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唐突だが半導体について書いてみる


■身近なものなのに知られていないもの代表「半導体」

半導体・・・

ただのイメージ

どうやら現代世界にとって非常に重要なものであるらしいがその実態はさっぱり分からない。スマホを使いこなし電車や飛行機を乗り回す現代人が、それらがなぜどのようにして動いているのかさっぱり理解していないのと同じように、生活に密接に関わっているものなのにこんなにも知らないということがあっていいのだろうか。

半導体に限らず原理を理解していないのに日常で使用している物というのはこの世に溢れていて、自分の知らぬところで物事が大きく動き続けていることを考えると少し怖くもなるが、もしかしたらそれこそが文明が発達するということなのかもな。とぼんやり考える。

とはいえ、そういった物について少しは能動的に調べていく姿勢も必要だろうということで手に取った1冊がこちら


「ビジネス教養としての~」というタイトルは様々なジャンルで目にするが、このタイトルのおかげで「は!!ビジネスマンとしては知っておかなければいけない!!」という強迫観念に駆られる為、意識高い系リーマンには突き刺さる言葉だなーと感心する。初めにこのタイトルを考えた編集者はやり手だろうな。

そしてなにより気楽さを与える言葉でもあるのがgoodだと思う。半導体に関して学者が書いた論文のように仔細な内容を用意されても読む前から疲れておそらく購入することはない。「ビジネス教養としての~」というタイトルには「そんな深い内容までは書かないけど、同僚や部下にどや顔できる程度には詳しくなれるよ」という悪魔のささやきが込められているように思う。

まぁ何が言いたいかというと手に取りやすかったから買ったというだけのこと。

■インプットしたならアウトプットまで

ここ最近いい大人になってきて、自分の知らなかったことを新しく知るということは単純に快楽として気持ちいいなと思うようになった。
半導体について多少分かったところで明日からの生活がより良くなるとかは思わないけど、それでも自分の中に教養が1つ増えることは気持ちがいいことだし、30過ぎて仕事にも慣れて新しく教養を身につけようかと思うサラリーマンは多いんじゃないかと思うので、そんな人には半導体という適度に生活に密接していて適度に周りに詳しい人がいない分野はうってつけのようにも思う。

まぁ自分はこの本を読んでて正直そこまで面白い内容だとは思わなかったけど、半導体に興味がある人は読んでみてもいいんじゃないだろうか。(自分は読んでて別に半導体に興味なかったなーと痛感した。そして5回ぐらい途中で投げ出そうかと思った)

でもせっかく読んだし、自分のインプットの整理も含めて要約してみようかなっていう気持ちで書き始めることに。インプットしたならアウトプットもしなきゃねっていうのは少し前に流行った本に書いてあったこと。まぁその通りだと思うので実践してみようかなと。理解が浅いことはご愛敬で。

↑少し前に流行った本

ちなみにあまり面白いと思わなかった理由は半導体自体が実感としてなじみのないものだから。
いくら言葉で説明されても実際に見たり触ったりしないと空想上のものと変わらない。そして実感のないものを説明するときは往々にして間違いやすい。この記事を読んでいただける心優しい方は内容を鵜呑みにするようなことのないよう、半導体を知るきっかけ程度に使っていただければ幸いである。

■世界を席巻しているのは人類よりも半導体


どうやら半導体はスマホやパソコンをはじめとした電子機器、自動車、電車、電気を使うあらゆるものに使われているようだ。

世界的な需要はいまなお拡大中。2022年に日本国内だけで6兆円。世界全体では72兆円にも上る巨大市場なのだそうで。世界の総人口約78億人に対して2021年の半導体出荷個数は1兆1,500億個。世界の人口1人あたり約146個の半導体が供給されていることになる。つまり人類より半導体の数の方がはるかに多いのである。

ちなみに半導体の使用量は先進国であるほど多い。日本国内での出荷額は4兆8,000億円。1人あたり1年間に4万円分の半導体が供給されている。どうやら人類は相当に半導体に依存した生活を送っているようだ。

■なぜ半導体が重要なのか?


半導体が全世界で重要視されている理由は大きく3つ

①「半導体は他の何物にも代えられない電子部品である」
電子機器を構成するおよそ1,000個の部品のうち、たった1つの半導体が不足するだけで電子機器は製造できない。電子機器における最も重要なパーツこそが半導体なのである。

②「半導体は多額のお金が動く巨大産業である」
先ほども述べたことだが半導体は巨大市場を形成している。2022年、世界では25兆円ものお金が半導体への設備投資に費やされた。日本の熊本に建設された台湾の世界的半導体企業「TSMC」の工場の建設費は約9,800億円。ちなみに原子発電所の原子炉を1基建設するのにかかる費用は約4,000億円なので原子炉を作る予算の倍掛かるのが半導体の施設ということになる。

③「半導体の供給は不安定である」
半導体は小型ゆえ日々世界中を流通しているが、それが逆に供給の不安定化をもたらす側面もある。コロナ禍において自動車業界はしばらく新車が売れなくなると判断し、これまで仕入れていた半導体の発注量を減らす方向に動いた。一方で巣ごもり需要によりPCやタブレットの需要は増えたので自動車業界が減らした分を他の業界が取得する形になったそうだ。

ところがしばらくすると、感染対策の為にむしろ自家用車の需要は増え始め、あわてて自動車業界が半導体を仕入れようとしたところ、既に他の業界に割り当てられてしまっていた為、自動車業界への半導体の供給は滞ってしまったということがあった。他にも半導体工場が火災により生産が止まってしまったことにより、世界中で半導体不足が起こったということもある。

このように世界中で半導体の流通ネットワークが張り巡らされている為に、一か所で起こった変化が他に波及するというケースがある。それは時に深刻な半導体不足を招く要因にもなるそうな。

■では、そもそも半導体とはなんなのか?


というか半導体ってそもそもなんやねん!?っていうのが一番知りたいことだったはず。
半導体とは、電気をよく通す「導体」、電気を通さない「絶縁体」との中間の性質をもつ物体。条件によって電気を通す場合と通さない場合がある。
つまり半分導体ということで「半導体」。わかりやすい。

導体とは金銀銅などの金属物質。電気が通りやすい理由は物質を構成する原子の中にある自由電子という電子が多いため。電気は自由電子を通って流れるのでこれが多いと電気が通りやすいということらしい(ちなみにこの辺に関してはなんとなくしか理解していない)

物質には電気抵抗が存在する(Ωで示されるアレ)ので流れた電気はすべて使われるわけではなく基本的に一部失われる。電気抵抗率が低い物質であればロスが少なく電気を流すことができる。

半導体は温度によって電気抵抗率が変化する。高温になればなるほど電気抵抗率は低くなり、電気が通りやすくなる。この半導体の特性により一方向に電気を流すこともできればその流れを止めることもできる。

この半導体を使って半導体素子(部品のこと)という物質を作ることができる。半導体素子はエネルギーを加えることで光を発するLEDや有機ELなんかが代表的。これらは照明に使われたり、PCやスマホのディスプレイに使われている。

ちなみに絶縁体はゴムやコンクリートなど。これはそのまんま電気通さなそうな物質やね。

ただし、主にニュースやビジネス上の会話で「半導体」という言葉が出る時は半導体を用いて作られた半導体素子や電子回路(半導体素子で構成された回路)のことを言うので、いま説明したようなまんま素材の話をしているわけではないことに注意。

■半導体素子でなにができるのか?

じゃあその半導体素子を使ってなにができるのかと言うと・・・

①電気エネルギーを光に変換する
発光ダイオード(LED)や、有機ELなど。照明の他にもPCやタブレットのディスプレイに使われている。従来の白熱電球や蛍光灯に比べて寿命が長く消費電力も低く抑えることができる。

②光エネルギーを電気に変換
逆に光エネルギーを電気に変換することも可能。代表的なのは太陽光電池。

③電気の流れを制御
条件によって電気を通したり通さなかったりすることが可能なので、電気回路のスイッチの役割をさせることができる。特性の異なる半導体を組み合わせることで複雑な電気回路を作ることが可能。

■実際の使用例


スマホ:例えばスマホには多様な半導体素子が用いられている。スマホ内のマイクロプロセッサによりデータの演算や制御などの機能が備わる。写真や動画を格納するのに半導体素子であるメモリが使われているし、撮影する際にはイメージセンサ、音楽の再生にはA-D/D-Aコンバータ、通話やネットの接続には無線通信ICが使われている。

エアコンや炊飯器:温度センサが付いており検知した温度を電気信号に変換する半導体が搭載されている。

LED:2010年以降、白熱電球や蛍光灯から長寿命で省エネなLEDへの意向が進んでいる。白熱電球は抵抗値の高いフィラメントという素材に電気を流し込み加熱して光らせていた。(つまり照明として必要な電気量以上に電気を使用していた)
蛍光灯はガス管を封入した放電管に高い電圧をかけて放電させ、発生した紫外線が蛍光物質に衝突して発行するという仕組み。
一方で、半導体を使ったLEDは流れる電気エネルギーをそのまま光に変換できる性質を持つ。
つまり半導体の登場により電気を無駄にせず効率的に使うことができるようになったということ。

■半導体の歴史~半導体の誕生からICの開発~


半導体が出現する以前は電気をコントロールする装置として、かのエジソンが発見し、かのフレミングが開発したという真空管がその役割を担っていた。
半導体であるトランジスタと違い電気の増幅機能がないのでラジオや軍用無線などに主に使われていた。

1946年に真空管と機械式スイッチを使ってENIACという世界初のコンピュータが誕生する。これは砲弾やロケット、ミサイルなどの弾道の計算に用いられ、これまで7時間かかっていた計算が約3秒でできるようになったという。しかしサイズはバカでかく、1万3,000本の真空管が使われその重量はおよそ3トンもあったそうだ。

この真空管は電力の消費が大きいので真空管自体が熱くなり壊れやすいという弱点があった。それを受けて開発されたのが半導体である。これも当初は主に長距離電話や軍用の無線通信に使われていた。

1947年、アメリカの電気通信事業大手AT&Tのベル研究所がトランジスタを開発する。(AT&Tの前身はグラハムベルが立ち上げたベル電話会社)
このトランジスタの開発により大きな影響を与えた物に補聴器がある。
それまでの補聴器は真空管を使ったものでお弁当箱ぐらいのサイズだったが、トランジスタで増幅させることができればサイズはコンパクトにできる為、ポケットに入るサイズの補聴器が誕生する。

1954年、アメリカの半導体大手のテキサスインスツルメンツが開発したシリコン製のトランジスタは通信の分野でも活用されるようになり、この頃から半導体市場は巨額のお金が動くビジネスであると捉えられるようになる。

1958年にはICが発明される。ICとはトランジスタや抵抗器、コンデンサという半導体素子を組み合わせて作られる複雑な回路。これが影響を与えたのが電卓。それまでの電卓は真空管を使用したもので現在のデスクトップパソコン並みの大きさをしていたが、ICが開発されたことで電卓の小型化に成功。電卓開発に乗り出した企業はアメリカだけでなく、日本のソニーやセイコー(当時は第二精工舎)もまた参入してきていた。(ただし当時の電卓はまだ高価で一部の企業が業務用で扱うような代物であった)
電卓市場が盛り上がることでそれまで主に軍事産業や宇宙産業で必要とされていた半導体に民間が参入することになる。

電卓を個人が所有するにはさらに集積回路の集積度を高める必要がある(すなわちより蜜なICを作る必要がある)
この開発により1970年代に入って個人が電卓を持てる時代が到来。様々な企業が電卓の開発に乗り出したことで1970年代は電卓戦争の時代と言われている。

電卓戦争の最後には新たな革命が起こる。それがマイクロプロセッサの開発。これは「汎用コンピュータ」という概念によって作られたもので、それまでは機種ごとに独自のICを開発していたことで無駄な手間が多かったが、様々な処理に対して応用が利く汎用性のあるマイクロプロセッサという半導体チップが開発されたことでこれまで以上に用途の幅が広がったコンピュータが登場する。

■半導体の歴史~日本の栄枯盛衰~

高度経済成長の波に乗る日本は半導体の分野においても頭角を現す。

1979年にはソニーからウォークマンが発売。世界中で愛用され日本電子機器の象徴となる。ウォークマンの登場により屋外や公共の場でも他人を気にすることなく好きな音楽を楽しむというスタイルが確立される。

1970年代から80年代にかけてはウォークマンに代表される日本製品が大量に輸出されるのに伴い、日本製の半導体もまた大量に世界に輸出される。日本の半導体はDRAM(メモリの一種)という種類の半導体では80%以上のシェアをもち世界を席巻していた。

ところが1986年7月、日米半導体協定によりアメリカ製の半導体の使用を奨励され、日本から輸出されるパソコンやカラーテレビに100%の関税を掛けられるなどの措置が取られる。1991年には改訂された協定では日本で使用される半導体のうち20%を外国製にするなどの目標が課される。

また、この頃から半導体産業をけん引していく電子機器としてパソコンが伸びており、パソコンにはインテルなどアメリカ製の半導体が多く使われていた為、外国製半導体のシェアが上がってきた。
さらに90年代に入ってから台湾のTSMCや韓国のサムスンが存在感をシェアを獲得していく。これらの企業の日本に対する優位性は意思決定のスピードが早い。比較的技術者を大切にする点などが言われている。

つまり日本の半導体産業の衰退の原因は日米半導体協定の結果やパソコンという新しい需要の獲得に失敗したこと、他国の半導体企業の急激な成長などが挙げられる。

■半導体の歴史~ついにパソコン登場~

1971年に開発された世界初のマイクロプロセッサであるインテル4004は4ビット。このビットという単位はプロセッサが計算を行うときに一度に扱えるデータ量を指しており、このビットが大きいほどプロセッサは素早く計算を行うことができる。

4ビットは電卓として使用するには問題ないが、パソコンとして使うには力不足なレベル。次に新たに開発されたインテル8008というマイクロプロセッサが登場して初めてパソコンに搭載されることに。

世界で初めてパソコンが登場したのは1975年。アメリカのMITSという会社が出したアルテア8008というパソコンがそれ。ただしこれは技術者が使うようなもので一般に浸透するような物ではなかった。

続いて1976年に当時のアップルコンピュータがアップルⅠ、翌年にアップルⅡを発売。テキストだけでなく画像の表示ができる点が画期的だったそうな。

ここから一気にパソコン市場は広がっていくことになる。同時期に日本のキャノンやパナソニック、シャープ、NECといった企業もパソコンを発売し始める。

1986年、アップルがマッキントッシュを発売。この頃には16ビットのマイクロプロセッサが搭載された。

■半導体の歴史~主役は携帯電話へ~

1990年代後半からはPCやAV機器以外に半導体需要を牽引する存在として携帯電話が登場する。

1999年にはNTTドコモが携帯からでもインターネットに接続できるiモードを開始。
2000年代に入ると赤外線通信や電子マネー、カメラ機能などガラケーに向けた進化が加速する。

2000年代後半からはスマートフォンへ移り変わる。モバイルでのネット接続の環境が大きく進化し、SNSや動画配信サービスが発展。LINEなど電話回線を使わずネット回線を利用した通話サービスも。

これらの結果、スマートフォンは2021年には世界で130億5,000万台も出荷されている。

携帯電話の性能の進化に伴い携帯に使われる半導体の個数も大幅に増加している。1997年には1台あたりおよそ1万円分程度の半導体が使われていたが、現在のスマートフォンには1台あたり4万円分を超える半導体が使われている。

つまり携帯電話の進化に伴い端末そのものだけじゃなく、データセンターやそこに設置するサーバー、記憶装置などに使われるものも含めて「携帯電話システム」が半導体需要を大きく伸ばしたということ。

■半導体の未来

最初に述べたように世界における半導体の売上は日本円で約72兆円。そのうえ、現在も1年で10%近くの高い成長率を誇る。(IT産業でも2~3%)

半導体需要が今後も成長していくためには継続して半導体を使った製品がつくられ続けていく必要がある。これまでは新たな電子機器が次々に開発されていき需要が増え続けたが、先進国の国民に必要な電子機器はほぼ行き渡り、買い替えによる需要のみが残っているような状況である。本来これでは市場は大きく伸びない。
新たな電子機器が開発されて爆発的に売れたとしてもそれが行き渡ってしまうと成長が止まってしまうというジレンマを抱えている。

ところが、世界はまだ半導体市場は急激な伸びしろを持っていると見ている。それはテクノロジーの未来予測でもあり、そこに半導体が欠かせない物であるが故である。

■半導体の次なる役割

繰り返しになるが半導体は電気を使うものには基本的に使われている。これまでは1つの電子機器が開発され、それが売れることで半導体の生産を伸ばしてきた。
しかし今後は、あらゆる機器で半導体の使用量が少しずつ増え、更には新たな用途が追加されることで更に全体として伸びていくと言われている。

具体例①~EV車~
まずテスラを筆頭としたEV車の普及。テスラのEVにはおよそ十数万円分の半導体が使われている。テスラは1年間におよそ100万台のEVを生産しているので1年で約1,000億円分もの半導体を使っていることになる。
今後、更にEV化が加速し他の自動車メーカーも生産を増加させていくと、それに伴い半導体の使用量も大きく伸びることになる。

ただし、これは長期で観た予測であり短期・中期的にはまだエンジンを搭載した従来の自動車の方が影響力は大きい。EVはあくまであらゆるジャンルで少しずつ半導体の使用量が増える一例に過ぎない。

具体例②~産業機器~
自動車以上に半導体の使用量が伸びると考えられているのが産業機器。
産業機器とは例えば工場で使われるロボットや溶接機、業務用印刷機など。

これらが伸びると言われている考え方の1つに「インダストリー5.0」がる。この考え方に向けて世界はいま動いているとも言われている。

インダストリーとはつまり産業革命のこと。第一次産業革命は18世紀のイギリスで起こった石炭をエネルギー源とした革命だった。第二次産業革命は電気や鉄鋼、化学や石油など重化学工業の分野が大きく発達したこと。
第三次がコンピューターの発達。そして第四次産業革命、インダストリー4.0とはドイツが唱えた「スマートファクトリー」という構想のこと。

スマートファクトリーとは、産業機器がネットでつながるIoTの世界のことイメージは消費者がネット上でオーダーメイドのパソコンを買った場合、生産機器に情報が送られ必要な部品を自動的に集めて組み立てる。梱包も自動でされ自宅まで発送される。こういった発注から納品まで人の手を介さず行われる世界観のことである。
ただ実際には現時点でそこまでの進化は起きていない。Iotで機器の稼働状況や在庫の状況などを管理できたりはしているが、まだまだ人の手を使っているし、そっちの方がコストが安いという状況。

インダストリー5.0はここから更に進みデジタルツインやAI技術が積極的に活用される世界の構想のこと。

まずデジタルツインとは、現実世界で収集したデータをそっくりそのままコンピューター上で再現すること。たとえば現在の宅配便の位置情報サービスは集荷センターに届いたことや輸送中であることをなどを知らせるのが限界だが、デジタルツインの技術では荷物の位置がマップ上にリアルタイムで表示されるようになる。

AI技術においても、現在では工場のねじ締め作業などは人間が指定した場所を機械が締めるといった形だが、今後はカメラやセンサによって機械が自動で判断して行うようになるという。

これらを実現しようとすると例えば宅配便の場合、荷物の現在地を知るために要所要所にセンサを設置する必要がある。トラック自体がネットに繋がるようにする為にそれ専用の機器も必要になる。そうやって集めた情報を管理するサーバーも必要になる。

そして、これらすべてには半導体が使われている。

つまりこういった形で既存の物やサービスが進化すると追加的に半導体の需要が増加する。こういった進化があらゆる分野で起こると考えられているので半導体市場は今後も右肩上がりで成長していくと言われているのである。

ちなみに半導体と共に今後成長するテクノロジー分野で有望なのはモビリティ(交通)と再生可能エネルギー。
モビリティは例えばアプリを使って自宅から目的地までシームレスに交通手段を切り替えて利用できるようになる進化のこと。
自宅から出るとすぐに自動運転のタクシーが到着しており、駅に到着するとちょうど電車が到着しているという世界観。

再生可能エネルギーは、これら技術の進化により消費電力が極端に増えるリスクに対して消費電力を抑え効率よく電力を供給するパワー半導体と呼ばれる技術があり、これらの進化も注目を集めている。

■半導体競争における日本の立ち位置

半導体業界は分業制が進んでいる。自社で工場を持たず半導体の設計に特化した企業をファブレス企業、逆に工場を所有し製造に特化した企業をファウンドリ企業という。

ファブレス企業の代表格は米クアルコムやエヌビディア、ファウンドリ企業の代表格は台湾のTSMCや韓国のサムスン。
このあたりが世界の半導体市場の中で大きな力を持っている。

じゃあ日本はどうなのかというと、実際のところ世界レベルの半導体企業は存在しないようだ。まず日本はこれまで長い間、1社が半導体の設計も製造も行う垂直統合型のモデルでやってきた為、分業化が進んでいない。

これはホテル業界においても言えることだが世界標準が分業化に進んでも日本はなかなかモデルを切り替えるということができないようだ。

アウトプットである最終製品を一番に考える日本人の性質なのかどうかは分からないが一分野に特化するということが苦手らしい(ホテル業界では最近は所有と運営の分離は一般的になってきた感があるがやはり海外と比較すると切り替えるのにだいぶと遅れた)

ファブレス企業が存在しないのでいまからエヌビディアやクアルコムのような企業を日本から生み出せるかと言うと難しい。

次世代の半導体を開発して世界に存在感を示すにはいま現在で最先端の半導体工場を持っていてノウハウを得ている状況になければいけないが、これに関しても日本に最先端の工場はないので難しい。

結果としていまから世界のトップに返り咲くようなことは現実的でなく、一部の半導体を細々と供給していくような役割を全うしていくということになりそうだ。

■総括

と、まぁここまで長々と気づけば一万字近く書いてしまったが、日本の産業はだいぶと衰退してしまったようだという悲しい現実を突きつけられて終わってしまった。

ホテル業においてもそうだけど垂直統合型のモデルは最終のアウトプットまでも含めて考えると決して悪いことだとは思わない。一社の強烈な思想やコンセプトをエンドユーザーに届けることができる仕組みによって高い付加価値を生み出すことができる。
一方で効率性が悪いというデメリットが大きい。横展開できないので商圏が広がらない。結果スケールメリットで負けるということが日本対諸外国ではよく目にする光景だと思う。

自分たちの独自の立ち位置を築いてガラパゴス的な存在感を示すのか、組織や文化を変革しアメリカ的経済を作り上げることができるのか、日本の将来は果たしてどうなるのか。そんな感じの結び。

ほんとに長々とかいたなぁ。

お疲れさまでした。

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