現代語訳 論語と算盤 渋沢栄一 (訳:守屋淳)

印象に残った部分の引用と、それに対するコメントを残していきます。

・実業とは、多くの人に、モノがいきわたるようにする生業なのだ。これが完全でないと国の富は形にならない。国の富をなす根源は何かといえば、社会の基本的な道徳を基盤とした正しい素性の富なのだ。(中略)ここにおいて『論語』と算盤というかけ離れたものを一致させることが、今日の急務だと自分は考えているのである。
→ビジネスは元来人々・国を豊かにするものである。一方で人をだまして自分が儲かるためだけに行うことは出来る。だから、「論語」=道徳の手本に基づいたソロバンでなければならない。人から奪うことや、だまし討ち、蹴落としを考えると、必ずしっぺ返しを食らう。競合じゃなくて顧客を見よう。上司じゃなくて顧客を見よう。

・(争いは是が非かについて)私自身の意見としては、争いは何があっても無くすべきものではなく、世の中を渡っていくうえでもはなはだ必要なものであると信ずるのである。
→常に周囲に敵を置き、それに勝つんだという気概を持つこと。その敵が自分の競争心を保ち続けられる相手かどうかも重要だろう。今の自分はどうしても「敵は自分」と考えて外の世界から目を背けがちになるけれど、リアル敵を想定するのも大切だ。例えばあいつ…

・(常識とは何かについて)「智、情、意(知恵、情愛、意思)」の3つがそれぞれバランスを保って、均等に成長したものが完全な常識であろうと考える。さらに言葉を変えるなら、ごく一般的な人情に通じて、世間の考え方を理解し、物事をうまく処理できる能力が、常識に外ならない。
→物事を見分ける知恵、人間の心を理解してバランスを保つ情愛、知恵と情熱を対象に注ぎ込む意思。まさにこの3つ大事にしたいし、これがそろっている人は素敵だなと思う。自分は特に意思がなくなりがち。意思がないときって慢性的な不完全燃焼感に苦しむ。

・『論語』には、「人々がいて、郷土のお社があるような環境であれば、現実から十分に学ぶことができます。どうして書物を読むことだけが、学ぶといえるのでしょう」との一説がある。(中略)要するに、普段の行いが大事なのだ。(中略)すべての人に、勉強を続けることを希望するのと同時に、生活の中から学ぶ心がけを失わないように心がけてほしいと思うのである。
→「さあいまから勉強するぞ!」というときだけ勉強するのではあまり意味がない。毎日の生活の中で感度を高く持ち、たくさん活動をして知見を広げ、その中で学びを深めていく。

・どんな仕事でも、近頃の流行語でいえば、「趣味」―ワクワクするような面白みを持たなければならないという。(中略)人が何か、自分の務めを果たすというときには、この「趣味」を持ってほしいと強く思うのである。(中略)仕事をする際、単に自分の役割分担を決まりきった形でこなすだけなら、それは俗にいう「お決まり通り」。ただ命令に従って処理するだけに過ぎない。しかし、ここで「趣味」をもって取り組んでいったとしよう。そうすれば、自分からやる気をもって、(中略)理想や思いを付け加えて実行していくに違いない。
→「仕事に前向きに向き合える」か?命令に従って処理するだけでなく、自分の心に「趣味=わくわくするような面白み」を持つ。そうすれば、「この仕事はこうしたい」という思いが生まれ、強い意志をもって成果を出すことができる。こういう人が増えてほしい。世の中のすべての人が仕事大好き人間になる必要はないと思うけど、仕事は(総じて)面白いと感じる人が増えてほしい。人生の長い時間を費やす仕事について、ただ辛いものと感じながら生きるのはつらいと思う。

・もし大いなる楽しみと喜びの気持ちをもって事業に関わっていくなら、いかに忙しく、いかにわずらわしくとも、飽きてしまったり嫌になってしまうような苦痛を感じるはずもないだろう。ところがこれとは反対に、まったく楽しさを感じず、いやいやながら仕事をする場合だとどうだろう。必ず退屈を感じるようになり、やがて不満を覚えて、最後には自分がその職を放り出す羽目になるのが自然の勢いではないだろうか。
→同上です。自分の人生をいかに充実させるかという点で、仕事に対する向き合い方は大事。その結果として得られるお金や名声ももちろん大事だけども、仕事の楽しみが感じられなければそれも長続きしないだろう。


・「成功と失敗は、自分の身体に残ったカス」
→この表現すごい。短期的に見れば、成功すべきなのに失敗する、失敗すべきなのに成功することはよくある。でも長期的に見れば、善悪の差は明確に浮かび上がってくるもの。


長い人生の中で、仕事に対してどのように向き合えばよいか?について示唆に富む内容がたくさんでした。知恵と情愛のバランスをとりつつ、意思を注ぎ込める仕事を求め、長期的な成功を求めて淡々と努力を続けることを大切にしていきたい。





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