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設計料について

設計料について様々な意見をいただきますので明記しておきます。

大体工事予算の10%前後とは聞いた事があるけどどうなの?もっと安くならない?
そんな言葉も聞くこともありますが設計者も給料で生計を立てている皆さんと同じで設計者は施主からいただく報酬によりご飯を食べています。

施主に対してなんとか希望に見合った良い建物をと思い皆頑張っているのです。あまりにも現実的でない要求を突き付けた際には逆に設計事務所側から断れることもあるでしょう。

お互いに節度をもってコミュニケートしたいものです。

ちなみに私達の設計料もおおよそ総工事予算の10%を基本に考えています。

参考までに、設計料の算定の基礎は平成31年国土交通省告示第九十八号によりしっかりと明記されています。

少し設計料に関して記載してみます。

※以下添付の書類は全て、建築設計7団体が2019年2月~3月に全国で開催した説明会に使用した告示のガイドライン「業務報酬基準検討委員会」から抜粋したものとなります。

1.算定方法

設計料の計算方法は、「実費加算方式」と「略残方式」の2つの方法があります。

まずは実費加算方法です。

実費加算方法:業務経費(直接人件費、特別経費、直接経費、間接経費)、技術料等経費及び消費税に相当する額を個別に積み上げた上で合算することにより算定する方法

実費加算方法

実費加算方法ではこれら各種経費の内容が別に細かく規定されておりそれを積み上げていく方式です。積み上げ形式となりますので明確性は出てくる形式となります。

ただ、設計事務所の仕事はその業務によって様々な形、流動性があり、また、設計行為とは二つとして同じものがない個別性の高いものであります。同時並行で様々な業務が展開されているという側面もあります。結果、この方法は煩雑性を伴うものとしてかねてから見られてきました。
実際に活用できている設計事務所も少ないのではないでしょうか。

そのため、国交省では、複雑性を伴う実費加算方法の他に略算方法を設けています。実費加算方法における直接人件費・直接経費・間接経費を簡易的に算定する事ができる方法として定めています。
新築案件の場合は基本僕もこちらを参考にしています。

設計料の算定方式も時代に合わせ変更されていっています。最近では平成31年にも一度改正があり、この略算法も見直されてきています。

以下略算方式についてその算定方法について見ていきます。

2.略算方法

略算方法:略算法において建物の用途別・規模別に定めた標準業務量等をもとに、直接人件費、直接経費、間接経費を簡易に算出し、特別経費、技術料等経費及び消費税相当額を合算して算定する方法

以下詳細を見ていきます。

略残方法

※略算方式は最後に記載されていますが新築に限定されます。

上記の表にあるように略算方式では、実費加算方法でいうところの「直接人件費、直接経費、間接経費」を直接人件費を2.1倍することで略算しています。

3.算定方法実例

では実際に以下のモデルを参考にして計算してみましょう。

例えば、100㎡の住宅。しっかりとした図面を描き設計した住宅を考えてみます。

告示別添二では建築物の類型別用途一覧表を示しており、一般的に想定される標準業務量に差異が少ないと考えられる用途をグルーピングしています。各項目ごとに標準的な設計等が想定される第1類複雑な設計等が必要となる第2類に区分し、標準業務量に差を想定しています。

建築物の類型

上の表を見てみると事務所建築は「十三 戸建て住宅(詳細設計及び構造計算を必要とするもの)」に分類されているのが分かります。標準的な建物を考えているため第I類に分類されます。

分類がわかったところで次はその業務量を調べてみます。

告示別添三では、告示別添二の用途区分や建築物の床面積に応じた標準業務人・時間数を略残表として示しています。100㎡の住宅を考えていますのでその欄を見てみます。

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設計から工事管理を行う業務を考えますので上の数字の縦欄全て足すことでこの規模の建物の業務時間単価が算出されます。今回の場合は710+140+110+180+30+38ですので1,208(業務人・時間)となる事がわかります。

この数字に人件費単価を掛け合わせます。人件費単価も以下の表により掲げられています。

技術者単価

今回の場合、私の歴で考えてみますと一級建築士取得後8年以上13年未満に該当しますので技師(A)の48,700(円/日)となります。一日8時間労働と仮定すると48,700/8=6,087.5(円/時)をかけることとなります。

よって直接人件費は1,208×6,087.5=7,353,700円となる事がわかります。

業務報酬=直接人件費×2.1+特別経費+技術料等経費+消費税相当額となってきますので仮に特別経費、技術料等経費、消費税を合わせない段階で

すでに業務報酬=7,353,700×2.1=15,442,770円となってきます。。。

上記のように国土交通省の算定基準に依るとビックリするくらいに大きな金額になってしまいますが、このような基準が国の指針として事実としてあります。

報酬の額の大きさは責任の重さであると思います。
それほどの責任を国が認めてくれているわけです。
ただ、それと実際の社会の構造は必ずしもあっているとは限りません。
これだけの金額をこれから建築を建てようと考えている人からはもらえるわけがありません。

住宅ですとこの金額の80%オフ!(なんて良心的な数値!)あたりが設計料10%に相当してくる形となってきます。

弁護士と医者同様、僕たちも、国の基準通りの報酬がいただけると嬉しいですが、かなり厳しい気もしますね。

ただ、それだけの責任と価値を国が認めている仕事であると言うことだけは心から皆様に知っていただきたい限りです。
(これは全国で活躍されている設計士皆の声ではないでしょうか。)

設計者も真剣に施主の方々と足並みを揃えて歩んでいけるよう考え、大きく調整しながら、日々業務の方行っているのです。

僕の事務所では新築住宅ですと、場合にもよりますが最低設計料は250万円と決めて業務の方行っています。
規模が小さくなると言っても労力が減るわけでもなく、また、小さな建築であるほどコストコントロールには逆に大きな労力もかかってきます。
業務に手を抜くわけにもいけませんので。
お施主様にはご理解いただき、良好な関係を築いていきたいものです。

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