだか、里親が見つかるまでの期間限定ではあるが、大型犬をもう一頭引き受けることになった。早くて一、二ヶ月。長くて半年以上はこの家にいるだろうか。けれど、「飼育放棄された」に加えてその他ウンヌンこれまでの経緯を聞いてしまえば手を差しのばさないわけにはいかなかった。こういう場合、決めるべき覚悟より情が先立つというものだ。    昼、予め待ち合わせていた公園で、私の相棒犬と会わせてみたが相性はまずまず。最良ではないが最悪でもない。