読書感想文(8)カミュ著、窪田啓作訳『異邦人』(新潮文庫)

はじめに

こんにちは。笛の人です。
ご覧になってくださった皆さま、ありがとうございます。

今回はカミュ『ペスト』です。この本は有名な本を大量に買い込んだ時に選んだ一冊です。某ウイルスが流行り始め、『ペスト』が書店で平積みされるのをよく見かけるようになりました。その状況で敢えて『異邦人』を選んだのは、なんとなくの反抗心です笑。

大量にある積読の中からこれを選んだのは、先日カフカ『変身』を読んで「不条理」を感じたからです。「不条理」といえばカミュ!(知らんけど)という安易な発想で、読むことを決めました。

↓カフカ『変身』の感想

感想

まず初めに、少しショックだったのが裏表紙のあらすじでがっつりネタバレを喰らったことです。物語の中盤どころか、最後の一文まで書かれてしまっています。
これについては恐らくまあ物語の展開そのものが重要ではないと判断されたのだと思います。しかし初読の時は「この後どうなるんだろう?」と思いながら読むのが楽しみの一つだとは思うのです。
古典のあらすじはなぜかこのような風潮があるような気がします。今後はできるだけ見ないようにしようと思います。もしこれから読もうと思われる方はお気をつけください。

さて、内容についてはまず、序盤は正直読みづらいなと感じました。淡々と短文が連ねられていて、リズムが合わず、世界観に入り込むことができませんでした。40ページ辺りから慣れてきて、集中できるようになりました。

また、裁判の辺りまでは正直それほど面白いとは思いませんでした。しかしその辺りからは描かれる内面に関して、生きることや死ぬことについて考えさせられました。
正しく作者の意図を理解できているのは甚だ疑問ではありますが、私は最近の人生観に近いものを見出しました。というのも、「幸せになる一番の近道は、志を低く持つことである」と考えていたからです。これを突き詰めていくと「生きているだけで素晴らしい」となり、人生というものがいかに空虚な存在であるかと思わざるを得ません。「生きているだけで素晴らしい」というのは前向きな言葉と捉えられがちですが、これは本当は極限まで不幸な人のための言葉だと私は考えます。
この作品の話とは離れてしまうので詳しくは書きませんが、最終盤で自分がそのような事を考えたということは書き残しておきたいと思います。
尚、生きることや死ぬことについてはnoteにも書きたい内容ではありますが、いかんせんセンシティブな内容であるため、どうしたものかと考えている次第です。そのうち書くかもしれません。

この作品を読んでいると、「不条理」より前に主人公の異端さが感じられます。決して悪ではありませんが、普通の人と異なる思考を持っているように思われます。何かに似ているなと思って記憶を探ってみると、村田沙耶香『コンビニ人間』の主人公でした。例えば愛についてであったり、世間で当たり前だと思われていることを真っ直ぐに見つめることで独自の考えを持つことができています。この視点は重要であると私は考えているのですが、やはり異端と思われるのは少し怖い気持ちもあります。そのため常識と非常識、どちらの考えも頭に置きつつ、普段の行動は常識に基づいておくというのが私の理想です。しかしこれは精神的にあまりよろしくないように感じており、またちょっとした遊び心から非常識な行動を選んでしまうことも多々あるのが難点です。

この主人公の異端さは物事を真っ直ぐ見ていることによるものだと思います。そしてそれゆえに「不条理」というものがより鮮明に浮かび上がってくるのではないかと思います。この作品では先ほど述べた常識にあたる部分として、母に対する主人公の感情が挙げられます。現代の読者は恐らく検察側の主張が論理的に明らかに破綻しているのとわかるでしょうし、弁護士側もそれを指摘しています。しかしこのような状況は現代でも恐らく多くが見逃されているのではないでしょうか。勿論私も他人事ではありません。その時に必要なのが先ほど述べた異端な視点なわけですが、そう上手くもいかないのも先に述べた通りです。

この作品は150ページほどの短い作品ですが、かなり内容は濃いと感じました。正直、消化不良です。解説を読んでみると、ますます私の理解が浅いことを実感させられました。つまり、解説が何を言っているのか全然わからなかったのです。
それでもこの作品を読んでよかったと思うのは、上記のように自分なりに考えるところがあったことです。ただし、理解できないところがあるのはやはり不満なので、勉強していつか理解できるようになり、そしていつか読み直したいと思います。

おわりに

短い割に、読むのにかなり時間がかかってしまいました。『ペスト』はいつか読んでみたいと思っていますが、当分先になるかなと思います。

次に何を読むかはまだ決めていません。
今回で在庫が一度切れるので、次の投稿は明日ではないかもしれません。しかし読書感想文は今後も続けていくので、遅くとも三日以内には投稿するのではないかと思います。
というわけで、またお会いしましょう。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?