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【12週目】 今週、社内で話題になった事例。(コンワダさん)

こんにちは、株式会社アーキロイドの津久井です。

 最近はもっぱら、「毎週金曜日に出しているコンワダさんを12/31の金曜日に書くかどうか」、を悩んでいる筆者です。

さて、今週も社内で話題になった事例からいくつかを紹介します。バックナンバーはこちら

事例1:CityCoins マイアミで流行するMiamiCoin

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【概要】
 8/3にフロリダ州マイアミ市のFrancis Suarez市長がシティコイン(市の独自仮想通貨)である「Miami Coin」の発行を発表しました。Miami Coinは非営利団体「CityCoins」によってサポートされています。CityCoinsはStacks Blockchainを基盤として発行されており、すべての取引はネイティブトークンであるStacks Token(STX)で行われます。

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▲マイニングが始まると、マイナーから転送されるSTXのうち30%が自動的に市のウォレットに入る(画像はリンクより。もとはGIF動画なので、サイトではコインの流れが視覚的にわかりやすいです。)

 市のウォレットに入ったSTXの用途については、行政が決定権を持ちます。法定通貨に換金して自治体の財源とすることも可能です。マイアミ市がMiami Coinから得た報酬はすでに2,100万ドルを超えており、現在の収益ペースを維持できれば、マイアミ市の年間税収4億ドルの1/5に達する予想で、一部を市民にBTCとして配布することを発表しています。マイアミ市長は今後ますます仮想通貨を重用していく構えで、自身もビットコインで給与を受け取ると宣言していますが、現段階ではドルで支給されている他、フロリダ州は自治体が不安定な資産を保有することを州法で禁じている為、法整備も求められることになりそうです。

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▲Miami Coinはテクニカルには市が発行しているわけではなく、もとはCityCoinsのコミュニティが自発的に始めたもの。次にCityCoinsが応援する都市を投票することができる。現在はニューヨーク市でも発行されている。

 マイアミ、ニューヨークに続くシティコインとして、オースティン市も「Austin Coin」を発行することを11/13に発表しました。CityCoinsとの連携については現段階では公表されておらず、また違うスキームが組まれる可能性もあるようです。
 シティコインのネガティブな意見として、収益を上げるために新たな参加者を必要とすることが、一部ではポンジ・スキーム的だという懐疑的な意見もあるそうです。

【この事例について】
 日本でも各地で地域通貨が発行されていますが、当たり前ながら全く性質の異なるものですね。そもそもの始まりがCityCoinsコミュニティによる自発的なもので、市に割り当てるコインが7.1万ドルを超えた時点で、ようやくマイアミ市がその収益の寄付を受け付けることを承認したという経緯があります。そして現在のスキームになったようです。結果的にスキームを見れば30%課税しているかのようにも見えるのですが、やはり個人の所得や企業の利益に対する課税と性格が異なります
 これまでの租税貨幣論では、通貨発行権と徴税権は表裏一体的でした。日本国が「日本円で税を徴収します」というので、国民は三大義務の1つである納税を果たすために日本円を稼ぐ必要がありました。その結果、日本円は国家の裏付けのある法定通貨としての価値が出てくるわけです。通貨発行権と徴税権が一体となった中央管理システムと、分散型の仮想通貨は本来相容れないわけです。しかしマイアミコインは、コミュニティ発足で仮想通貨が発行され、信用と価値を高めた状態で行政が恩恵を授かるという構図が、これまでと全く違うのです。人々がブロックチェーン技術という巨大なコモンを手に入れたことで、行政と市民の関係が、階層はフラットに、ネットワークは強固に、コミュニティ化されていく期待を感じます。
 アメリカの状況がこのような中、一方中国では「デジタル人民元」を2022年2月に発行する予定で、世界で初めて中央銀行の発行する法定デジタル通貨が誕生します。これは普及し始めたデジタル通貨の上に新たな中央集権システムを敷き直す動きと言えます。マイアミの事例と中国の事例、今後どちらが支持を得ていくのか。また日本のように安定性のあるドメスティックな法定通貨のある国がどのような舵取りをしていくのか。このあたりは興味深い点です。

事例2:『AMCI』大手町・丸の内・有楽町エリアのSDGs活動を可視化するツール、Project PLATEAU

【概要】
 大手町・丸の内・有楽町地区(以下、大丸有エリア)を起点に2030年のSDGs目標達成に向けた活動を推進する「大丸有SDGs ACT5」というプロジェクト。アプリを介して、SDGsアクションに対して独自のポイントを付与し、貯まったポイントをSDGsの達成に貢献する商品(資源の有効活用や地域創生につながるようなもの等)の交換等に利用できます。SDGsアクションで貯まったポイントが、SDGsの貢献に使われる、好循環の仕組みづくりを目指しているそうです。

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▲β Version : 0.1.0 実際に筆者も触ってみました。PCのみに対応したサイトです。素敵なバックグラウンドミュージックが流れます。作曲者が知りたい。
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▲「CO2排出削減量」「ポイント数」の可視化
上述のアプリと連携し、まちの活動量を3D都市モデル上に可視化します。
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▲各エリア(大手町、丸の内、有楽町)ごとのSDGs活動の可視化
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▲各活動場所プロット、活動内容と獲得ポイントを可視化

【この事例について】
 SDGsとデジタルツインという、今流行の2つの合流点とも言える事例です。コンワダさんでも度々登場している、PLATEAU(国土交通省が主導する3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクト)の活用事例でもあります。
 WEBで3Dモデルを回転・パンしながら、動的に表示データを変えていけるのは、旧来のレポートのように文字を追い、図版と行き来するのとは全く異なる体験ができます。リッチなメディアの実現だと感じました。今回は情報環境にモデルを作ってその中でデータを可視化していますが、ホロレンズやGoogle Glassのようなウェアラブルで、実際に街中で視界にAMCIの結果が動的に表示される未来も見たくなりました。
 個人的にはSDGsに貢献するとポイントがもらえて、「SDGs貢献商品に交換できる」というサイクルではなく、「表彰される」くらいで十分インセンティブになるといいなと思います。もっとも、SDGsに貢献する商品を配布するという啓蒙の役割も大きいと思います。

事例3:モダン建築クロニクル

【概要】
 モダン建築クロニクルは、京都に点在するモダン建築の年代記(クロニクル)を"声"で届ける音声ガイドアプリです。擬人化された建築の声は、有名声優たちが務めることも注目のポイントです。企画・監修は、京都市京セラ美術館企画推進ディレクターの前田尚武氏。

キャラクターバージョンのトップページ。各キャラクターの衣装は建物の内外装の特徴を反映してデザインされている。
ラーニングバージョンのトップページ

【この事例について】
 日本が世界に誇るアニメ文化、中でも近年の声優人気には目を見張るものがあります。建築好きだけでなく、幅広い層にモダン建築の魅力を伝えるサービスとなりそうですね。
 私たちが公共施設や高層ビルなどの建築物を訪れるとき、その建築の成り立ち(完成時期や設計者、計画の流れ)などを知っていて訪れるという人はそう多くないでしょう。建築は人間が作り得る限り最大の構造物であり、また、長い時間残るものです。建物の新築、改築、解体は、時に周辺環境や行政区全体にまで大きな変化を与えることがあります。だからこそ、後世まで残るという事実を考慮して設計、建設する必要がありますし、これまでのことを知ることも重要です。
 個人的には「モダン建築クロニクル=モダクロ」が「今週、社内で話題になった事例=コンワダ」と、略し方が似ているので、やや意識しています。ここだけのはなし。

事例4:IKEA 家賃99円10平米アパート

【概要】
 IKEAが月額99円のTiny homeを発表し、住人の募集を開始しました。狭小空間におけるIKEA商品のレイアウトと、住人の暮らし方を見せるショールーム的物件のようです。

【この事例について】
 これまでも、都心で専有部が3畳しかない物件などが話題になることも有りましたが、こうした有名ブランドが展開する事例は見たことが有りません。IKEAはライフスタイルを見せて、家具を売るつもりだからこそ採算度外視の家賃設定だと思います。この試みは今後の都心の物件の流行にインパクトを与えるのでしょうか。引き続きウォッチしていきましょう

まとめ

 今週もお楽しみいただけたでしょうか。

 今週は社内で共有される事例数が少なかったのですが、noteで取り上げた事例数はここ数回より多く、必ずしも比例しないと気づきました。10回を超えてもまだ、事例ごとの掘り下げ方や語り方はマチマチで、やり方が定まっていません。定めたいかといえばそんなこともなく、筆者が辛くならないように細く長く続けていきたいと思います。

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 それでは皆様、良い週末を。

「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

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