見出し画像

宿泊記~KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS


■アート作品を収蔵するアートストレージホテルという新感覚


東京に来て最初に宿泊した施設が浅草のNuiだったが、偶然にも(?)今回もスカイツリー近くという似たような立地のホテルを選んでしまった。とはいえNuiは大江戸線蔵前駅のすぐ近くだったが、今回宿泊した「KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS」は同じ最寄り駅から隅田川を越えて徒歩10分ぐらいは歩くことになる。完全に住宅街なので、近いようでいて周囲の環境が全然違う。駅からこれだけ離れてホテルを造るというのは、自社のブランドに相当自信を持っていないとできないだろうなと感じる。

さて、そんなKAIKAであるが確かに一味違ったコンセプトを持ったホテルである。なんとアート作品の保管庫とホテルを融合させた複合施設なのである。アート×ホテルの組み合わせはよく見るが、現代アート作品を収蔵する保管庫を兼ねたホテルはおそらく他にない。
写真で見る作品を囲う金網も気になりながら行ってみることに。

■「KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS」とはどんなホテル?


・主に住宅のリノベーション事業を行っている株式会社リビタが運営するホテルブランド「THE SHARE HOTELS」の施設。全国6都市に9か所のホテルを構え、それぞれオシャレなデザインと作りこまれたコンセプトでなにかと話題になりがち。個人的にはホテル業界の中でも特に勢いのある会社だなと感じてる。

・リノベーション事業メインの会社だけに、展開するホテルはいずれも元々別の用途だった建物をホテルにコンバージョンし、以前の建物の構造を活かして他にはないデザイン性の高いホテルを造り上げている。

・ちなみに京王電鉄が筆頭株主で、1号店は金沢のホステルHATCHi。ここには結構昔だが泊まったことあって、ホステルなのにスタイリッシュできれいな施設だなと感じた記憶がある。

・KAIKAは6階建てで客室数は73室。

・料金はざっくりスタンダードのツインやクイーンベッドの部屋で18,000円~、モデレート約20,000円~、4人宿泊可能なロフトベッドの部屋で24,000円~(4人宿泊で)、42㎡のスーペリアで24,000円~、といった感じ。もっと細かく部屋タイプは分かれているのだが全部書くのはめんどいので省略。

・客室の広さは一番小さいスタンダードクイーンで17㎡、4人部屋は30㎡、一番大きいのがスーペリアの42㎡。部屋の大きさも細かく分かれているので記載したものは一例である。

元々別の用途だった建物をリノベーションする場合、当然既存の建物の躯体を基にホテルを造るので改装と言っても限度がある。構造上客室の広さをきっちり揃えられないので、こんな風に微妙に違う広さや間取りの客室が生まれ、微妙に違う料金ランクを作り管理するはめになったりする。リノベーション施設の弊害っちゃ弊害なのか?

■ホテルっぽくないホテル


大江戸線蔵前駅に降り立つのはこれで2度目。スカイタワーを眺めながら歩き住宅街を抜けて「KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS」へ。

ホテルっぽくないエントランス。

一見してホテルには見えない。どっちかというとアパレルショップっぽい雰囲気の外観。まぁウォークインなんか来るような立地でもないし予約した人さえホテルと分かればなんの問題もないか。

入ると早速アート作品群がお出迎え。

エントランス横にカエル・・・

断っておくと自分にはアートの知識や感性は皆無なのでこの宿泊記でアートに関する話をする気はさらさら無い。ここにこんなアート作品があるよ以上の情報は出てこないので、現代美術に興味がある方はぜひ泊まって自分でCheckして来てください。

エントランスすぐ近くにギャラリーが

施設内全体がアートギャラリーのような感じだが、エントランス横のスペースで定期的にアーティストの個展もやっている様子。今回は原ナビィさんというアーティストの個展をやっていた。当然存じないが後で観に来ようと思う。

現代アートっぽい感じ?

アートを前提としたコンセプトだけにフロントまでの間にも様々なアート作品が置かれているのは流石。普段アートと関わりのない人間からするとこういう風に美術館っぽくない感じの展示をしてくれると有難い。厳かな空気の中でアートを観るのはある種の苦痛に感じてしまうのだ。そういう方、多いんじゃないかな?

フロント前の謎の物体。つい触りたくなるが触れるのは厳禁
アートに囲まれたフロント

フロント到着。なにやら左側に自動チェックイン機らしきものがあるが稼働しておらず右側のフロントで普通にチェックインしてもらう。

スタッフの方はみなさんマスクを着けておられた。当然施設の意向として未だマスク着用を徹底するところはあるが、これだけコロナムードが消えうせた中で全スタッフに着用を義務付けるといよいよ外すタイミング無いと思うがどうなんだろう。まぁホテルに限った話ではないし、どちらが良い悪いとかもないが。

まぁそれはいいとして、こういうホテルにありがちにスタッフのみなさんは若くておしゃれな感じの人たち。
近くのコンビニやら周辺の施設やら聞いて愛想よく答えてもらえる。マップで見て薄々感じていたがやはり周囲は住宅街で、やっているのは個人経営の小さなお店ばかり。大きいお店は浅草の方まで行かないと無いらしい。

SHARE HOTELSのコンセプトが地域との共生なのであえて駅から離れた場所にホテルを造って周辺の小さなお店を紹介し、宿泊客と地域を繋げるという狙いが感じられる。
そういえば金沢のHATCHiも辺鄙な場所にあったなと思い出す。ホテル業界に憧れを持った人には特に魅力的に感じるコンセプトだが、ホテルにおける立地は売り上げに影響を及ぼすかなり重要な要素だし、地域との関わりをポジティブに受け入れる旅行者はマイノリティで、全体の何%いるんだろうと思う。
つまりは素敵なコンセプトほど需要は少なく売り上げが立ちにくい。ホテルのデザインやソフトに自信をもって話題を作れる仕掛けまで考えられていないとこういうホテルは立ち上げられないと思うのは前述の通り。そういう挑戦ができるホテルには脱帽です。勉強させて頂きます。

■シンプルな造りと点在するアート


そんなこんなでチェックインを完了しエレベーターに乗って客室へ。

元が倉庫ビルだったこともあり搬入用っぽいエレベーター

客室フロア到着
この施設内のフロアサインはすべて木の箱に描かれている。本来は場所を取るのでやりたくないが、あえてそれをやるというのがアートを感じる。合理的な判断をしないというのがこだわりの部分だと思うのでアートのことはよく分からないがこういうのは好き。
さらに横を見ると・・・

がれき?いや作品です

エレベーターホールの先にアート作品が。一見してなんかぶっ壊れてるのかと思ったがどうやら下の残骸も含めて作品らしい。作者が実際に海岸に流れ着いた陶器の欠片を何年も拾い集めて作品にしたそう。なんともよく分からない感性だが作者なりに感じる何かがそこにはあったのだろうと推察。
作品が置かれている横の壁に作者と作品紹介もあるので一読すべし。

陶片をリュックにパンパンに詰めて持ち帰っていたらしい・・・

ちなみに客室フロアは全部で5つあるのだがそれぞれのエレベーターホールで違った作品が置かれているのでホテル内を散策する楽しみが作られている。

ホテル内をちょっとした美術館のようにして宿泊客がウロウロできるように設計されているのはすごく良い。エンターテイメント性がある。滞在を楽しむってこういうことだよな。

最近のライフスタイルホテルみたいにカフェがあってラウンジがあって滞在を楽しんでって言われてもなんかピンと来ないけど、こういうコンセプトとデザインで宿泊客自身が何も考えなくても館内をウロウロしてしまう、無意識に働きかけるような設計がかっこいいよなと思ってしまう。そういう意味では普段アートに触れていない人の方がテーマパークみたいに楽しめそうな気がする。

いちいち立ち止まらされるが客室へ向かおう。

廊下は意外とシンプル。照明は暗め。冷房は強め。

サインも控えめ

客室到着。ドアを開けて中へ。

ドアを開けた先の視点

入室すると右側にソファとテーブル。左側に水回り、奥にベッドが配されている。

一人旅行者なのでクイーンサイズの大きなベッドはありがたい。室内もシンプルな内装。自分たちはあくまでアートを展示・収蔵する施設であり、宿泊客にはアーティストの作品を楽しんでもらいたいので客室までアーティスティックにする必要はございませんです!っていうことなのかもしれない。そういうこだわりなら好き。good!

水回りもきれいでシンプルおしゃれ。

お風呂も一人で使うには十分すぎる広さ

自立したトイレットペーパーホルダー

こういうタイプのトイレットペーパーホルダーは初めて見た。使い勝手は問題なかったが、これはトイレのスペースが狭くて壁に取り付けると使いづらいからこれにしたのか、こういうこだわりなのかどっちなのかが気になる。

テレビはNetflix観れるやつ

■ホテル内ミュージアムツアー


さて室内の写真も撮れたので館内をウロウロしに行きますか。
とりあえず各エレベーターホールの作品を観に行こう。
さすがに作品全部を紹介するのは面倒だし無粋すぎるので個人的に気になったやつをpick upしよう。

マイフェイバリットアート

これ。これが一番意味が分かんなかった。アートに関して何か言える人間じゃないので批評の意図はゼロだが一番感性が揺さぶられたかもしれない。どうやら自然のままに生えている木よりも素材として折ったり曲げたりするときの反応・反発みたいなものこそが木の生命力であると捉えた。みたいな感じの作品らしい。視点も考え方もぶっ飛んでいてこれぞTHE ARTって感じですごく良い。

とのこと。

そのほかにも謎のオブジェやら瓦礫の山やら色々あって面白かった。一見して面白い作品が多いのはアート初心者への配慮なのか?それとも現代アートとはそういうものなのか?

そしてこのホテルの目玉とも言える地下1階のラウンジ&アートストレージへ

この辺になるとどこまでが作品なのかよく分からん
テーブル奥からの眺め(奥右にエレベーター)

エレベーターを降りると広間に大きいテーブルが置かれており、ラウンジというかコミュニティエリアみたいな場所。

大きいキッチン(コンロはない)が置かれて電化製品やカトラリー類が揃っているのはホテルというよりホステルやゲストハウスに近い設備。
SHARE HOTELSの源流がホステルのHATCHiであるからかもしれない。HATCHiの地下にも確かこういう空間あったような気がするし。

大きいキッチン。右側にはアートイベントのパンフレット類も

さてラウンジの奥にあるこのホテルのコンセプトの要、アートストレージへ。

ストレージは扉を挟んで別空間。特別感あるなー

入ると金網空間。なんか裏側の世界を見てるようでワクワクする。実はここに収められている作品たちは「KAIKA TOKYO AWARD」というコンテストで受賞した作品たちであるそうな。地下には全7区画ストレージがあり金網越しに優秀作品を拝むことができる。

インテリア作品っぽいものも

このストレージ内はあくまで保管であって展示ではないので作品紹介なんかは無かった。思い思いに感じればいいということかもしれないがアート弱者からすれば案内がないと何をどう感じればいいのか分からないので、せめてどんなアーティストの作品が収められているのかだけでも教えて欲しかったな。

さてさて、一通り見て回ったので次は1階へ。

1階フロアサイン。そういえばこの箱はなんの箱なんだろう・・・

エントランスのすぐ横にあったギャラリーの方へ行ってみる。

フロント横の物販(営業終了後)。商品は結構尖ったものが多い。

途中に横切るフロントにある物販ショーケースをチラ見しながら
到着。原ナビィ展。

赤!人体の感じは強く伝わる

どうやら原さんは東京芸大在学中の作家さんらしい。個展のタイトルは「暴」。動物の本能や衝動をテーマに描かれたらしく確かに鬼気迫るものを感じる気がする。思い切り殴ったり刺したりしてるようにも見えるがもっと内面の部分を描いているようにも見えるなー。

さて館内も回り終えたのでそろそろ部屋に戻りますかな。実は屋上にも展示作品があったらしいのだが見落としていて行けなかった(泣)フロアサインに屋上の表示が無かったので行ってもなにもないと思い込んでいたのだ。。。
まさかそんな隠しステージがあるとは・・・気になったらとりあえず行っておくべきだなと反省。
ちなみに屋上の存在はこの本を読み返して見つけた。東京の評判のホテルがたくさん載ってるのでホテル好きにはおすすめ。

施設内のカフェレストランも22時まで営業していたがホテルに泊まった時には映画を1本観ることにしているので寄らずに客室へ。宿泊記とか書くなら付帯施設にも寄るべきなんだろうなー、まぁ次に泊まるホテルでは行ってみようかな。気が向けば。

■至高のナイトタイム


今日の映画は「マスカレードホテル」。お酒とおつまみと共に木村拓哉全開の木村拓哉を鑑賞。一介のホテルマンからするとこんな客おるかいなっていう客といまどきそんな熱いホテルマンおらんやろっていうホテルマンがでてきて、これが作品による誇張なのか実際に大型ホテルにはこういう人がいるのかはちょっと分からないが、冷笑的に見るよりもこういう熱いストレートなメンタリティを持って仕事に取り組むべきだなと思った。
全然ミステリーとして鑑賞していないな笑
これも気が向けば映画感想書こうかな

てなわけで映画も見終わっていい時間なので風呂入って就寝。

KOIZUMIのドライヤー。よく見るけどホテル御用達?

■ホテルあるある音問題


それはそうと、就寝前から気になっていたがこの部屋、窓の防音性能が低いので外の音が結構聞こえる。車の音や路上で歩いている人の話し声なんかも聞こえる程だった。幸いというかなんというか、自分が就寝した時間は車も人も往来がほとんどない時間だったのと、元来神経が図太い方なので就寝に影響はなかったがデリケートな人は注意が必要かも。
たぶんこれもリノベーション物件の弊害の1つだと思う。
とはいえ窓の前は結構スペースあったので二重サッシにすればなんの問題もないのになぁとは思った。

■ヴィーガンな朝食


てなわけで、おはようございます。
SIMMONS製のベッドでぐっすりと寝れた。
てかSIMMONSって色んなホテルで使われてるから一周回ってさしてプレミア感無いような気がするがどうなんだろう。

そんなこんなで朝の準備が終わり1階のカフェレストランへ。実はチェックインの際に朝食を2種類の中から選んでいたのだが、1つは鶏肉を使った料理、もう1つは野菜オンリーのヴィーガン料理。ヴィーガン料理って題した料理は食べたことなかったのでこっちを選択していたのだ。

1階に着き、バーの様な雰囲気のカフェで朝食を注文。席について1~2分で出来上がり呼ばれる。なんか呼ばれるまでが早すぎて作り置き感あるから出来てたとしてももうちょっと待った方がいいと思う。吉野家じゃないんだから。

それはそれとして朝食プレート取りに行き再び席に着く。

ヴィーガンブッダボウルというらしい。ブッダ・・・?

おぉー、彩り豊かで美味しそう。意識が5段階ぐらい高くなった気がする。
これ食べてるところ知り合いに見られてドヤ顔したいもん。

うん、美味しい!思ったよりも美味しい。
写真だとボウルに隠れているが白みそのソースがあってこれがまた美味しかった。味付けが濃くなり過ぎずかといって素材の味過ぎない。
なんかナスとかブロッコリーとか大豆?とかが入っているからか葉物ばっかの感じじゃなく食感も含め満足いく食事だった。これなら肉なくてもいいかもなんて思ったり。ただスープは個人的には微妙だった。パンプキンのスープなら好きだったがカレーっぽいスープだった。単純に好き嫌いの話だけど。
あとはこの色々乗ったヨーグルトも美味しかった。フルーツグラノーラっていう言葉を思い出した。

■チェックアウトと感想


さて、全体的に満足いく内容だったのでしっかり感謝しごちそうさまでした。
部屋に戻ると9時過ぎ。チェックアウトは早めの10時なのでちょっとゆっくりしたら退室しよう。ゆっくりタイムには部屋に置いてあったお茶を頂く。

カップかわいい

ほっこりしてたら時間が来たので部屋を出てチェックアウト完了。

感想としては、これまでにないテイストのホテルでしっかり楽しめて大満足でした。まだまだアートとホテルの要素で色々楽しめるコンテンツは作れるはずなので今後の活躍にも期待しております。
できれば宿泊客へのアートの説明とかをどんな形か分からないけどやって頂けると嬉しいですね。その時はまた行きたいなって思います。

それでは1泊2日ありがとうございました。

最後にルームキーのご紹介。シンプル。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?